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第七節 暴走爆走突き抜けて 1話目

「――全員揃いましたね」

「おう! “殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”も全員揃った!!」

「バカなキョウ。一人揃ってないのに」


 ギルド内の円卓にて、俺やシロさんのようなプレイヤーからの代表者、そしてチェイス等を含む“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”の幹部“五”人、そして二代目刀王であるティスタが顔を合わせて円卓中央の地図を囲む。


「それでは今回のメインの指揮系統を任せて頂きます、#FFFFFFことシロと申します。今回の作戦会議の司会も務めさせて頂きます」


 そうしてシロさんは幾つか準備していた卓上の地図から、ザッハム近辺の地図をピックアップする。


「まずは今回真っ先に行われるであろう防衛戦についてです。前線の偵察に向かったのですが、お互いに随分と疲弊した様子でした。しかし敵は今回の目的地でもあるチェーザムから定期的に補給を受けている様子。かたやこちらの最寄りの街であるザッハムは荒廃している為、補給もままならないと思われます」

「おいおい、そんなところを拠点に攻めるって難しくねぇか?」


 ギルドでも数少ない技術者エンジニアの代表として出席したクロウから、苦言が飛んでくる。


「第一、既に疲弊した集団もいるんだろ? それを抱えてどうするつもりだ?」

「それに関しては仕方がありません。最後まで消耗仕切って貰いましょう」

「なっ!?」

「それって……」


 その場にいる誰もが、シロさんの言葉に戸惑いを覚えた。まあ、それも仕方がない。要するに前線には最後まで戦って貰って、時間稼ぎの犠牲となってもらうという意味なのだから。

 しばらくの沈黙があった後、この場を代表してと言うこととしてだろうか、幹部の一人であるカイが、恐る恐ると言った様子で口を開こうとした。


「っ、僭越ながらシロ様、それは――」

「それは“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”らしくないと思うが!!」


 カイの言葉を遮って口を出したのは、刀身と同じで真っ直ぐな性格のキョウだった。


「そんな戦い方、武士らしくないと思うが!」

「バカか、貴様! 恐れ多くもそれが先代に対する口利きか!!」


 それを制したのは同じ幹部であるユンガー。円卓の場でありながら、腰元のサーベルを抜いてキョウに切っ先を向ける。


「貴様のような単細胞には理解できまい! この作戦の意味を!」

「仲間を見捨てて何が剣士だ! 俺はそう思うぞ!!」

『キョウ、ユンガー。二人とも少し黙れ』

「っ!?」

「はっ!? も、申し訳ありません!」


 まったく、円卓に片足掛けてまでの喧嘩にするようなことじゃない。確かにキョウの言うとおり、普通の剣士であればそれが正解。だが今回は、普通の戦いをしにいくのではない。


『俺達がこれからするのは戦争だ。今までのような小競り合いの紛争ではない。勝つ為に自分から動く戦いだ』

「…………」

『卑怯? 卑劣? 上等じゃないか。それで勝てるのならその手を使う。正々堂々と戦っても、負けは負け。どんな狡い手を使っても勝ちは勝ち。死体に喋る権利は無いからな』

「ごくっ……」


 この発言もまた、波紋を呼んだかもしれない。

 だがそれが“今”の俺達のやり方。大御所対になって正々堂々と戦わなくてはならなくなったかつての“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”ではなく、生き延びる為に殺し続けてきた“無礼奴ブレイド”の生存戦略の方が、今のギルドに相応しい。


『……ともかく、同じ死が待っているのなら、彼らがただ無駄死にしたという事にならないように、俺達で巻き返せるように防衛陣を敷くんだ。手早く済ませられたなら、前線の手伝いにもそのまま向かえるだろう』

「だとしても、だ。ほとんど荒廃しきっているんだろう? 防護柵とかは作れても、補給までは難しいんじゃねぇか?」

「そこで魔導師達には今回、【転送トランジ】でレリアンとの補給係をお願いしたいのです」


 相手がチェーザムからの補給があるというのなら、こちらもレリアンから物資を転送すればいい。


「そりゃ、随分と素晴らしい作戦だ。だが、魔導師の負担が大きすぎやしないか?」

『その辺りも考慮してのこの案だ。相手は所詮武闘家、リベレーターやテクニカのような馬鹿げた遠距離攻撃は仕掛けられないだろう』


 戦線の後ろ側で補給をしたところで、ナックベア側にとって直接補給線を絶つ術などそう多くはない。


「それに万が一に備えて、指揮系統の管理兼魔導師の防衛としてボクがつかせていただきます」

「そうか、それなら安心だな!」

「シロさんがいるなら、私達魔導師(ソーサレス)としても問題無いわ」


 魔導師側からの支持も得られて、補給の件は解決した。しかしまだザッハム自体の防衛について、話が及んでいない。


「補給については納得した。次に防衛についてはどうする?」

「そこで貴方たち技術者エンジニアの出番、ということですよ」


 シロさんはそう言ってにっこりと笑う。


「物資は先程の魔導師からいくらでも送ってくることはできます。そしてまっさらな街を要塞に変貌させる……これを技術者に頼まずして、誰に頼むのでしょうか」


 挑発ともとれるその言葉を前に、クロウは眉を上げた。


「へぇー……面白いこと言ってくれるじゃねぇか。やってやるよ。最強の要塞を作ってみせようじゃないか!」


 しかし随分と人を乗せるのが上手いよな、シロさん。

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