第四節 肉を食み血を啜る獣 3話目
市街地から少し離れた場所での野営。流石に全ての戦力を市街地内へと向けているのか、こうして離れた場所に離脱さえしていれば被害を被る気配はしない。
「さて、他のメンバーとも連絡を取りたいところだが――」
恐らく盗聴装置が展開されているだろう。飛行船をわざわざ運用する辺り、裏を取られて破壊工作されないようにその辺は徹底しているはずだ。
「音響石はというと……そんなものを用意しているはずもなく」
元々この紛争にまみれた火事場泥棒をする際、誰かが失策して抹消されても、それは本人のせいで仕方がないというのが無礼奴時代のスタンスだ。
「グスタフさんも早く無礼奴のスタイルに慣れてもらって、こっち側にきてほしいところだが……まあ、今のところ暗黙の了解でいつものメンバーしか分かっちゃいないだろうな」
「ベルゴールの方は夜遅くになっても戦いが終わらないみたいですね、主様」
『そりゃそうだろうよ。疲弊した部隊はそのまま離脱、補充はあの飛行船から落下傘降下で次々と投入されるようだしな』
つまり飛行船二艇をどうにかしなければ、この戦いは量的にも質的にも負けが確定していることは明らかだ。
「では主様、明日は飛行船を落としたりとかは――」
『やろうと思えばできるが、やるつもりはない。最初に言ったとおり、ベルゴールはソードリンクスが仕切っている土地だ。まともに手を貸すつもりは毛頭無い』
陥落したところでソードリンクスも奪い取りたいだろうが、それよりも先に今度はこっち側が美味しいところをかすめ取る。今回の火事場泥棒は偵察も兼ねての戦いだが、この様子ならばテクニカが占拠したところですぐさま奇襲を仕掛ければ、楽にこっちでとれるだろう。
当然ながらその時の先陣は二代目刀王に切ってもらうが。
「流石は主様、あの土地を楽に手にする策を既に考えておられたのですね!」
『楽かどうかはまだ確定じゃないが、今のところは――』
――って誰だよ今メッセージを送ってきたのは。この場にいるのがバレるかもしれないだろうが。
『――って、シロさん?』
おかしい。効率を考えてなおも戦い続けているあの人なら、余計なリスクを考えてこんな時にメッセージを送ったりしないはず。
『一体何が……』
そこに記されていたのは、端的な文章による危険を知らせる内容だった。
――四体のホムンクルス、いずれもレベル三桁の完成形――
『――ッ!? ラスト!』
「は、はい!?」
『今すぐ市街地に戻るぞ!』
直感が告げている。これは洒落にならないものなのだと――
◆ ◆ ◆
――同時刻、ベルゴール市街地内にて。
「えぇー何これよっわ! 話だともの凄く強い剣士がいるって聞いてるのにガンマちゃん失望~!」
「黙れ糞餓鬼。俺達の仕事はこの街を焼き尽くすことだ」
「おーおー、ベータは血気盛んなことで。私はつまみ食いさえできれば良いのだが」
「……我々に与えられた使命。それはただ一つ――」
――皆殺しだ。




