E LOST & XXX
竜士と蟻の戦闘開始から僅か五分後の事だった。
光に包まれ、ひばりは目を瞑った。
そして目をゆっくりと開けた時、そこに広がっていたのは、四方の壁全てが跡形もなく消失した、かつてのショッピングモールの跡地と、血塗れで立っていた竜士だった。
蟻の姿はない。
それは、竜士の勝利であるかに見えた。
「…………ぁ」
静かに。
そよ風が吹くように。
そのそよ風に風船が飛ばされるように。
ゆっくりと傾いて、倒れた。
「りゅう、じ──」
◇
『…』
『……』
『全てを無くしてもいいから、それを壊させろ』
『発動確認』
『…』
『発動者の意識消失を確認──脈拍不安定──下顎呼吸を確認──推測:死亡寸前』
『精神コネクト』『──成功』
『走馬灯』
あれ?
父さん? 母さん? どうしてここに?
先……? 先に行ってるって、どういうこと? 待って。置いてかないでよ。嫌だ、一人は嫌だよ。
怖いんだ。真っ暗で、何も見えない。何も感じない。何も聞こえない。何も無い。何もかもが無い。あるはずなのに無い。
ねぇ、父さん。母さん。これって、なんなの?
あ、れ?
父さん、母さん? いや、違う……? 凄く、似てる、けど。
もしかして、じいちゃん……?
……暗い。見えないよ。上手く顔が見えない。
『エンドルフィンの分泌を確認』
……。
居心地がいい。不思議だ。
あれ、父さん。顔どうしたの? よく見えないけど。
『エンドルフィンの分泌を確認』
『エンドルフィンの分泌を確認』
あはは。
『エンドルフィンの分泌を確認』
『エンドルフィンの分泌を確認』
『エンドルフィンの分泌を確認』
『…』
『………………』
『光、確認』
『理解不能』『これは一体』
『トンネル、出現』
『理解不能』『これは一体』
『理解不能』『これは一体』
『幻覚、消失』
『理解不能』『これは一体』
『理解不能』『これはなんだ』
『理解不能』『これは一体』
『理解不能』『これはなんだ』
『脈拍、正常化の兆しあり』
『呼吸、正常化』
『av&nバ'(xb&txpガg5〒1^(ノpzwp_'ydg_w,'<」1…%2:^:2…』
『観測不可』
『観測不可』
『観測-可』
『観-不可』
『観--可』
『観---』
『----』
『----』
『error』
『error』
『「「「『〈【《竜士、起きて]》]」」』}』
『観測回復』
『エラーの収束を確認』
『脈拍──正常。呼吸──正常』
『意識────回復』
『スキルの発動を確認』
他の何を貶めても、貴方を救いたい
『おめでとうございます。竜士様。貴方は死神の鎌から運良く逃げ延びることに成功しました』
『対価は、今まで入手したスキル』
『それで……良しとしましょう』
『ですが、次はきっと無いでしょうね』
『終わりかけた人生を大事にする事を推奨します』
『とはいえ』
『この世界はそれほど優しくはありませんが』
『ユニークスキル「幸せの対価」を入手しました』
■■
〈player name〉【探求者】
Lv.1
『HP』10/10
『MP』0/0
『ATK』…10
『DFE』…10
『SPD』…10
『DEX』…10
『MATK』…0
《魔法》
《スキル》
《ユニークスキル》
・【幸せの対価】
全てを無くしてもいいと願った、その先を生きるだけの対価を。
レベル、ステータスが上昇しづらくなる。
スキル、ユニークスキルが発現しにくくなる。
■■
『おや』
『失礼』
〈player name〉…delete
〈---〉…
…〈ryuzi〉
「…………おはよう」