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火精のグレン  作者: 仮宮 カリヤ
第二章 前日祭
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第4話 カオル

中に入ると、俺は凍りついた。


中では、死んだように床に伏す女性。床に広がっている液体。部屋中に染み込んでいる刺激臭。


これは紛れもなく――――




―――酒だ。


飲んだくれた女性も、床の液体も、この臭いも、全部酒だ。

しかし、何故酒に飲んだくれている女性がいるのだろう。ここって、俺達の家だよな?


少し疑念の意が出てきた。カリンが女性に近付き、揺さぶりながら彼女に話を聞く。


「あの、大丈夫ですか? あと、ここ私達の家なんですけど……」


彼女は目を覚ましたようで身体を起こした。


すると、彼女の姿が直接眼に入った。


白い髪に紫の眼、露出度の高い服から覗ける豊満な胸が、彼女の第一印象だ。


「ん……あなた誰?」


いやこっちの台詞だよ!!


そう思いつつ、俺は丁寧に自己紹介をした。


「俺はグレン。ここは俺達パーティのギルドハウスの筈ですが、あんたは誰ですか?」


すると、彼女は笑いを堪え、口元を押さえた。


「敬語が下手なのね。可愛い。私はカオルって名で通してるの。敬語は要らないわ。私、見てわかる通り酒好きなの。ちょっとここ誰も使ってなかったみたいだから、私の酒飲み場にしてたのよ」


反省の意が全く見えない。


「へっ! 可愛いだとよ。良かったじゃねぇか。可愛子ちゃんに言って貰えてよ!」


イグニがケラケラと笑いながら、俺をからかった。


「本物の家主を前にそんな態度が出来ることに吃驚だよ」


俺は皮肉を込めてそう言った。


「でも、この家は気に入っちゃったし、どうしよう。……そうだ。私を君らのパーティに入れてもらおうかしら」


カオルは能天気にも言った。


「………は?」


こいつ、何言ってるんだろう。現実では不法侵入すら問われてしまいそうなのに。パーティに入れてもらおうかなって、何言ってんだこいつ!?


頭を整理するごとに疑問が生じて少し頭が痛い。


「まぁ、私が認められないのは分かるわ。うんうん」


カオルは一人頷く。当然だ。


「じゃあ、勝負しよう」


突然そんな事を言い出した。

俺達は考えの分からないカオルに自然と視線を集めた。


「君らのうち誰かが私と勝負するの。勝負内容は殺し合い! 《コロッセオ》は面倒だから近くの狩り場でいいでしょ。で、私が勝ったらこのパーティに入る。あなたたちが勝てば………」


カオルはメニューを出し、ぱんぱんに詰まった大容量の金袋を出す。

カオルはそれを地面に置く。


「1億Gを差し出してこの場を去るわ!」


気持ちいいくらいの心意気でそう言った。

確かにこの人、よく見ると風格がある。結構な手練れかもしれない。


「私が行きます」


そこで立ち上がったのはカリンだった。


「グレンも、さっきのことで疲れているでしょうし、これは待ってもない資金稼ぎです。私が行きます」


「うん、じゃあお願いしようかな!」


「……はい! 絶対勝ちます!」


カリンは嬉しそうだった。


「じゃあ、決まったら行こうかしら」




《《《《《




緑一色の平原の上で、二人が睨み合い、もう二人はそれを見ていた。


カオルも、カリンも、剣を取り出してお互いに構える。

カオルの剣は、赤みを帯びていて少々気味が悪い。


「じゃあ始めます。レディ、ゴー!」


マナの合図をスタートに、二人とも剣を交える。


「あら、あなたの剣、あまり重くないのね」


カリンは下がって、カオルとの距離をつけると、得意の光魔法の飛ぶ斬撃を繰り出した。


「あら可愛らしい♡ でも、私こんなのより凄いの見たことあるわ」


カオルは斬撃を全てその剣で受けきると、その素早さで一気に間合いを詰める。

カリンが逃げられない所まで詰めると、剣先を向けた。


「”お返し”するわ」


瞬間、カオルの剣が光を発する。それと同時に、その眩しさに視界を保っていられなかった。


光が晴れたのを見届けると、そこから現れたのは、カオルと緑色に光る石だけだった。


「え、えっと、勝者カオル!」


「ふふ、勝っちゃったわ」


その勝負、タイムはたったの、5秒。

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