表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/44

ep2.25 リコイルバグ検証開始

―――前回のあらすじ

 寂れたガンショップを訪れたマオと魔王は、暇を持て余していたショップ店員もついでに巻き込んで、ショップの試射スペースを借りて支給品アサルトライフルのリコイルバグの検証を始めたのだった。

―――


 マオは検証動画を撮影し始める前に、改めて店員に声を掛けた。

「それじゃあ準備も整ったんで、今から動画を撮り始めるっすよ。検証結果は動画サイトにあげて、運営にも報告するつもりっすけど、店員さんは映り込んじゃっても大丈夫っすか?」

 相手はNPCとは言え、自律思考可能な高性能のAIを搭載しているので、粗末な対応をすれば怒ることもあるし、そうなると当然好感度が低下する。それゆえに人間に対するのと同様の気遣いが必要なのだ。

 マオからの撮影開始の宣言並びに、動画への顔出し可否の確認に対して、店員は笑顔で快く承諾の旨を返答した。

「はい、問題ないですよ。うちの宣伝になるかもしれないですし、どんどんやっちゃってください。」

 これを受けてマオは、ゲームに標準搭載されている動画撮影機能を起動し、RECボタンを押して撮影を開始した。ちなみにここで撮影した動画はプレイヤーのパソコン上に保存されるため、動画が直接ゲームサーバー上にアップロードされる事は無い。それは対戦時のリプレイ動画においても同様で、ゲームサーバーの負荷軽減のための措置である。


 さて、いよいよ動画の撮影が始まり、輸送コンテナを踏み台にして試射台の前に立ったマオは、テーブルに両肘を乗せる形でライフルを構えアイアンサイトを覗き込み、5m程離れた位置に設置された人型のターゲットに狙いを定めた。

 マオの貧弱なアバターは立ち姿勢のままライフルを構えると、その重量に腕力が負けて、射撃姿勢を長く保てない事が既に判明しているので、テーブルに肘をついて安定射撃姿勢を取る事で解決しているのである。

 そして、マオの様子を見ていた魔王は、間仕切りを挟んで隣のスペースに立つとマオに倣う形でライフルを構えた。

「それじゃあ撃ってみるっすよ。」

 マオはそう宣言すると、ターゲットの胴体ど真ん中を狙ってトリガーを引いた。

―――パパパッ

 マオは三点バーストモードで射撃したので三発の弾丸が発射され、多少のブレはあるものの、三発とも狙い通りにターゲットの胴体へと命中した。

 そして肝心のリコイルはと言うと、安定射撃姿勢を取っていたため転びこそしなかったものの、やはり現実的ではない大きな反動が発生しており、銃身が大きく跳ね上がったのだった。その威力は、前傾姿勢で体重をかけていた肘がテーブルから離れる程だった。

「おおっ、やっぱり異常にリコイルが激しいっすね。よし、続けて何回か撃ってみるっす……」

―――パパパッ パパパッ パパパッ パパパッ

 先だっての対戦において感じた異常な反動に再現性があることを再確認したマオは、続けて4回射撃して、そのいずれにおいても大きな反動が発生するのを確認した。

「ちゃんと再現性があるっすね。それじゃあ、次はルシファーも同じ様に撃ってください。」

「了解だ。」

―――パパパッ パパパッ パパパッ パパパッ パパパッ

 マオに指示された通りに魔王は5回の射撃を行ったが、過大な反動は見受けられず、弾丸はすべてターゲットに命中しており、ただただ安定した射撃が実現されるのを確認したのだった。

「うむ、よくわからんが、異常なリコイルとやらは発生しているのか?」

 魔王が思ったままの疑問を呈すると、その様子をじっくりと観察していたマオは状況分析しつつ答えた。

「うーん、やっぱりアバターの腕力と言うか体重による安定性の差っすかね。ルシファーのアバターは概算で私の5倍くらい重いんで、反動の影響が軽微なんだと思うっす。あとは腕の長さが違うんで、私の場合はライフルの保持姿勢が悪くて、がっちりホールドできてないっていう点が影響してるかもしれないっす。」

 マオは二人のアバターの性質を精査して、魔王にだけ影響が見られない理由を推定したのだ。しかし、これだけでは、実証データが足りないので、続けて店売りのライフルとの比較検証に移る事にしたのだった。


 マオは店員から受け取っていたカタログを開き、アサルトライフルの特集ページに目を通した。

「それじゃあ次はお店のライフルを試射させてもらうっすけど、えーっと、どれがいいっすかね……」

 低価格帯の銃器を扱う初心者向けのガンショップなので、ラインナップはそれほど潤沢ではなかったが、それでもアサルトライフルだけでも十種類程が用意されていた。その中でもマオが注目したのは、各国の軍隊でかつて正式配備されていた旧式銃で、現行品に置き換えられた事で役目を終えた、ひと昔前の型落ち品達だった。

「やっぱり正規軍での運用実績がある奴がいいっすかね。他よりもちょっと値が張るっすけど、信頼性が違うっすからねぇ。」

 最新モデルに比べれば一段性能は落ちるものの、長期にわたる運用実績に基づいた改良を経ている旧モデルの信頼性は厚く、安定した運用が期待できる。概ね1000ドル前後で低価格帯としては少々値は張るが、コストパフォーマンスに優れた狙い目の商品なのだ。

 ちなみに他のラインナップとしては、第二次大戦時にゲリラやテロリストが使用していた様な、正規メーカーの製品を劣化コピーした粗末な廉価銃や、第一次大戦末期に使用されたアサルトライフル黎明期に開発された骨董品の類だ。とにかく安あがりに装備を整えたい初心者需要に向けた商品で、価格は100ドル未満と激安だが、いずれも暴発や弾詰まり(ジャム)を起こしやすかったりと信頼性が著しく低く、命中精度・有効射程の面でも軍隊配備モデルとは比べ物にならない粗悪品なので、現代戦においては実用に耐えず、ネタ装備と言わざるを得ない名状しがたい物体だ。そんなわけで、ベテランプレイヤーであるマオは、これらの商品を最初から購入候補に入れていない。


 マオがテーブルに広げたカタログを見て商品を選んでいると、魔王が隣のスペースからマオの後ろに回り込み、頭越しにカタログを覗き込みつつ声を掛けた。

「かなり種類があるのだな。どれも似たような見た目だが、何が違うのだ?」

 これにマオが答えた。

「そうっすね、軍隊に正式配備されていた様なモデルだと、どれも堅実な造りで、有効射程やら装弾数なんかは概ね似たような性能なんで、ぶっちゃけ見た目で選んでいいっすけど、必要な機能が標準搭載されているかどうかは確認したいっすね。大きな違いだと、バースト射撃機構が付属してなくて、フルオートとセミオート射撃の切り替えしかできない物が有ったりするっす。拡張パーツを後付けすればバースト機構を追加できたりするっすけど、最初から使うつもりなら標準搭載してる奴を選んだ方が無駄が無いっすね。」

「ふむ、欲しい機能の有無を見るべきなのだな。ところでセミオートと言うのはなんだ?」

「セミオートはトリガーを一回引くと一発だけ弾が発射される方式っすね。確実に急所を打ち抜く腕前があるなら単発でもいいっすけど、私の経験則から行くとアサルトライフルで銃撃戦になった場合、距離を詰めて比較的近距離で撃ち合う事になるっすけど、そうなると一撃必殺を狙うのはかなり難しいんで、制圧力と命中精度、弾薬節約の兼ね合いが取れた三点バースト射撃が、初心者ベテラン問わず無難な選択っすね。」

「なるほど、了解した。ならば今回はバースト射撃機構が標準搭載されたものを見たらいいのだな。」

「そうなるっすね。あとは、資金が貯まって高性能の最新式に武器を更新する時の事まで見据えると、最終的に使いたいライフルのから遡って同一シリーズの旧モデルを選ぶって考え方も有るっすね。マガジンやアタッチメントなんかが同一規格で作られている場合が多いんで、同一シリーズを愛用していると改造パーツや消耗品を改めて買い直す必要が無くてちょっとお得っすね。新モデルへの改良更新に伴って、各部の規格が変更される場合もあるんで、全部流用できるとは限らないっすけどね。」

 魔王は引き続きカタログに目を通しつつ質問を続けた。

「なるほど。商品単独の性能のみならず、シリーズ単位での拡張性や発展性を考慮して選ぶ必要があるわけか。まぁ余は最新式のライフルを知らぬから、どのシリーズがよいのかなど見当も付かぬが、マオのオススメはどれだ?」

「私のオススメっすか?うーん、特にこだわりは無いんすけど、自衛隊と米軍の標準配備の奴に、ちょっと自分で手を加えたカスタム品を一番よく使うっすね。あとは気分次第でドイツとイタリアメーカー製のライフルをたまに使う感じっすね。逆にイギリス、ロシアとアジア系メーカーの銃は避けてるっすね。こっちも気分の問題っすけど、なんとなく信頼性が低いイメージなんすよね。」

 特にデータがあるわけではないが、マオが漠然と抱いている各国の雰囲気で適当に語っている個人の感想なので、実際の性能や効果を保証するものではありません。

 少々横道にそれ過ぎたので、マオは検証データを取る方向に話の筋道を戻した。

「今回は支給品のライフルとの比較が主軸なんで、支給品と同じメーカー製の、米軍配備のモデルを試してみるっすよ。」

「了解だ。」

 魔王への説明が終わったところで、マオは踏み台から降りて、背後に控えていた店員のもとに歩み寄り、カタログの該当ページを見せつつ商品の貸し出しを依頼した。

「と言うわけで、これを貸してもらえるっすか?」

「はいよろこんでー。少々お待ちください。」

 店員は待ち構えていた様子で色よい返事をすると、すぐさまバックヤードへと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ