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火精のグレン  作者: 仮宮 カリヤ
第二章 前日祭
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第3話 日を浴びる白鳥

『勝敗が決しました。グレン様の勝利です』


感情の籠らない声でアナウンスが告げる。

私を拘束し、連れて会場を出た二人の男は、苛立ちを募らせていた。


「ちっ、あいつ負けやがった」


「調子のってギルドハウス買ってやるとか言ってた癖に、あいつにそんな金ある訳ねぇじゃん。絶対ギルドの金だろ。あの屑が。俺たちを巻き込んでんじゃねぇよ」


あのチャラ男も散々な言われようだな。仕方ないけれども。


「まぁいいや。嬢ちゃん、マナって言ったっけ? 悪いが、ポイント貰っとくぜ。こっちも金がねぇんだ」


男は私に武器を振り上げた。


あ、………死ぬ。


そう思った瞬間、突然体が震え、瞼が下がっていく。

何度もデスアウトは経験したけど、やっぱり「死」も現実みがあるのは怖い。


最早私は生きることを諦め、身を委ねた。


―――私はまだ死なない。代わりに、響いたのは強い金属音だった。


私はゆっくりと瞼を上げる。


「あなた方の勝手で、死んでいい命がありますか!!」


そう言い放ったのは、私と同じくらいの女の子。

全体的に白で身軽そうな鎧を装備し、その後ろ姿はどこかのアイドルですかと言うほどに凛々しい。

中でも、男と武器を交えているその剣は、どこか神々しさを感じさせた。


「はっ、これはゲームだろ? なにバカ言ってやがる!」


男はもう一度武器を振り上げる。


「……そうですね」


いつの間にか、男は彼女によって体の上下を分けられ、一瞬にして光の粒子となって消えた。


「ゲームでも、それで悲しむ人がいるんです」


「……舐めんじゃねぇ!」


もう一人の男も隙をついて、彼女に襲いかかる。

その男も、一瞬にして粒子となった。


「……更正して出直して下さい」


彼女は剣をゆっくりと鞘に収める。

その姿はまるで白い日の光をその羽で浴びる白鳥を思わせた。

私はうっとりとしてしまう。


「あ! すいません、解放してませんでしたね。今解くので、待っていて下さい」


彼女は少し慌てて拘束を解いた。


「よし! これで大丈夫ですね」


私は解かれた腕を動かす。

結局デスアウトしなかった―――というかこの人、何者?


「……! マナ! それと……カリン?」


グレンが私を見つけると、この場へ駆け寄った。

その過程で彼女を見つけると、グレンは瞠目した。


「久しぶりですね! グレン!」


カリンと言うらしい彼女は、グレンを見ると頬を緩ませた。


「こっちに来たらグレンがコロッセオやってるって聞いて、飛んできましたよ!」


「お、ありがとう! なんか照れるけど……」


次々と二人の会話が繰り広げられる。

私はその会話に着いていけない。一人孤独な状態となっていた。


「………え、二人とも知り合いなの?」


振り絞って出た質問に、二人は一斉に答えた。


「友達ですよ!」「友達だよ!」




《《《《《




「では、グレン様。こちらがコロッセオの報酬です。お受け取りください」


受付は手に経験値にも似た物を乗せて俺へ差し出した。

俺は少し動悸を早くしつつも、それを受け取った。

俺はマナとカリンの方を向き直す。


「ギルドハウス、ゲットー!」


俺は高く腕を上げた。


「案外すんなりと行くものね」


「そうですよ。何てったってグレンですから!」


「あんたのグレンへの信頼度どうなってんの」


マナはやれやれと言うように肩を竦めた。

俺もそこまで称賛されるとなんだか少し恥ずかしい。


マナには、俺たちの関係を説明しておいた。

カリンの方が早くフレンドになっていることに何故かむすっとしていたが、取り敢えず三人ともギルドメンバー、と言うことで落ち着いた。


「まぁ、取り敢えず行こうぜ! ギルドハウス!」


「……そうですね!」


「私も早く見てみたいわ」


皆の同意を確認して、俺は受付からギルドハウスまでの地図を貰った。


「……よし、じゃあ行くか!」


俺たちはアガルタを出た。

通りかかった街並みはとてものどかで、戦闘で昂った俺の心を落ち着かせた。


案外近いもので、そのギルドハウスは歩き出して数分の所で着いてしまった。


俺たちは玄関に近付く。


「じゃあ、開けるぞ……」


俺は動機の早くなる心臓を宥めながら、ゆっくりとドアを開いていくのだった―――――

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