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時間関係者  作者: アカ ハル
2/2

戦場

「「「「おおおおおおおおおお」」」」


「「「「ぐぉぉおおおおおおおおおおおお」」」」


そんな雄叫びがぶつかる中、その戦況を高みの見物かのように丘の上の小さな施設から眺める者がいた。


英雄の印である金色の鎧に身を包み、黄緑色の瞳を持ち、黄緑色の髪を垂らした青年。


彼の名はカラナリス。英雄と謳われ、パレード時に王の隣の席に座ることを許された唯一の勇者だ。


彼は自軍の兵1万と魔王軍の兵 一万を相手に激戦しているのを真剣な眼差しで眺めている者がいた。


彼は英雄である。だが今現在、兵が戦っているのは魔王軍の幹部や魔王というわけではなく、魔王の部下の魔物という者達や怪物(モンスター)である。


モンスターや魔物は力のある兵士であれば倒す事ができた。そのため、魔王や幹部との戦いへの体力温存のため、カラナリスはこの見晴らしの良い施設で戦況をガラス越しに眺めているのである。


「勇者様。」


そんな彼の横で伏せているのが、彼の側近を王から命じられた幹部 ガナル。


「なに?」


彼のセリフにカラナリスは顔をガナルへ向ける。


「お聞きしたいことがあるのですが......よろしいでしょうか。」


その言葉に「いいぞ。」とだけ応えてカラナリスはそのままの姿勢を崩さなかった。


シワが多く、ヒゲも生やしたその歳をとったおじいさんのような容姿をしているガナルにカラナリスも最初こそ少々驚いた。しかし彼の実力は本物だった。


命令を必ず行い、失敗をした事が一度もない。


その内容はどのような過酷なものや安易なものでも結果は変わらなかった。


だからこそカラナリスは実力と共に危機を覚えた。


もしこの者が裏切ってしまえば自分は殺されるのではないか。と


だが彼には王からの命令という背けば命を取られる契約がある。


それを毎度思い出し、そんなことに頭を使わないように心がけているつもだがどうしても頭から離れない。


これは.......俺は怖じ気付いているのか?


そう至るが苦笑しカラナリスはその考えを否定して耳を傾ける。


「我らの軍と魔王軍の間に謎の輩が侵入し、前線で暴れているという情報が入りました。」


その言葉にカラナリスは驚きに目を見開く。


第三軍が戦場に現れることは分かっていた。


この戦いは自分達が魔物や魔王達へ宣戦も無しに奇襲した。


そうなれば、勿論、この世界の戦争の規則である戦約に背いてしまうこととなり、第三の軍.....それどころか第四、五軍が現れても可笑しくは無い。


だがカラナリスが気になるのはその軍の種類ではなく、その速さだった。


この戦いが始まったのはほんの数時間前だ。


人間の兵達に突撃を告げたのはそれの更に1時間ほど前だ。


こんな短時間で軍を編成し、どの国からも縁遠いこの地まで来る事は不可能だ。


不可能の筈だ。しかし何者かは現れたのだ。


一体どんなものだ。カラナリスはそんな試行を繰り返す。


まるでこの戦いがこの時間で起こってしまうことを知っているかのような行動だ。


カラナリスは我慢できずに口を開く。


「その輩とやらの兵力と軍の種類はどのくらいだ?」


その質問へ返ってくる言葉にカラナリスは再度目を見開く。


「軍の種類は分かりませぬ。しかし。数は...........二人かと。」


「.....は?」


その言葉にカラナリスは驚愕し、ガナルは汗を垂らす。


ガナル自身も自分の言った意味がわからなかった。


ただ事実を口にしただけだ。


しかし、その言葉の破壊力は有り得ないものだ。


たった二人が、人類の希望とも謳われた軍と、それと互角と言われる魔王軍との間に割り込み、遂には暴れているという。


「俺をその場へと連れて行け!!」


カラナリスの予想外の轟にガナルは一瞬怯んだが、即座にカラナリスを守る為に防護兵を収集する。


カラナリスは一度悩んだ。どんな者が相手でも、指揮を執る自分は殺される可能性のある人物として、魔王以外には姿を出さないつもりだった。そう考える思考を持つからこそ、カラナリスは英雄と呼ばれたに違いない。


だがしかし、カラナリスはまだ青年だ。だからこそまだ世界の全てを知らない。


力の強さを知らない、カラナリスという青年は、好奇心というものを抱いた。


そしてその好奇心の赴くままに、カラナリスは戦場へと駆け出した。





カラナリスの前に広がっているのは、焼け跡が残り、血肉の腐った臭いが漂う戦場だった。


矢があちこちに突き刺さり、先ほどまでは人と魔物が声を張り上げて戦闘していた。


だがカラナリスが前線に着くとその景色はガラリと変わった。


カラナリスの視界から先は花畑で覆われており、一面に黄色い謎の花がまるで平和を象徴しているかのように広がっていた。


カラナリスは目を細めて目を凝らす。すると花畑が途切れた部分を見つける。


そこには先ほど人類が戦っていた相手、魔物達は、広がる花畑の一歩手前で警戒し、花畑に足を踏み入れていなかったのだ。


分裂された人間軍と魔物軍の間の花畑。その花畑の真ん中には影が二つ立っていた。


一つは長身でボサボサの茶色の髪が特徴的な男。首から下は見たこともない服装で身を包んでおり、遠目からだとどんな装飾の服かさえも分からない。


もう一つは足先から頭までを大きな黒いローブで隠した小さなもの。ローブについたフードを深くかぶっているので顔すらも見ることができない状態だった。


そんな二つの影を見てカラナリスは呆然とした。


何故このような状況になっているのかという疑問もその一つだが、1番の理由は、


その男がどう見ても人間だったからだ。


この花畑はいわゆる幻術のような物。この場でカラナリスだけがそう理解していた。


きっとこの幻術の真ん中に立っているどちらかだろう。だが、ひとりの男は人間だ。


聖霊(アルカディ)のような霊力(オーラ)は出しておらず、森霊者(エルフ)兎人族(ポルプ)ような長い耳はない。


だからといって魔物だとすれば、魔物にただ従い、自我のない怪物(モンスター)が花畑を警戒していることに矛盾する。


大きさや形、時間帯から他の種族の生物でもない。


ではもうひとりの方が人間ではない可能性は?


その可能性はカラナリスの知識場、(かいむ)だった。


多種族がともに手を取り合うという考えにカラナリスは至らなかった。


理由は.....あり得ないから。.......その一言に尽きる。


例えば、動物が人の言葉で話し、二足歩行で歩いて人と会話している。


そんな現実を受け入れる者は多くない筈だ。


それと同じようにカラナリスやこの世界の全ての生き物にとって、多種族という者は一つの『敵』


そう考える他なかったのだ。


だからこそカラナリスは驚愕していた。


自分たち人間が行うには不可能に近い、これほどまでに大きな幻覚を、この場にいる全てのものに見せつけることを。


ただただカラナリスは畏怖した。これほどの脅威を持つこいつらはなんだ。と。


「え〜オホン。」


突然聞こえた高いと低いの中間のような青年の声に魔王軍の軍と人間達は真ん中の人間にいっせいに顔を向ける。


「お前ら一体何のために戦ってんの?」


.....................


その場に謎の沈黙が走る。


「.......あれ?なんで?」


そんな青年の言葉にここにいる全員のセリフが重なった。


いや、こっちのセリフだ!!と。


戦場にいる全てのものを、惑わす者のセリフが「なんで戦ってんの?」という質問。


多種族が敵という概念に囚われている者に.......何故という根拠はなかった。


ただ一つ。戦え。という本能のみで、理屈は不要だった。


見事に空振りした青年の質問に。


「....ん」


そんな小さな声が聞こえた。


まるで天の使いのようなその優しくも何か生物ではないような綺麗で可憐な声に戦場にいる者の全てが釘付けとなる。


どうやら、その男の隣の、小さな背の者の声だったことをカラナリスは理解する。


そして共にカラナリスは違和感を感じた。


その背の小さな者が体を覆うローブに何やら凸凹とした影があることに.......


「ん?何?俺の質問が悪いのか!?」


考察していたカラナリスの耳にそんな大声が響く。


我に返ったカラナリスの目には、小さな者に反論している青年の姿があった。


「.....si'......」


「いや......確かにそうかもしれないけどさぁ?だって意味もなく戦う意味なんてさ」


「ん....」


「.....俺....まだ話してたんだけど?」


そんな謎の会話が静けさを保った戦場で繰り広げられていた。


戦場の者は頭にハテナを浮かべてその状況を見ている。しかも唖然と。


カラナリスでさえその青年の言動が変に見えた。


そんな者達を置いてゆき、二人は反論しあい、背の小さな者の言葉で会話は終わった。


すると最後に、


「まぁ。つまりはこの世界の奴らは馬鹿な奴しかいないのな?」


そう青年が呟いた。


「おい?テメェ今なんつった?」


その青年の首元に巨大な刀が押さえつけられたのは1秒もたたない間だった。


その光景に人間軍はざわめき、魔王軍は歓喜を叫んだ。


青紫色の素肌で、黒い角を生やし、牙を剥いたひとりの魔物....


その言葉にカラナリスは怒りを覚えた。


カラナリス自身何故これほどの怒りが同じ人間である者に向けるのかが不思議であった。


しかし、突如として現れ、力を見せられ、戦いを中止させられた結果が、馬鹿にされただけだったのだ。


きっと両軍共にプライドというものが抑えきれずにいるのだろう。

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