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01 このブッ壊れた世界に祝福なんてねぇよ 2

 カラスの親分。

 でっけぇ。そして、顔、超、怖ェ。


 周りを、今まで人間を襲っていたらしいカラスが旋回している。

 凄い数だ。という事は、もう人間を襲ってるカラスはいないのかもしれない。それはそれでいい事……じゃね?


 カァ! カァァァッ!

 カァァァッ! カァァアアアァァッ!

 カァァアアアッッ! カァ!

 カァァ! カァッ!


 鳴いてる。凄い、うるさい。びりびりくる。


 死ぬ?


 え、死ぬの?


 え、待って。ストップ。


 え?


「い、嫌だ…………」


 何かが込み上げてくる。

 目から水が溢れた。

 訳が分からないまま、思った事が勝手に声に出てる。


「嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない嫌だうわ、あああああっ」

「────────……」「────……」

「──……」「────……」


 ……俺、なんて言ってんだ?

 頭の中がまたごちゃごちゃしたまま、死のクチバシが迫る。

 でか……。クチバシだけで、でかい。

 ……うわ。きっも。


 ぷっつんと、また何かが切れたと思ったら、力尽くでスコップを振り回していた。

 あれ? 今度は俺、叫んでる気がする。まぁいいか。減るもんじゃないし……?

 振り回したスコップが、親分のクチバシに思いっきり当たった。ガギィンって弾かれて、うわ、と思ったら、クチバシの先が少し欠けてる。


『──』怒った? いや、怒ってるよな、この親分……。息を吸い込むような動作を見せて──。『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』咆哮だ。『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』いや、うるさ『アアアアアアアアアアアア』耳がッ、『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』くっ、『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』



「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええクソカラスのくせによぉぉぉぉおぉおおおぉぉぉぉおぉおおぉぉおおおぉぉおぉおおおぉォォォオオオオォォオォォオオオォオォォォォオオオオォオオォォォォオオォオオオォ!!」

『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

「オオォォォォオオオオォオォオォォオォォオォォオォオオオオオオオオオオオオオオォォォォォオオォォォォ!!」



 カラスと人間が叫び合っている、全く訳の分からない一人と一匹がそこにはいた。というか俺だった。

 こっちだって、死にたくねぇよやっぱ……っ!


 ぴゅるるるるるるる……。


 この、クソカラスがっ!

 そう思って、叫んでいた親分カラスの頭をスコップでぶん殴ったら、なんで叫んでる時にとばかりに大仰によろけて──そこに、ぴゅるると飛んできたロケット花火が当たって弾けた。


 パンッ!


『ガァアッ!?』


 下には、助けたおじさんがいた。いや、もっといる。知らない奴ばっかだけど。

 そんな奴らが、ロケット花火を手に持ってこっちを見ている。

 柄じゃない事をするものじゃないと、思った。

 そうすると、柄じゃない事を俺に向けてしてくる。


 次の瞬間、ロケット花火の嵐が交差点の上空で炸裂した。


 破裂音みたいな音が、馬鹿みたいにそこらじゅうで鳴り響いている。

 つーかどっから買ってきたんだそんなに。


 最高だぜ。全く。


 まただ。

 一気に頭がスッキリしてくる。


 スコップを上に振り上げて、俺の肩を鷲掴みにするカラスを攻撃する。カラスなのにワシ掴み。肩に爪が突き刺さってるが、痛くない。ハイになってるのか。

 火事場の馬鹿力ってやつか。なんか違うか。いいや別に。


 三回、スコップの尖った部分でぶっ叩いたら、肩を離して落とそうとした。その隙を見逃さなかった。

 今度は逆にその足を掴んで、カラスによじ登る。


 うわ、くそ、おい、飛び回るな。登れないだろうが。

 ちょっ、少し落ち着──がっ!?


 何かにぶつかった。いや、カラスがぶつかりにいったのか。俺を振り落とす為に。

 多分、電柱か街灯か何か……。

 いってぇ……あぁ、そっか、俺。こうやって苦しんでる奴の事、見て見ぬ振りしてた訳か。今までね……。


 ──まただ。何かにぶつかった。


 なーんで、しみじみこんな事思ってんだ……俺?

 疲れてきたか?


 ──また。ぶつかった。


 うわ。頭が、

 やば、落ち、


 う、ぉ、


 ──また。


 ──また。


 ──また。



「頑張れぇぇぇぇっ」



 ……いや、誰の声だよ。

 おじさん、か? よく分からん。


 まるで、突然目が覚めたみたいに、俺は目を開けていた。もしかしなくても意識を失っていたらしい。それでもしがみついてたのか俺……?

 そして、気付くと、カラスの背中にいた。


 いつ、登ったんだ──?

 いや。今はそんな事どうでもいい。


 突然視線を無理矢理逸らされたら、カラスだろうがなんだろうが、驚くよなぁ?

 カラスの首根っこを掴んで、上を無理矢理向かせる。

 びっくりしたカラスは、一気に高度を上げ続ける。


 はえぇ!

 どんどん高くなる!


 下を見た。これ、あれか。そこらのタワーよりも高いぞ。いや、山すら下に見える。

 落ちたら死ぬ。確実に死ぬ死ぬ死ぬ!

 けど、やべ。


 ぞわぞわする。


 ぞわぞわする────────ッ!


 スコップを、振り上げ。

 カラスの首に、突き刺す!


 ぼふん、と灰になって、足場が無くなった。


 落ちる落ちる落ちる落ちる。

 そんな俺を見逃すまいと、カラスは下からどんどん襲ってくる。急上昇しながらクチバシで突き刺そうとしてるのか。


「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっ!!」


 やっべぇ、狂っちまう。


 俺を狙ってくる奴を、カウンターで、叩くッ、斬るッ!


 何匹叩いた!?

 何匹斬った!?


 わっかんねぇ、けどっ。

 ぶっちゃけっ、どうだっていい──!


 生き残る!

 んでもって! 名前も知らない奴をッ! 完膚なきまでに! 救い倒す!


 やっぱ、なんか俺変じゃね?

 まぁいいか。気分いいし──

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