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第一節 道のり 1話目

 今回は繋ぎの回なので短めです。

「ご覧ください主様、あんなに町が遠くになりましたよ」

『列車だからな。そういうものだろう』


 時代的には西部開拓時代くらいか? 馬や馬車だけの移動から蒸気機関車での移動とは、文明レベルが相当進んだように思える。


『それでもマシンバラの技術の末端レベルなんだろうがな』


 他の客もいるような席ではなく、テーブルを挟んで向かい合って座れる個室を用意してくれている辺り、ボリスの上司とやらはそれ相応に俺達をもてなすつもりはあるらしい。

 そこで俺は遠慮なくテーブルの上に今回調達した品々を並べて一つ一つ品質を確認してみるが、あのマルタという少女、今度であった時はお抱えの行商人として引き入れても問題ないと思える程の高品質の商品を扱っているようだ。


「そういえば以前主様とは、カジノにも行きましたわね」

『そうだったな。どの国の人間であろうとシンボルカラーを取り上げられるから、常に中立で分からなく――ん?』


 そういえばここまで全く気にしていなかったな。前作であれば各国の所属の印としてシンボルカラーを衣服なり何なりに目立つようにいれるのが普通だったが……今作は特にそういったものが見受けられていない。

『……ベヨシュタットの青が無かったな。そういえば』

「あっ、本当です。言われてみればそうです」


 このままだとどこの国の所属の人間か一目で分からない。これは地味に困ったことだ。


『……警戒は解かない方が良いかもしれないな』


 ラストの言うとおり、あの男も色をつけていないということはどこの国か分からない。本当はベヨシュタットではなく、別の国の人間が俺を引き入れようとしているのかもしれない。


『……っと、そうだった。ラスト』

「はい?」

『さっきのボリスに仲間がいたことに気がついていたか?』

「……ええ」


 それまでウキウキとしていたラストの表情が強張るあたり、やはり気がついていたからこそあそこまで反対していたのだろう。


「あの場にもう一人、こちらの様子をうかがっていました。恐らくこの列車にも一人……」

『俺も気がついていない訳じゃない。ただこの列車内で戦うことは無いだろう。いざというときに俺はラストにしがみつくことで飛んで離脱することができるからな』

「別に今しがみついて貰っても構いませんよ?」


 隙あらばわざとらしく胸元を晒すんじゃない。そしてテーブル越しに身を乗り出すな折角広げていた品々が床に落ちてしまう。


「主様、手をお出しいただけないでしょうか?」

『……何故だ』

「私がその手を胸にしまい込んで温めて差し上げますわ」


 隙あらば誘惑を仕掛けるとは、相変わらずとしか言いようがない。


『ちょっと真面目になったと思った矢先にこれか……』

「百年前はそれよりも激しいコトをしたといいますのに、今更胸を揉むくらいで何を慌てているのです?」


 アレは完全に非同意の元無理矢理捧げられたものだというのに、この百年間で無理矢理記憶をねじ曲げたのか? 


「うふふふ……」


 妖しく笑みをこぼす様はまさに蠱惑的な美女そのものだが、ひとたび絡みつかれたら最後だということを忘れてはならない。


『まったく……ん?』


 窓は閉めているはずなのに、妙に焦げ臭い匂いがする。


『なんだ? 石炭の入れすぎか?』

「分かりません。しかし焦げ臭い匂いは確かにします」


 ふと窓の外を見やると、高速で走る列車と併走して陸路を走る集団が見える。


『……野盗か』

「そのようで」


 随分と早い馬を揃えているようで――と思っていると、列車の後方に急激な加重がかかったかのような振動が、俺達のいる客車にまで伝わってくる。


『……見てくる。何かあったら空から援護を』

「承知しました」


 それにしても、移動時間ぐらい落ち着かせて欲しいものだ。

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