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火精のグレン  作者: 仮宮 カリヤ
第二章 前日祭
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第0.5話 カリンの日常

50万、いや、百万は越える大観衆の囲む先には、数十人のアイドルグループ《EVOL》が華麗に踊っている。

中でもセンターを飾る夏本 凛花は、センターに相応しいずば抜けて綺麗なダンスとその美顔で、会場を熱気で満たしていた。


最後のダンスを全員で決めると、凛花は一人、前に出て言った。


「みなさん! 今日は来てくれてありがとうございました! 今日は来てくれてありがとう! 次もライブやるから、また来て下さい!」


観衆は返事をするように沸き立った。

皆このアイドル、というか夏本 凛花に夢中なようだ。


その言葉を最後に、アイドル達はステージを降りていった。



《《《《《



舞台裏では、アイドル達が口々に凛花のことを口にした。


「いやー、やっぱ凛花さまさまですよねぇ、凛花さんいなかったら、このアイドルグループ成り立ちませんよ」


「あ、カナ、さらっと私たち馬鹿にしたでしょ?」


先輩アイドルが少し怒った口調で言った。


「でも、事実でしょ。テレビ番組には芸能人顔負け位に出演するし、まだ中3ながらも年収は驚異の1000万!」


「うわー、それは成人したとき困らなさそうですねぇ」


皆は次々と凛花を褒め称える。しかし、凛花はそのムードに着いていけず、少し弁解した。


「いえ、まだテレビもそこまで出れてませんよ? それにお金だって祖父母の家へ半分は渡してるんですから」


…………え、は?


「え、ちょっと待って。あんた、年収1000万は否定しないの? ていうかそれ、親は金出してんの?」


凛花はキョトンとして、当然のように言った。


「まぁ、否定はしませんよ? あと、お金は私だけで出してます。親は、『五十万もあれば生きていけるだろ』て言ってます」


それを聞いていたアイドルグループ全員は思った。


それを当然のように言う凛花ちゃんマジ天使!!


「でもなんか、最近の凛花は生き生きしてるね? 前までやめたいとかずっと言ってたのにさぁ」


先輩アイドルが凛花の肩に腕を乗せた。


「あ! もしかして凛花ちゃん、好きな男でも出来た?」


そのアイドルはお巫山戯で言ってみるが、凛花はみるみるうちに顔を赤くしてしまった。

皆は察し、そしてこれからの自分達の為に凛花のもとへ全員で集まり、年を押していった。


「あんた、恋愛するならばれないようにしときなよ? あんたがいなかったら、うちら成立しないんだから」


え、そこまで言っちゃう?


「そうそう! 別に恋愛するなとは言わないけどさ。ばれたら大変だよ? 気を付けといて」


皆は次々に凛花へアドバイスしていくが、当の凛花はどんどん顔を赤くしていった。

到頭凛花は立ち上がり、皆へ言い放つ。


「もう! 皆さんなんで私に好きな人がいる前提なんですか!? 私が助けられた人を好きになっても良いじゃないですか!!」


うん、全部漏れてんだよなぁ。


「まぁ、あんたも頑張りなよ」


そう言って《EVOL》全員で凛花の肩を軽く叩いていった。


「なんでアイドルの卒業式みたいになってるんですか!?」



《《《《《



私、凛花が舞台裏でのこともあり、疲れ果てて車を出ると、超高級マンションを見上げた。

詰まるところ、ここが私の家だ。


私の父がこのマンションを五千万で買い、入居者すらも収入源にする、という父のビジネスらしい。


指紋認証で私は自動ドアを開かせる。

エレベーターで20階に上がり、自分の家のチャイムを鳴らした。

少ししてドアから現れたのは、専業主婦の母の顔だった。


「あらおかえり。お風呂沸かしてるわよ?」


「ありがとうお母さん。丁度入りたかったの」


私は靴を脱いで家に上がり、服を脱いで几帳面に畳むと、風呂場に入った。


この20階は私の家族が占拠している。

しかし、部屋には必要な分面積を使ったので、残りを全て風呂場にしたらしい。

おかげで毎日温泉気分だ。

私は体を洗い流すと、余りにも広いお風呂の湯に体を浸けた。


「うぅ、気持ちいい……」


私がお風呂の気持ちよさに酔いしれていると、ふとグレンのことを思い出した。


「グレン、二日位会ってないけど、大丈夫かな……」


いつも何も考えなくて良いときは、グレンのことを思い出す。

心配しているようにも見えるが、実際大丈夫ではないのは自分の方だった。


「会いたいなぁ……」


そう言って私は口を風呂に浸けると、中で水泡を立てた。


風呂から上がって、私服に着替えてリビングに出てきた私に、お母さんが言った。


「あなた、明日オフらしいわよ。珍しいわね。今日ももう休みでしょ?」


「……! そうだね。じゃあ好きにしようかな」


「えぇ。中々父さんも時間作れなくてごめんね。折角の休みなのに……」


私は切ない目で皿洗いを続けるお母さんに言った。


「……お母さんが謝ることじゃないよ」


そう言って私は自室に戻った。


「やったー! ゲームが出来るー!」


久しぶり(二日ぶり)にグレンに会えるー!


私は内心心臓を高鳴らせながら、ハードをつけてベッドに横になる。

心の準備をしっかりして、私はスイッチをオンにした。


レッツスタート!


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