第3話 ガチガチ装備
俺とイグニがエルシスタに戻ると、周りのプレイヤーから驚愕の眼差しを受けながら、俺たちは歩くことになった。
「へぇ、人間の街はこんなに発展してんだな! 俺らのいた石で出来た洞穴とは大違いだぜ!」
俺の肩に乗っているイグニは、面白そうに街を見ていた。
確かに、イグニがいる、ということも理由の一つではあるのだが、それだけではない。
言ってしまえば、ゴツすぎるのだ。
頭装備【防光ゴーグル】
・明るすぎる視界の明るさ補正
・DEX+40
胴装備【黒暴牛の革衣】
・火属性攻撃の威力を1.1倍する
・VIT+70
脚装備【レオーネパンツ】
・打撃攻撃の威力を1.3倍する
・VIT+50
靴装備【レッドブーツ】
・火属性攻撃の威力を1.1倍する
・AGI+90
サブ装備【神隠しのマント】
・自分が発する物音の音量を0.3倍する
武器【黒炎のグローブ】
・火属性攻撃の威力を1.3倍する
・STR+100
………これが俺の現在の装備です。
なんか凄いことになってます。
こんなのが始まりの街なんかにいていいのか?
まぁ、正直言って悪い気はしない。
こんなに強くなって、大丈夫かな? 俺。
なんでか俺は自分が心配になった。
「そう言えばグレン。 俺が渡した宝物、売っちゃっても良いが、半分は寄越せ。俺が使うからな」
「はいはい、分かりました」
もともとイグニのだからな、こればっかりは仕方ない。
分け前が貰えるだけ有難い。
俺たちは近くの雑貨店に宝物を鑑定してもらうことにした。
「50万Gです」
「……は?」
まてまてまて?
俺のもともとの所持金は三千弱だったから、半分にすると、約80倍!?
こういうときの計算はとてつもなく速い俺であった。
しかもこれ、たったの一個だぞ? これ全部出してみたら、どうなるんだ?
俺は恐る恐る、全ての資材の売却をしようと、表示をタップした。
そして出た結果は…………。
「9000万Gになります」
俺はすぐにイグニを肩から下ろし、地面に乗せ、そして土下座した。
「一生付いて行きますイグニの旦那ァ!!」
すると、イグニの顔は蜥蜴の顔でも分かるほどに悪党くなっていた。
「崇め奉ってもいいぞ?」
俺はその顔を見て、何か俺の中にあるものが恐怖した。
「…………まぁ、俺たちの所持金は今現在900万3千Gで、そのうち4500万Gがイグニのものって言うことだな」
初日でエグい金額になっちまったな……。
「よしそうだな、まずはあの店に入ってもらおうか!」
イグニは近くの出店を前足で指差した。
「あそこ何があるんだ?」
「旨そうな肉の棒があった!」
ウインナーのことかな? やっぱもとがモンスターなだけに、肉食なのかもしれないな。
俺はその出店に入って、イグニの言っていたものを頼んだ。
「んー! マジうめぇな! 人間の街はやっぱ楽しいぜ!」
「お前のその小さい体のどこにそんな胃袋があるんだ?」
イグニの食べているフランクフルトの大きさは、イグニの二倍程の大きさだった。
「そりゃそうだろ、もとはあのデカさなんだから」
「あー」
イグニの説明に俺は納得する。
そりゃそうだ。もともとこいつは俺の数倍もある大きさなのだから。
「おい、ありゃ喧嘩か?」
イグニの言葉に俺はその方向を見る。
すると、そこでは初心者の装備をした女の子が、二人の男に囲まれていた。
「なぁ、金貯まってんだろ? 半分でいいから寄越せや」
「このゲームの飯は旨いからなぁ、病み付きにもなっちまうよなぁ」
「いや、これは私が貯めたお金なんです。あげれませんよ………」
なんっかよく見るテンプレ。
女の子は涙目になってそう答えた。
すると、男の一人が女の子の頭を掴み、ナイフを手に取り、彼女の首に近付けた。
「じゃあデスアウトさせて無理矢理取るしかねぇなぁ!」
「話は聞かせてもらった」
俺は【神隠しのマント】の効果で突然その場に現れ、男の腕を掴んだ。
「デスアウトするのはお前でいい」
俺は男の顔面に拳を撃ち込んだ。
すると、男は数メートル吹っ飛び、地面に落下すると同時に消滅し、残ったのは緑に光る石だけとなった。
「ふぅー、威力えげつないな!」
「当然だろ、始まりの街なんかにいるのは大体初心者だからな」
「はぁ? 勝手にしゃしゃり出て来てんじゃねぇぞ!」
残った男が俺に殴りかかるが、俺はすぐに避けきり、男の背後に回り込む。
「なんだこいつ、ざっこ」
俺は男の背中を蹴った。
男は倒れ込むと、そのままデスアウトしてしまった。
すると、女の子はこちらを見ていた。
「な、なんですかあなた! 強すぎじゃないですか!」
女の子は俺に詰め寄る。
可愛いキャラメイクをしているが、そういうキャラでプレイするおっさんもいるからなぁ。
「あのすいません、私とフレンド登録してくれませんか?」
「………え、マジで?」
フレンド登録、それをするとお互いの場所を確認できたり、チャットで交流したりできる。
まさかのオンラインゲームの中で初めてフレンド作っちゃったよ!
俺は彼女の手を強く握る。
「宜しくお願いします。お前の名前は?」
「えっと、カリンです! 宜しくお願いします!」
俺たちは軽く握手を交わした。
「あ、あと俺もいるから宜しく」
「きゃ! 蜥蜴?」
カリンはイグニの姿に好奇心を出したようだった。
『火精のグレン』をお読みいただき、ありがとうございます。
さて、今日は装備についての話です。
例えば、グレンがチンピラをぶっ飛ばした『黒炎のグローブ』。
あれは結構貴重な代物で、元の持ち主は大事に使っていたようです。
エンチャントレベルが上昇するほどに。ま、結局イグニに取られてざまぁっすね!
エンチャントレベルと言うのは、武器が持つレベルのことです。
この『W・M・O』には、プレイヤーのレベルというものは存在しません。
しかし、武器には存在します。その上昇する方法については詳しく分かっておりません。
武器を大事にしたり、或いは、敵との死闘を勝ち抜いたり、情報は様々です。
中には、どれだけ愛でても何の変わりもない武器すらもあります。それは個体差ですね。
エンチャントレベルが上昇すると、武器のパラメータが上昇したり、更にはジョブ専用スキルにも存在しない、超レアで超威力の必殺技が発現することも!
ということで、今回は終わりです。また会いましょう!
シーユーアゲイン!