第六節 方向転換 1話目
一面荒れ狂う砂埃。それもその筈で、ナックベアとベヨシュタット、それぞれの陣営が共に得意とする白兵戦が至る所で繰り広げられている。
「優勢かどうか、ここからでは分かりませんね……」
『というより、完全に乱戦になっているのと巻き上がっている砂のせいでどっちがどっちなのか、見分けをつけるのも難しい』
数キロ離れた砂丘の上から戦況を見下ろすが、どちらが有利なのか不利なのか、判断をつけることが難しく思える。
「だったら片っ端から倒していけばいいんじゃないのぉ?」
そんな狂戦士みたいな真似をしてたまるか。
『前作と違って色で判別がつく訳でも無いからな。日が暮れれば一旦は陣が分かれると思うからその時に改めて様子をうかがう必要があるかもな』
「お前達がのんびり構えようが知ったことではないが、これだけの戦闘規模なら、オラクルが降臨することも十分考えられると頭に入れておくんだな」
グリードが釘を刺すように言っているが、それも重々承知の上だ。とにかく現状は離れた場所で野営の準備を行い、夕暮れ辺りから改めて陣を見ることになった。
◆ ◆ ◆
「――ようやく今互いに撤退していっているようですね」
「さて、ザッハム側にいるのは――って、伏せろ!」
一瞬の判断だった。それぞれが撤退したのは、何も夕暮れ時で戦いに支障が出るからと言う訳ではなかった。
「……オラクルですね」
『お出ましのようだ』
「……っ!」
身体の中心に開けられた穴から、眩い光が夜を照らす――俺が以前に剣王どこからか戦争を嗅ぎつけて、七つの大罪がやってきていないかと見回りに来ている様子。
恐らくはそれを見たどちらかが、突如現れた存在に危険を察知し、それに伴って両軍ともに撤退をしたのだろう。
震えるラストに覆い被さるようにして姿を隠しつつも、俺は敵の様子をうかがう。
『……目視でしか索敵をしないようだな』
「スキャニングと言った方が正しい。やつの視界は全方位、障害物にでも隠れていない限りまず見つかる」
オラクルに見つからないよう砂丘の陰に身を潜めつつ、グリードはそう説明をする。
「だが一度目視で発見されれば、死ぬまで追いかけ回すだろう」
そうしてしばらくの間辺りを見回し終えると、オラクルは何事もなかったかのように空へと真っ直ぐに帰っていく。
「……作った私自身が言うのもアレだが、化け物だな」
『だがその化け物を殺すしか、助かる術はない』
オラクルが完全に消え去ったのを確認した俺達は、改めてやつが降臨した砂丘に目を見やる。
「……特段何かがあるような戦場でもないですね」
『ああ。死屍累々の戦場だがな』
既に抹消されたプレイヤーの姿はないものの、未だ生々しく残る血溜まりの数々が戦場の苛烈さを物語っている。
「……さて、この場を仕切っているのが誰なのか、確かめに向かいましょう」
『……ああ、そうだな』
炎上する街並みとはまた違った凄惨な光景を後に、俺達はベヨシュタットの陣営の方へと向かっていった。




