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第八節 王対王 2話目

『さて、どうやって崩してやろうか……』


 眼前に広がる砦。そしてその上には狙撃手、射手、魔導士と、一歩でも攻撃範囲に入れば即座に打ち殺されるであろう配置がなされている。チェーザムはまさに目の鼻の先だが、その目と鼻の先に、最大の防衛が敷かれている。

 ベスは相変わらずこの場から姿を消しているが、今回ばかりは裏回りしての奇襲も期待できないだろう。


「ここはレリアンのように砦がある。そこを抑えるためには魔導士による破壊力の高い魔法を使ってまずは突破口を――」


 ――ドォンッ!! という音とともに、巨大な土煙が砦側手前に発生する。


「なんだ!? もう撃ってきたのか!?」

「いや、違う! あんなに自陣近くに撃つ意味なんてない!」


 周りがざわつく中、俺は土煙の方をじっと見つめる。


「……誰かいるな」


 煙が晴れるとともに、一つの人影が徐々に明らかになっていく。

 ポケットに手を突っ込んだまま仁王立ちに立つ細身の男は、そのスタイルの良さなのか、脚の長さがよく目立った。

 黒い長ズボンに、赤いロングコートの一張羅。ある意味俺の色違いにもとれるようなその服装の男は、ただひたすらに立ってこちらの軍勢を見つめている。


「……もしかしたら、一騎打ちを申し込んでいるのかもしれませんね」

「何!? 一騎打ちだと!?」

『その可能性もあるな。だとしたら、総大将であるシロさんが出るのが礼儀となるだろうが……俺が出ようか?』


 一騎打ちなら俺かシロさんの二択だろう。グスタフさんはどちらかというと乱戦向け、ベスは奇襲向けだ。二人には悪いが、俺達に比べたら一つ格が落ちる。


「いえ、ここはボクが行きましょう。ああまでして出てきた時点で、卑怯な真似はしないでしょうし」


 そう言ってシロさんは剣と盾の装備をステータスボードにてしまい込み、最強の両剣――緋蒼剣を手に取る。


『その装備のあんたなら、まず負けないだろうな』


 ――さて、久しぶりに本気を見せてもらおうか。



          ◆ ◆ ◆



「――よく来たじゃねぇか」

「ええ。恐らく一騎打ちをご所望かと思いましたので」


 猛禽類のような鋭い瞳。そしてハイエナのような飢えをむき出しにした笑み。そういった全身肉食獣を体現したような男が、シロさんと真っ向から相対している。


「……師匠マスタークラスか――なっ!?」


 遠くから俺が双眼鏡で様子を伺っていると、まさにピンポイントといった様子で俺と視線を合わせ、睨みつける。それはやつの探知能力の高さを知らしめているようにも思えた。


「……どうかしましたか?」

「……いや。てめぇと同じくらい強ぇ奴が、まだ控えてんだなって思ってよ」

「ええ、一対一ならボクよりも強いかと。ですが今回の総大将は、ボクなので」

「そうか。だったらそれが筋だろうなぁ」


 トントン、とつま先で地面を叩きながら、男は名乗りを上げる。


「俺サマの名はヴェルサス。プレイヤーだ」

「ボクの登録名は♯FFFFFF、皆さんからはシロと呼ばれています。同じくプレイヤーです」

「そうか、よかったぜ。一応聞いとかねぇとよ、しょうもねぇNPCと戦って勝っても面白くねぇからな」


 敵は根っからのPVPプレイヤー。しかも相当に鍛えられている様子。


「んじゃ、いくぞオラァ!!」


 見えない速度での脚の振り上げ。土煙を巻き上げての目くらましと、続けざまに相手の頭上へ振り下ろされる脚。その必殺の一撃を、シロさんは剣で受け止めている。


「……へぇ、まさか剣で受け止めるとはよ」

「貴方の方こそ、刃を向けているのですが脚を斬っていないようですね……!」


 足と剣との鍔競り合い……そんなものがあってたまるか!


「バカな、あの剣は元々から鉄皮甲アイアンスキンを貫通できる強さを持っているんだぞ!?」


 俺は自身の目を疑った。鉄皮甲アイアンスキンを凌ぐスキル。そんなものなどここまでで聞いたことなどない。


「俺の足には金剛脚ダイヤモンドレッグっつぅ特殊なパッシブスキルがかかってんだ、そこらのナマクラで斬れるわけ、ねぇだろうがよぉ!!」


 そのまま筋力に任せて脚を叩きつける。咄嗟に受け流して後方へと回避できたものの、シロさんの表情からは先ほどまでの余裕を持った笑みが消えている。


「……俺の一撃を耐えたんだ、改めて名乗ってやる。俺の名はヴェルサス。強ぇやつと戦いたくてそう名前をつけた。そして俺はナックベアにいる拳王の元、足技の王――“脚王”を名乗っている男だぁ!!」

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