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ep2.30 ドローンの都市内での飛行規制と匿名設定

―――前回のあらすじ

 マオは魔王にショットガンの解説をしていたのだが、話が脇道に逸れていくうちにショップ店員による新型ドローンのアピールが始まり、ついには購入する流れになったのだった。スタンド攻撃か!?

―――


 ショップのバックヤードへと商品を取りに行った店員は、間もなくして化粧箱を一つ台車に乗せて運んできた。

「お待たせしました。こちらが先ほどご紹介した商品になります。」

 台車に乗せて運ばれてきたのはもちろん、店員がオススメしていたドローンだ。

「おお、これがカメラマンみたいな動画を撮影してくれるって奴っすか。ふむふむ……」

 マオは箱を持ち上げると、上部や側面にプリントされた商品イメージ写真を軽く観察してから率直な感想を述べた。

「見た目は従来の奴とあんまり変わらないっすね。ハイクラスモデルで結構いい値段なんで、無駄に未来的なデザインを想像してたっすけど、そうでもないっすね。と言うことは、ガワよりも中身や付属品が高額な質実剛健ってパターンっすかね?」

 そう言うとマオは続けて箱の裏面に書かれたスペック表に目を通し、ドローンに搭載されている機能と、付属品を確認した。

「なるほど、リモコンはミニ画面付きの割とクラシックな奴なんすね。最近はヘッドマウントディスプレイを装着して、リモコン操作するタイプが増えてきてるっすけど、あれはヘッドセットとリモコンだけで500ドルくらいするっすから、流石に660ドルの商品には付いてないっすね。」

 これに店員が補足説明を加えた。

「この製品で使用できるヘッドマウントタイプのリモコンセットは、同メーカーから別売りで販売されていますから、必要に応じて買い足すこともできますよ。ちなみに標準付属のリモコンが必要ないなら、メーカーとの協定により不要なリモコンの定価相当での下取りを承っていますから、上位モデルとの交換は標準品との差額でご購入いただけますね。」

「あっ、そうなんすね。まぁ私はドローンの操縦免許を取得してるんで、練習用途で買うわけではないっすから、今のところは標準付属品のリモコンがあれば十分っすね。」

 幼い見た目のせいもあって、オススメされるがままに何でも買ってくれそうなチョロい雰囲気を纏っているマオだが、欲しい物には躊躇せずコストをかける一方で、要らない物にはノーと言えるタイプのお嬢なのだった。引きこもりとはいえ一応成人なので、本物の小学生よりかは分別があるのだ。


 店員の別売りオプション販促を退けたマオは、続けて他の付属品にも目を通した。

「他の付属品は、ドローン持ち運び用のバッグと予備バッテリーが二個、それとバッテリー三個を同時充電できる高速充電器が付いてるっすね。なるほど、欲しい物が最低限付属して、余計な物が一切無いシンプルスタイルは好感が持てるっすね。」

 ここでまた店員がインタラプトしてきて、商品アピールを始めた。

「こちらのメーカーは、ドローン本体はシンプルな構成の統一モデルで販売していて、多彩なオプションを必要に応じて買い足していく、ちょっと珍しい形態なんですよね。大概のメーカーはロークラス、スタンダード、ハイクラス、フラッグシップと言った感じで、グレードが上がるにつれて本体性能が上がり、合わせて付属品も充実していくような、本体とオプションが最初からセットにされた販売形態をとっていますよね。」

「そうなんすよね。グレード分けしてるドローンって、本体性能的には上位モデルが欲しいパターンが多いっすけど、そうすると一度も使わずに死蔵する様なオプションが大量についてくるんすよね。なんで、必要に応じて買い足せる別売り形態はありがたいっす。本体性能や搭載している機能的にも、他メーカーの上位モデルと遜色ないし、なるほどこの商品が売れる理由もわかるっす。」

 店員の営業努力もむなしく、マオが別売りオプションに興味を示すことは無かったが、メーカー自体の評価が上がったので結果的に購入意欲は増したのだった。


 そしてついに、と言う程引っ張ってもいないが、マオはドローンの購入を決意したのだった。

「うん、いいっすね。この商品を購入させていただくっす。」

 そう言うとマオは両手で抱えていた箱をいったん台車に戻した。

「はい、毎度ありがとうございます。こちら1点で660ドルになりますが、よろしいですか?」

「はい、大丈夫っす。」

「承知しました。ではお支払い手続きに入らせていただきます。」

 店員の最終確認に対してマオが答えると、店員はそのまま決済処理に移った。

―――チャリーン ピピピッ

 つつがなく決済処理が終わると、コインを落とした様な効果音の後にマオの所持金が660ドル減少したのだった。

―――パッパラー♪

『新人傭兵ミッションEX 初めての買い物 達成』

 ここでミッションクリアのメッセージが表示された。

 そしてマオがメッセージ下部の報酬受け取りボタンをクリックすると、彼女の所持金に1000ドルがポンと追加されたのだった。

 購入金額以上の報酬が戻ってきているが、新規勢の定着率アップ目的で最初はお金に困らない程度に、ジャブジャブ報酬がゲットできる仕様となっているのだ。


 ちなみに現在のマオと魔王のそれぞれの所持金は10万ドル強となっており、全身黒インナー姿の0ドル裸一貫スタート時から比べると、いつの間にか随分と懐は潤っていた。それは魔王との対戦を経て、『初めての対戦、初勝利、初キル、初死亡』などなど、いくつもの新人傭兵ミッションと、新規プレイヤー応援キャンペーンで後から追加された新人傭兵ミッションEXをクリアしたことにより、クリア報酬を受け取っていたためである。ちなみに、二人は対戦後にリプレイを鑑賞している途中で放置して食事に向かい、パソコンがスリープ状態になったことで回線落ちし、ゲームサーバーから強制ログアウトしてしまった影響で、対戦によって達成となったミッションクリアのメッセージはキャンセルされて表示されておらず、知らないうちに報酬を受け取っていたのだ。


 メッセージを閉じると、店員からも支払い完了の旨が口頭で伝えられた。

「660ドル確かにいただきました、これにて決済は完了です。商品はこのままお持ちになりますか?それとも個人倉庫に送りましょうか?」

 これを受けてマオは、台車の上の商品を両手で抱え上げながら応じ、続けて質問した。

「ありがとうございます。すぐに試してみたいんで、このまま持ち帰りでお願いするっす。ちなみになんすけど、ここで開封しても大丈夫っすか?ルシファーにドローンがどんなものか説明したいんで、できれば実際に飛ばしてみたいんすけど。」

 これに店員は満面の営業スマイルで答えた。閑散としたガンショップへの久々の来客だけでなく、商品も売れたので、暇を持て余していた店員は本来の職務を果たしてご満悦だったのである。

「はい、大丈夫ですよ。店内はあまり広くありませんので、手動操作での飛行はご遠慮いただきますが、自動追尾モードでの起動なら問題ないですよ。自動追尾モードには障害物回避機能も付帯していますから、街中やショップ内で飛ばしてもよっぽどわざとぶつかりにいかない限りは、人や物にぶつかることは無いです。」

 店員の答えによって、新たな疑問が湧いたマオは重ねて質問した。

「そう言えば、都市内を歩いている時に、何度かドローンを見かけたっすけど、街中で飛ばすのには許可とか必要ないんすか?動画撮影にしても、許可を取っていないプレイヤーの映り込みとかで、問題が出ちゃいそうっすけど。」

 これに再び店員が答えた。

「攻撃能力を持たない総重量250g未満のドローンで、かつ高度150m未満で飛ばす場合に限りますが、街中で飛ばすのに特別な申請は必要ないですよ。流石に軍用ドローンや大型ドローンは、特定エリア以外での飛行は禁止になっていますけどね。こちらの商品は条件に適合しているので、高度さえ守れば街中で飛ばしても問題ないですよ。」

「ああ、そうなんすね。それなら遠慮なく飛ばせるっす。」

 それは現実でのドローンの飛行規制に概ね準拠した内容だったので、現実においても黎明期にドローンに手を出した、割と古参のオーナーであるマオは規制条件に納得したのだった。


 マオからの一つ目の質問が解決したので、店員は続けて二つ目の質問の回答に移った。

「次に、撮影無許諾のプレイヤーが動画撮影に映り込んでしまう件についてですが、オプションの個人情報保護の項目で、他プレイヤーの動画撮影に映りこんだ際の匿名化処理が設定できるので、基本的には問題ないですよ。初期設定では自分自身とフレンドの動画にだけ本来のアバターを表示して、フレンド以外のプレイヤーの動画には仮想のアバターが表示される仕様になっていますので、映り込みを気にしない場合、あるいはこだわりのアバターを他人にも見せびらかしたい場合には、表示設定を変更しておくことをお勧めします。なお、プレイヤーが18歳未満の場合、保護者の許可がないとこの設定は変更できないので、ご注意ください。」

 見た目が幼女のマオなので店員はあえて最後の注釈を加えたのだが、知っての通り24歳児であるマオにその心配は要らぬお世話であった。

「へー、そんな設定があるんすねぇ。意外と知らないことが見つかるし、たまには街歩きしてみるのも新鮮でいいっすね。」

 ところでマオは、自身が子供扱いされている事実に気付いていなかったので、単純に仕様説明の一環で保護者のみまもり設定についても説明してくれたのだろうと、都合よく解釈していたのだった。彼女は子供扱いされて怒るような性格ではないが、いずれにしても知らぬが仏である。


 こうして、店員のオススメに乗せられてまんまとドローンを購入したマオだったが、ちょど動画撮影に幅を持たせたいと考えていたタイミングの良さもあって、彼女としても満足のいく買い物ができたのだった。

 ちなみにすっかり放置されていた魔王だが、ドローンがなんなのかそもそもよくわかっていないので、ひとまず口は挟まずに黙って話を見守っていたのだった。

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