第5話 聖剣 エクスフォーリー
俺たちは手を繋いだまま狩り場である森に辿り着いた。
「じゃあ、ここら辺でやります?」
そう言ってカリンは俺から手を離してしまった。
う、なんかここまでずっと繋いでたから、無くなってしまうと何故だか心細いな。
俺はそれでも我慢して、そのまま一緒に狩りを始めた。
数十分した後に、休憩がてらステ振りの時間にする事にした。
「うわっ、たっくさんポイントが入ってます! やっぱりグレンとやると捗りますね!」
「俺も、仲間がいた方が楽しくてやりやすいよ」
「カリンも頑張ってパラメータ上げてるな。……もうそろそろ行かせてもいいかもな」
イグニは独り言のように呟いていたが、その声は俺に届いてはいなかった。
「なぁ、カリンのジョブって、やっぱ剣士なのか?」
「はい、ジョブは「ソードマン」にしてます。かっこ良さそうだったので……でも、やっぱり向いてないのかなぁ」
「いや、そんなことないぞ?」
俺はメニューから剣系の武器を探した。
すると、【聖剣 エクスフォーリー】というのが目に入った。
武器【聖剣 エクスフォーリー】
・光属性攻撃の威力を1.5倍する
・STR+200
……あれ? これ、俺の武器より強くね? まぁ、いいか!
俺は【聖剣 エクスフォーリー】を出した。
「ひゃ! な、なんですかその神々しい剣」
カリンは【聖剣 エクスフォーリー】を見てそう溢す。
俺はこれをカリンに投げ渡した。
カリンはなんとかキャッチする。
「それ、お前にやるよ」
「え、ええぇえ!」
カリンは大きな声明をして驚嘆を表現した。
「いいんですかこんなの挙げちゃって!?」
「いいよいいよ、どうせ俺使えないし」
「……ほぅ、そう言うことなら、もう話してもいいかもな」
イグニが俺の肩から降りて、近くにあった切り株に飛び乗った。
「お前ら、ステータスポイントは余ってるか?」
イグニは俺たちの目を交互に見ながら言った。
「はい、結構余ってます」
「俺もだ」
「………じゃあ今から、「第2ジョブ」について話をする。まぁ、マジでお前らのレベルで知っていい話じゃないんだがな」
「はぁ? なんだよそれ、馬鹿にしてんの?」
俺が聞くと、イグニは言った。
「お前らのレベルが上がるのが早すぎるんだよ。じゃあ話すぞ。まずはジョブ画面を開いてくれ」
俺たちはメニューからジョブ画面を開く。
「じゃあ、好きなジョブを選べ」
「ちょっと待って下さい」
カリンが反対した。
「このどれかを選んでも、私達のジョブが変わってしまうだけだと思いますが」
「それを誰かが証明したのか?」
カリンは言葉に詰まった。
「ジョブが二つあると、その二つの能力を使いこなすことが出来んだよ。グレンのようにな」
「……どういうことだ?」
俺は言っていることが分からず、今度は俺がイグニに質問する。
イグニは呆れたように言った。
「お前は俺を使役しつつも、ちゃんと「ファイター」として戦えてるじゃねぇか」
「………!」
俺は今までのことを思い出し、納得する。
確かにそうだ。なんで今まで気付かなかったんだろう。
「じゃあ仕切り直しだ。選べ選べ!」
俺は悩んだが、最初決めるときに迷った「ウィッチ」にすることにした。
俺は「ウィッチ」の表示をタップする。
すると、「属性画面」という表示が現れた。
へぇ、「ウィッチ」ってどんな魔法も使える訳じゃないのか。
俺は自分の好みと、装備のこともあって、火属性を選んだ。
「よし、俺は決めたぞー」
イグニにそう報告して、俺はカリンの様子を見ようと近付いた。
カリンは人差し指を顎につけている。
どうやら悩んでいるようだ。
俺はカリンの後ろに回り込む。
「何と何で迷ってんだ?」
「きゃ! グレン、後ろは駄目です!」
カリンはそう言うと、俺をカリンの横に置いた。
「な、何でだよ」
カリンは少し恥ずかしそうに言った。
「後ろは、緊張しちゃいますから」
「……? で、何と何で迷ってんだ?」
「この「ファイター」と「ウィッチ」で迷ってるんです。「ファイター」は攻撃力上がりそうだし、「ウィッチ」は面白そうなんですよね」
「じゃあさ、俺に決めさせてくんない?」
俺はそう切り出した。
「え……いいですけど……剣のお礼もありますし」
そうカリンが言うと、俺は「ウィッチ」の表示をタップした。
「楽しそうなら、こっちを選んだ方がいい。それに、カリンが魔法を使うなんて、かっこ良さそうだしな!」
カリンの顔は少しずつ赤みを帯びていく。
ん? なんか怒らせるようなこと言ったかな?
「属性画面」では、カリンは【聖剣 エクスフォーリー】のこともあってか、光属性を選んだ。
「これでいいんですよね?」
イグニが気を取り直して言う。
「よし、一週間後、ちゃちゃっとステータス上げてダンジョン行くぞ!」
……ん? ダンジョン? なんだそれ?
俺が分からないでいると、カリンが俺に教えてくれた。
「ダンジョンは、モンスターの造った巣穴を、そこにいた民俗が開拓したものと言われています。今も、強力なモンスターが沢山いるんですよ」
「じゃあ、俺たちはそこにパラメータを上げるために行くのか?」
「違ぇよ」
イグニが反論した。
「俺たちが行くのは、そのダンジョンの、ボス部屋だ」
『火精のグレン』をお読みいただき、ありがとうございます。
さて、今回はジョブ《ウィッチ》についてご紹介させて頂きます。
ウィッチにも種類がありまして、光やら火という、「属性」によって、出来ることも変わってくるので、当然その立ち位置も変わってきます。
ウィッチはその種類の多さから、属性のイメージカラーで、光なら「白ウィッチ」、火なら「赤ウィッチ」という風に区別されて呼ばれています。
幾つもある基本ジョブの中で、唯一属性攻撃を使えるのが《ウィッチ》だけなので、重宝されているのですが、如何せん武器が弱い! 更には防具も脆い!
といった具合に、長所はあるものの、短所がゲーム的に致命傷なので、あまり使いたがる人がいませんでした。
しかし、今回「第2ジョブ」というものが発覚したことで、属性攻撃を使うために、態々ウィッチ用の装備をつける必要がなくなったのです!
これは《ウィッチ》の需要が爆上がりなのではないでしょうか!
では今回はこれで。シーユーアゲイン!