第六節 方向転換 3話目
微妙に風邪気味なので短めですが初投稿です(・ω・`)。
『――着いたぞ』
夜中から半日かけての移動。まぶしい日差しが、我が家を照らし出していた。
『ここが俺の――』
「主様と私の愛の巣だ。本来なら貴様のような羽虫が入ることは許されないが、今回! 特別に! 許可してやろう」
……人の台詞に被せるのやめてくれ。それと別に愛の巣でも何でも無いからな。グリードもいちいち真に受けて驚いたような顔をするな。
『……とりあえず、中に入れ。子ども達もそろそろ起きているかもしれないしな』
「子どもっ!?」
「私と主様の間の子だ」
どんな思考回路をすればそんなアクロバティックな考えが浮かび上がるんだよ。
『普通に保護しているだけだ。そういう関係ではない』
「普通に保護、というのもおかしな話だと思うが……」
『……それについては何も言い返せないな』
兎にも角にも、グリードにも会わせておかないことには、話は進まない。事前にメッセージそう思って俺が扉に手をかけると――
「おっ帰りー!!」
「ぐおっ!?」
内側から勢いよくドアが開けられ、真っ正面からドアに顔をぶつけてしまう。
「ぐぅう……」
「主様!? 大丈夫ですか!?」
「えっ!? パパごめん!」
「何やってるのよユズハ! まったくもう!」
「そ、それより、知らない人がいるよウタちゃん!」
「えっ? あ、はじめまして!」
「……どこからツッコめば良いのか分からん」
そりゃそうだろうな。傍目に見ればいきなり額を強打してうずくまる俺と、そんな俺をパパ呼ばわりする三人娘。情報が錯綜していると言っても過言ではない。
『……ひとまず中に入れてくれ。話は後だ』
「分かった!」
「とにかく、氷か何かで冷やした方が良いかも……」
◆ ◆ ◆
『――ということで、こいつも今度からうちで預かることになった』
「…………」
「……なんか、あんまり歓迎されている雰囲気ではなさそうだが」
まあそうなるだろうな。同じ怪しい見た目でも実際に三人を助けた俺やラストはともかく、グリードもある意味では怪しい雰囲気しかない眼鏡をかけた女だからな。
「……パパが言うなら、信用するけど」
「おい、さっきは聞きそびれたがパパってどういうことだ?」
『そこに深くツッコみを入れるな。俺だって実際この扱いには困惑している』
「というより、女の人ばっかり連れてくるよね」
「おい」
もうやめろ、頼むから。俺が誤解される。いや確かにそうなんだが、俺にはちゃんと男友達もいるし。
「ところで、グリードさん、だっけ?」
「ああ。どうした?」
「グリードさんは剣術とか何かできるのか?」
ユズハとしては、グリードもまた何か特技を持っているのかということに興味がある様子。
「私の特技か? 私は……そうだな、日本に――」
『それはやめろ』
「どうして? 彼女たちの身の上を聞けば、それこそあっちで暮らした方が幸せだろうに」
『それは根本の解決にならないと言っただろう』
隙あらば異空間にプレイヤーを送り込もうとするのはやめさせなければ。少なくとも俺と関わりのあるこの三人と、ギルドのメンバーに対しては。
『勧誘するのは俺と関わりのある人間とギルドのメンバー以外にしてくれ』
「随分と我が侭なものだ。だが、お前がいうなら仕方ない」
「一体何の話?」
『気にするな。ユズハ、グリードが得意なのはラストと同じで魔法だ。剣については俺が教えているんだから、いいだろう?』
「うん、分かった」
さて、グリードの紹介も終わったところだし、そろそろ本題に入ろう。
『……次の遠征についてだが』
「また戦いに行くの?」
『ああ。今回もお前達三人は留守番になるが、それに加えてラストとグリードもここにいてもらう』
「えっ? 本当?」
「そうです、私も留守――って、主様!?」
『さっき納得してただろ……』
そうして俺は、今回の戦いについて、更に話を続けることにした――