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第六節 方向転換 4話目

 今回我が家で話し合った内容の要点を纏めるとこうなる。

 まず一つに、目的としてナックベア領地内にあるチェーザムという大きな都市を奪取するというギルドの計画を、三人にそのまま伝えた。ウタとアリサは大規模な戦いということで心配していたが、ゲーム慣れしているユズハを通して普通の大規模レイド戦のようなものだと教えたことで、納得して貰えた。

 二つ目に、ラストとグリードがその間家に残るということ。特にグリードは今後も家に滞在するということを伝え、何かあったらグリードも手を貸すという約束を取り付けることもできた。

 ラストは最後まで不満が残っているようだったが、今回の戦いで先にオラクルの戦力を測っておくという下調べをする予定だ。そこにわざわざラストを餌としてぶら下げておく必要など無い。


『――ということで、ここまで何か質問は?』

「無いよ」

「私も、パパが危ないところに行っちゃうのは納得できないけど……」

『ゲームをクリアする為だ。俺だけここでゆっくりしている訳にもいかない』


 あっさりというユズハとは対照的に、ウタとアリサは少しごねるような雰囲気を醸し出している。

 辺りは既に暗くなっている。暖炉の火と魔法による天井照明で家の中は明るくなっているが、その雰囲気まで明るいとは限らない。


「主様……一緒にいるって約束でしたのに……まさか本当に家に置いてきぼりだなんて……」


 その隣でもっとごねている奴もいるが、それには敢えて触れておかないでおこう。傍において置いたり家に待機させたりと指針がブレブレなのは自覚があるが、ラストを守る為には臨機応変に考えていかないといけない。


『俺も明日にはここを出る。だから今日は――』

「じゃ、一緒にお風呂入ろうよパパ!」


 えっ……?


「えっ?」

「えぇっ!? さ、流石にそれはダメじゃない……?」


 硬直するアリサと、冷静な判断をするウタ。いやいやいや、その反応が正しいんだが。

 流石に中身アラサーのおっさんが、ゲーム内とはいえ妙齢の少女と一緒に風呂を入るなんてコンプライアンスをぶっちぎっている。


「お前……やはりそういう趣味が――」

『断じて違う。ユズハだけだ、これだけオープン過ぎるのは。……というか、グリード、お前が一緒に入ってやれ』

「えっ? はっ?」

「そ、そうだね! ユズハ、グリードさんと一緒にはいろ?」


 何とかターゲットをそらす(というより、押しつけた)ことで難を逃れたが、ついでに俺のそばで浮き足立っているもう一人の七つの大罪(セブンス・シン)も一緒に入れてくれないだろうかと思っていたりもする。


「お、おい! 私がこんな子どもと――」

『普通にしていれば大丈夫だろ。何かあったらラストに言えばいい』

「私がですか!?」


 そういったところで話は纏まったということにして、俺は最後の準備をするべく自室へと戻っていく。


『俺は今から次の戦いの為の支度にかかる。ウタ!』

「はい?」

『明日の朝食、楽しみにしているからな』

「……分かりました!」


 そういって俺はその場を後にし、自分の部屋の扉を開ける。


「……本格的にこいつを使う時が来たか」


 ラストから預かって以降は壁に掛けてある刀の中の一つに目を向けて、俺は一人呟く。

 ――妖刀・籠釣瓶カゴツルベ。朱色の刀身を鞘の内に秘める、前作におけるレアリティレベル120の最強の刀。


「ラストが抜けている分、こいつで補うしかない……か。万が一に抑える役のラストも家に置いていくことになったし、注意するべきなんだが……」


 しかしこれは諸刃の剣。運用を間違えれば、俺自身が抹消デリートされる。


「……奥の手として、所持しておくか」


 そうして俺はステータスボードを呼び出し、この妖刀を装備とは別に持ち込むことを決意した。

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