第6話 カリンの白
レッツスタート!
「………よし、入ってこれた」
「じゃああっちだあっち! カリンのことだ、とっくに来てると思うぜ?」
「分かってるよ!」
あの日から数日経ち、「ウィッチ」の使い方にも大分慣れてきた。
そして今日は、イグニの言っていたダンジョンに挑みに来ていた。
俺は待ち合わせのしていたダンジョンの入り口に急いで向かう。
そこにはやはりカリンの姿があった。
「ごめん、待ったか?」
「いえ、私も少し前に来たばかりですので、じゃあ行きましょう」
「あぁ、そうだな」
俺たちはダンジョンの中に入った。
ダンジョンの中は石製で、とても綺麗な内装だった。
すると、すぐにモンスターたちが生成される。
「少し怖いですけど……」
カリンはエクスフォーリーで空中を切り裂いた。
すると、それは光魔法を纏っており、衝撃波となってモンスターを襲った。
モンスターは一瞬にして消滅する。
それを何回も繰り返し撃っている内に、その階のモンスターは一匹もいなくなっていた。
カリンはそんな中、何事もなかったように俺に顔を向けて、笑顔を振り撒いた。
「頑張って攻略していきましょうね!」
「お、おぅ……」
怖いです、カリン先輩。
俺たちは、この数日でとてつもなく強くなった。
カリンは剣の扱いになれたし、魔法との組み合わせも出来るようになった。
俺は魔法の組み合わせで攻撃力の拡大も出来るようになった。
確かに強くなっている。
俺たちはその後も、順調にボス部屋へと進んでいた。
そして見つけたのは、俺たちの体の何倍もある大きさの扉。
この先がボスであることを暗示しているかのようだった。
俺は扉の前に立った。
「カリン、魔法でバリア張っとけ」
「もう張ってます。やっちゃって下さい!」
「じゃあやるか」
俺は火魔法を手に纏い、その状態で扉を殴り付ける。
すると、扉には俺の拳を中心に大きく風穴が空いた。
俺の装備だと、火魔法で殴るだけで約2.3倍、しかもこの装備だ。その威力は計り知れないだろう。
「じゃあ行くか」
俺たちはボス部屋の中へ足を踏み入れた。
《《《《《
それは、巨大だった。
今まで見たモンスター(イグニ以外)の中でも群を抜いて大きかった。
それが発する物音は、ミチミチと音を立てていて気持ち悪い。
その姿は、全長三メートル程。しかし、足はない。
皆が、気持ち悪いと言うもの、それは――――
「みりゃああ!」
ミミズだった。
「きゃああ! 死ぬ! 死ぬ! 死んじゃう!」
カリンは猛スピードで入り口に戻り、扉をドンドンと叩いた。
「おい、そんなそこまで………」
すると、巨大ミミズはカリンの方へと向かった。
見た目によらず、案外足が速い。
「おいカリン! そっち行ってるぞ!」
「……へ?」
「みりゅああ!!」
巨大ミミズがカリンを食べようとしているのか、大きく口を開ける。
「だから来ないでってぇ!!」
カリンは意識があったのか分からないが、衝撃波を連続で十発程撃ち込んだ。
すると、巨大ミミズは消滅してしまった。
「……いや、あっさりとしすぎじゃね?」
イグニがひょいと顔を出して言った。
「あいつの名はデスワーム、光属性が弱点だからな」
成る程、だからこの程度で勝てたのか……。
すると突然、カリンの目の前に金色の箱が現れた。
「ん、これって……」
「あぁ、それはギフトボックスだな。ボスの討伐報酬だ。お前が受け取っとけ」
カリンはギフトボックスを開けてみた。
「うわっ、凄い!」
カリンは突然、感嘆の声を漏らすと、すぐに装備を変え始めた。
それは前の初心者装備よりも繊細で美しくなっていた。
主に白を使われた、動きやすそうなイメージの装備だ。
どうやらこれが、ギフトボックスから出た討伐報酬らしい。
「どうですかね?」
「どうって、普通に似合ってると思うぞ?」
俺がそう言うと、カリンは顔を赤くし、口元を抑えて俺に顔を向けないようにした。
「そう言うこと、簡単に言っちゃうのはずるいです……」
そう言って俺の顔を見れないカリンに、俺は少し疑問を浮かべていた。
なんか、最近のカリン大丈夫かな?
乙女心が分からない、というか、分かろうともしないグレンであった。
『火精のグレン』をお読みいただき、ありがとうございます。
さて、今回は「ダンジョン」についてお話させていただきます。
「ダンジョン」は、三種類に分けられます。
一つ目、「王道型」。
名前を見ていただいて分かる通り、「王道」です。まぁ、言ってしまえば「ノーマル」、普通です。
入ると大勢の雑魚がいて、その奥にボス部屋が配置されているという極めてシンプルで、分かりやすいダンジョンではないでしょうか。
ボスは倒されると、一定時間してまた復活します。
二つ目、「初っ端型」。
これは最早、入り口=ボス部屋です。
入ったらびっくり! おっきなおっきな大怪獣が!
「どうせ入り口付近は雑魚だろwww」という心構えで行くと、驚いて腰を抜かしてぱくりっ、なんて事例も。
この型のダンジョンの場合、雑魚がいない分「王道型」よりボスが強いです。
皆さん、ダンジョンには準備をして臨みましょう!
三つ目、「バブル型」。
こちらは、ある一点を除けば「王道型」と殆ど同じです。しかも、ボスを倒したギフトボックスはこちらの方が優良です。
しかし、このダンジョンで気を付けなければいけないことはただひとつ! 崩壊すること!
実はこのダンジョン、気まぐれに町の外でランダムに突然発生するのですが、一定時間すると崩れ去り、跡形も無くなってしまいます!
確かに、「あぁ、このダンジョンの為に色々準備したのに……」という残念なこともありますが、それよりも、中にいるプレーヤーにも、瓦礫が落ちてくることです!
そのダメージは尋常ではなく重く、大抵のプレイヤーは一瞬で石となってデスアウトします。
残った石はダンジョンと共に消えるので、このダンジョンの場合は気を付けるように!
では、シーユーアゲイン!