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第五節 砂漠の境界線 5話目 強欲

「貴様とてこのゲームをクリアすれば現実世界に再び戻る選択肢をとるのだろう? それを何故拒む?」

『さあな。今はもう少しこの世界であそびたいって気持ちが俺の中では強いんだろうよ』


 対グリードなんて想定していなかった。というよりも、十年前は誰もグリードなんて見つけられなかったのだから、これがまさに初戦となってしまう。


『チッ……対一ならまだしも、なんだこの数は』

「主様、気を付けてください」


 多勢に無勢。というよりは今まで彼女の甘言に乗ってきた多くのプレイヤーを模しているのだろう、その分身体アバターが、女王を守る為にビル屋上へと次々に召喚されていく。

 一体一体はそれほど強いわけではない。かといって雑魚敵として処理できるほど弱くもない。既に現実世界に引きずり込まれかけたことですり減った精神で、更に終わりの見えない戦いを仕掛けられてしまえば、心が折れるのも時間の問題になってしまうだろう。


「【刺突心崩塵ハートキルスティンガー】!!」


 ラストが働いてくれているおかげである程度の殲滅力はあるにしても、それを上回る援軍の到着速度。今のところはアバターが湯水のように湧き出てくるくらいで本体からの攻撃はないものの、その他プレイヤーへの敬意を表するという意味も含めて、これは十分な脅威といえる。


「中々粘るじゃないか……じゃあ、これはどうかな?」


 パチン、とグリードが指を鳴らすと同時に、ソレまでビルの陰に隠れていたのであろう、二機のヘリコプターが姿を現す。


「何でもありかよ……!」

「テクニカのような国が出てくるんだ、この程度はあっても何もおかしくはないだろう?」


 ヘリコプターが横を向けば、備え付けのガトリングとのご対面となる。


「さあ、タップダンスでも踊って貰おうか!!」


 ガトリングが空転を開始し、そして次の瞬間には弾丸の雨あられが屋上へと降り注ぐ。


「私にお任せを!」


 ラスト得意の防御魔法、【空間歪曲エリアルディストーション】。歪曲した空間を前に、全ての物理攻撃は外へと逸れていく。


「よくやったラスト!」


 そして空間歪曲の内側からでも通すことができる技。それが――


「抜刀法・弐式――双絶空そうぜっくう!!」


 空間断裂を込めた抜刀ならば、内側からでも斬撃を通せる!!


「っ!? マジかー、そこまで抗うとはな……」


 自信満々に登場させたヘリコプター二機を二発の絶空で斬り捨ててみせると、流石のグリードも驚きを隠せずにいる様子。


「ならばこれはどうだ?」


 パチン、と次に現れたのは対になるような多数の小型のビット。その間には電流が流れている。


「ほら、ここまで来なよ」


 グリードはそう言ってビットを途中途中に展開し続けながら、別のビルへと飛び移っていく。


「これるのなら、という話だけど」

「あの女……!」

『ラスト! お前はここに残れ! 俺が行く!』


 この中で一番器用さ(PRO)が高い俺ならば、ビルの間を縮地で壁走りをして追いつくことができる。


「しかし主様――」

『頼んだぞ!』


 ここで行方を見失うわけにもいかない。後を追わねば。


「へえ、やっぱり君が来るか。侍」


 道中を塞ぐ電流を回避しながら、縮地法で壁を走ってグリードを追う。


「君とは一対一で話してみたかったんだよ」

『そうか。だったらまずこの戦いを終わらせてからだな!』


 抜刀法・弐式――


「――絶空!!」


 グリードの移動先であろうビルを斬り、敵の移動を制限コントロール。斬撃を飛ばすだけが能の技ではない。


「はぁ、これだから近接メイン職に遠距離技を持たせるのを反対したんだよ私は!」


 グリードは追加のビットを更に召喚して道を塞ぐが、通れないのであればビットの破壊をすればいい。

 こうして徐々に距離を詰めていく。もう少しで相手の首に刃が通る!


「抜刀法・弐式――双絶空!」

「くっ……攻撃範囲に捕らえられるわけにもいかない!」


 すると今度は下から援軍が召喚されたのか、銃弾が壁面に向けて次々と飛んでくる。


「ちぃっ!」


 とっさに刀でいなしてみせるが、その隙にまたしても距離を離されてしまう。


「ちょこまかと逃げやがって……!」

「すまないがこれも戦術なのでね。これで逃げさせていただくよ!」


 僅かでも処理の順番をミスすれば、確実に集中攻撃に晒される。詰め将棋のような戦いに、俺もしびれをきらしてしまいそうになる。


「いい加減ミスれっての!!」

「悪いが、こんなところでミスるわけにも行かないんでなぁ!!」


 抜刀法・参式――


「――裂牙烈風ざがれっぷう!!」


 幾重にも重なる斬撃がビットを切り裂き、最後の一太刀がグリードの喉元まで届く――


「――ぐぅっ!?」

『女を斬る趣味はない……なんて甘い考えは持たない主義なんでな』


 薄皮一枚。しかし確実にグリードの喉元に、俺の刃は届いていた。

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