第4話 カリンと手繋ぎ
ジリジリジリ♪
目覚まし時計が必死に煩く音を立てるが、生憎、俺はその前から起きていた。
そのまま俺は目覚まし時計を止める。
「なんか起きてることが分かるセンサとかないのかな」
そんなことを呟いた。
まぁ、無いんだからこそこの目覚まし時計で我慢しているのだ。
自分でも何を言ってるんだと言いたくなる。
俺はベッドから足をつけると、早速着替えを始めた。
昨日は本当に楽しかった。
相棒が出来て、めっちゃ強くなって、フレンドも出来て!
皆こんな感じなのかな?
俺はそう思った。
だが、分かる通り、そんなわけないのである。そんなのはこのバカだけだった。
俺は着替えを済ますと、すぐに朝食のために一階へ下りた。
リビングに顔を出すと、母さんが一人朝食を食べていた。
「おはよう」
「おはよう蓮、そっか、今日は休みか」
「うん、そうだよ」
俺は朝食の置かれている椅子に座った。
パンを噛りながら、手元にあったリモコンでテレビの電源を付ける。
その映像では、最近人気の俺の同年代の芸人、夏木 凛花へのインタビューが流れていた。
「本当に可愛いわねぇこの子。天真爛漫みたいな雰囲気だわ」
「そうかねぇ、実際はもっと違うかもよ? ごちそうさま」
俺は朝食を食べ終えると、すぐに二階へと戻っていった。
ケータイが机の上に置かれており、何故か光を発している。
通知が来たのだろうか。
ケータイを手に持ってみると、カリンからチャットが来ていた。
あ、そうか。「With・Monster・Online」にログインするために、ケータイにプレイデータを転送しているんだった。
『今から、一緒に狩りに行きませんか?』
と、書いてあった。
俺は瞬間、光のような速さでケータイパネルの上で指を滑らせた。
『いいよ!』
『やった! じゃあ、街の噴水で待ち合わせです!』
俺は準備をして、すぐにハードをベッドの上で付けた。
レッツスタート!
そして目を覚ます頃には、俺はあのガチガチ装備を着て、肩にイグニを乗せていた。
「よぅ相棒、朝早いんだな」
「ちょっとカリンから誘いがあってな」
すると、イグニはニヤッと笑って言った。
「初めてのネトゲ友達に浮き浮きしてらっしゃるのかなぁ?」
「煩いなぁ」
こいつ、俺の全てを見据えてやがる………!
「なんか、たった一日なのに、すっかりお前に慣れちまったよ」
突然、イグニがそんなことを言い出した。
「? なんだよ、いきなり」
俺がそう聞くと、イグニにもよく分からないのか、頭を掻いた。
「俺は人間が怖かったし、ただ殺すだけのものとしか思ってなかったが、お前とはもう友達みたいだ」
「………は? 違うの?」
俺は何を言ってるんだと言うようにそう言うが、イグニは目を丸くした。
だが、すぐにその表情は明るくなった。
「やっぱり、お前といると飽きねぇな!」
「なんだよそれ」
そんな会話をしながら、俺は噴水にまで歩いた。
すると、カリンらしき人物がキョロキョロと辺りを見渡している。
「おぅい、カリン!」
俺がそう呼び掛け、噴水に向かって走り出す。
すると、カリンが俺に気付く。
「遅いですよぉ、私、グレンは朝から晩までゲームやってる廃人みたいな人だと思ってました」
「あはは……」
酷い思い込みだなぁ。
俺は苦笑しつつ、頭を掻く。
「まぁいいです、さ、行きましょ!」
カリンが俺の手を掴んで歩き出す。
俺も負けずとカリンに並んで歩くが、カリンは手を離そうとしなかった。
「カリン、もう手を離してもいいと思うんだけど」
「え………」
カリンは足を止めて、俺の手を握りしめたまま黙り込んでしまった。
あれ俺、なんかヤバいこと言った?
少しの間沈黙が続くが、カリンは再び口を開いた。
「ダメ……ですか?」
カリンは少し目を潤ませてそう言った。
なんだこの子、可愛い!
俺はそう聞かれて、断れるわけがなかった。
「いえ、お願いします」
するとカリンは表情を明るくした。
そしてまた、手を繋いだまま歩き出す。
その状態は、狩り場に行くまで続いた。