クリスマス(封魔の巫女、美湖の場合)
この話の時系列は、封魔の巫女の、美湖がゴブリンスタンピートを壊滅させ、クランに報告した後、塔に挑み始める前の話です。
「ユーナちゃん、寒くなってきたね。」
ラティアの町にある宿屋『安らぎの風』で、木枠のはまった窓から外を見ていた美湖が、唐突にユーナに話しかけた。
「そうですね。もう、12月の半ばですし。というか、寒いのなら窓を閉めてはいかがですか?」
ユーナは、ベッドに腰かけながら『魔鉄の短剣』を布で磨いており、ため息をつきながら美湖に返す。この二人、このようなやり取りをしているが、主人と奴隷の関係にある。
「いいじゃん、この肌を刺す寒さっていうの?これがまた気持ちいいんだよねぇ。」
「まぁ、ご主人様がいいなら構いませんが。そういえば、とある地方では、この時期になると宴を開く場所があるみたいですよ。」
ユーナが思い出したように美湖に伝える。美湖はそれに興味を持ったのか、
「へぇ、どんな内容なの?」
と、ユーナに聞き返す。
「確か、この時期にだけ現れる、色とりどりの、クリスタルのような魔物がいるんですが、それらを討伐すると、同色のクリスタルを落とすんです。それをいくつか集めると、魔法効果の付与されたアイテムを作ることができるとか。」
「何、そのソシャゲみたいなの?」
美湖の呟きはしかし、ユーナには伝わっておらず、「そしゃげ?」と呟いていたが。
「とりあえず、なら集めてみようか。んじゃ、行こうよ。」
美湖は、ユーナの手をとりラティアヌス草原に向かった。
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のだが、
「寒いわ!!」
と、宿を出た道で叫んでいた。
「いや、当たり前ですよ、ご主人様。今は冬の真っ只中ですよ。」
ユーナが呆れながら美湖に言う。
「よ、よし。なら上着を買いにいこう。それから出発だ!」
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「改めて、飾りを集めるためにしゅっぱーつ!!」
町の服屋でコートを新調した二人は、ラティアの町の門まで来ていた。
「探索のためとはいえ、ホワイトウルフの毛皮を使用したコートを買うなんて、ご主人様、お金の使い方が大胆になってきましたね。」
ユーナは、美湖がかったコートを触って、あきれていた。
「いいのいいの。戦闘もするんだから、丈夫なほうがいいからね。」
そう言うと、美湖はラティアヌス草原に向かって歩き出す。ユーナもそのあとを追っていく。
しばらく草原を歩いていると、目当ての魔物が現れた。美湖の下の世界で、クリスマスツリーに飾るオーナメントのような見た目をしている。
美湖は魔物に鑑定スキルを発動する。
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オーナメントクリスタル(赤)
レベル 3
HP 10/10
ST 10/10
MP 15/15
AT 8
DF 7
MA 7
MD 6
SP 5
IN 6
DX 5
MI 6
LU 8
スキル
火魔法 (5/20)
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「うん、これ、クリスマスの飾りだわ。」
美湖は、その魔物の姿を見てそうつぶやいていた。だが、気を入れなおすと武器を構える。
「よし、ユーナちゃんは周囲を警戒しておいて。一応、僕が試しに戦ってみるよ。大丈夫そうなら、次からはユーナちゃんにもやってもらうから。」
といい、剣を構えてオーナメントクリスタルに向かっていく。クリスタルは美湖に気づき、火魔法スキルに内包されている魔法、ファイヤーボールを放ってきた。美湖は、そのファイヤーボールを剣で切り裂くと、クリスタルに肉迫する。
「そりゃ!」
美湖は、一閃、剣を縦に振り降ろす。それでオーナメントクリスタルは真っ二つになり、赤い霧になり消えていく。そして、美湖の足元に、ビー玉くらいの大きさの赤い宝石が落ちていた。美湖はそれを拾うと鑑定スキルを発動する。
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オーナメントジェム(赤)
オーナメントクリスタルの核。
複数集め、魔力を流すと、数に応じたアクセサリーになる。
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「完璧にソシャゲのイベントみたいだね。」
美湖は、オーナメントジェムを封じ札に封じると、ユーナと合流する。
「まったく問題なかったよ。これならユーナちゃんでも討伐できるよ。」
「わかりました。では、私も頑張って宝石を集めます。」
ユーナも気合を入れているようで、フンスと鼻息が荒くなっている。
「じゃあ、効率よく、二手に分かれましょう。私はあちらに行きます。」
「うん、わかった。なら、僕はあっちかな。僕が布に僕の血をつけておくから、頃合いを見て僕を探してくれる?」
「わかりました。ご主人様の血の匂いは、はっきりと覚えていますので問題ありません。ご主人様に傷を負わせるのは気が進みませんが。」
ユーナは、少し申し訳なさそうな顔をしたが、美湖は笑顔で「気にしないで」といい、
「それじゃ、お互い気を付けていこう。」
美湖とユーナは、二手に分かれてクリスタルを探し始めた。
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「これで、50匹目!」
美湖の剣戟が、オーナメントクリスタルを切り裂く。オーナメントクリスタルは、一つの宝石を落として消えていった。
「よし、これで結構集まったかな。」
美湖はオーナメントジェムを封じた札を取り出して確認した。
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オーナメントジェム(赤)×7
オーナメントジェム(青)×5
オーナメントジェム(緑)×8
オーナメントジェム(黄)×5
オーナメントジェム(紫)×5
オーナメントジェム(桃)×3
オーナメントジェム(金)×7
オーナメントジェム(銀)×5
オーナメントジェム(白)×5
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「こうやって見ると、結構少ないね。」
美湖は、3時間ほど探し回っているが、種類が結構ばらついており、各色の数はそれほど多くなかった。
「そろそろお昼の時間だね。ユーナちゃん、こっちに向かってるかな?」
美湖は、ユーナがこちらに向かってきていると考え、その場を動かないことにした。ユーナは、自分の血を頼りに向かってくるため、あまり動かないほうが彼女のためでもある。
「さて、待っている間に、どれだけ遭遇できるかな。」
美湖は、彼女がやってくるまで、やってきた魔物を討伐していこうと、周囲を警戒した。
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「ふう、ご主人様。こちらでしたか。」
30分くらいして、ユーナが美湖の下にやってきた。
「やっほ、ユーナちゃん。首尾はどう?」
美湖は、やってきたユーナに手を振って返すと、どれくらい集まったか確認した。
「はい、全部で63体討伐しました。後ほど、宝石をお渡しします。それよりも、お腹がすきました...」
と、お腹を押さえながら、頬を赤くして訴えてきたので、
「はいはい、僕もお腹すいたから、ご飯にしようか。」
と、封じ札から、事前に町で買っておいた昼食を取り出す。今回は、ホットドッグと、小さめのピザだった。
「ほんと、ご主人様のスキルは便利ですね。外で、暖かいご飯を食べられるのは、案外ほっとしますからね。」
「そういってもらえると嬉しいよ。はい、あーん。」
というと、美湖は、ピザを一切れ持つと、それをユーナの口に運ぶ。
「ありがとうございます。あーん、んぐ。美味しいです、ご主人様。では、はい、あーん。」
「あーん。んー、おいしいね。」
二人は、それぞれを「あーん」で食べさせ合う。
「...ご主人様。以前からしてますが、この食べさせ方は恥ずかしいです。」
ユーナが、美湖に差し出されたピザの最期の一切れを食べきると、頬を染めて抗議した。しかし、
「えー、とか言いながら、ユーナちゃんもノリノリで僕にあーんってするじゃん。」
と、にやにやしながら美湖は返す。すると、ユーナはさらに顔を赤くして、
「もう!ご主人様のバカ!それよりも、これが私が集めた宝石です。」
と、強引に話題を変え、ユーナはポーチからオーナメントジェムを取り出した。美湖は、それらに鑑定スキルをかける。
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オーナメントジェム(赤)×10
オーナメントジェム(青)×10
オーナメントジェム(緑)×8
オーナメントジェム(黄)×5
オーナメントジェム(紫)×5
オーナメントジェム(桃)×5
オーナメントジェム(金)×10
オーナメントジェム(銀)×5
オーナメントジェム(白)×5
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「おお、ユーナちゃんも結構集めたね。」
「はい、頑張りました。しかし、種類で見るとそれほど集まっておりません。結構な種類がいて、驚きました。」
「まぁ、それは仕方ないんじゃないかな。これだけの種類がいるなら、むしろ、結構集まったほう南蛇井かな。これから夕方まで狩るんだし、この倍の数は狩れると思うよ。」
「そうですね。しかし、いくつ集めればアクセサリーにできるのでしょうか?」
「そればかりはわからないね。でも、単品でもうまく加工すれば作れそうだけどね。」
と、美湖は一つのオーナメントジェムを手に取り、掲げてみる。ビー玉ほどの大きさだが、その形は自然に砕けたような形をしており、自然的な美しさがある。
「そうですね。おそらく、正しい方法で生成した場合、何らかの効果がつくのではないかと思いますが。」
「だろうね~。ま、とりあえず、それぞれ50個を目指そうか。まだ、このオーナメントクリスタルが出現している期間はあるんでしょ?」
「はい、確か、現れる最期の日の前夜に、各協会の屋根にある十字架が七色に輝くそうですよ。」
と、ユーナが教えてくれる。
(って、教会が輝くって、多分誠也のことだよね?こんなんでいいの?女神様?)
ユーナは、この世界に送ってくれた女神に対して、懐疑的な思考を抱くが、すぐに切り替え、
「んじゃ、午後からも頑張りますか!」
二人は、再び、クリスタルを探して動き出した。
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それから1週間。美湖たちは、毎日クリスタルを狩る日々を送っていた。朝から、夕方、陽がくれるまで続けたおかげもあり、それぞれのオーナメントジェムが100個を突破した。
「よし、ユーナちゃん。目標の50個の倍、100個集めることができたよ。」
「はい、ご主人様。1週間、お疲れさまでした。」
二人は、安らぎの風の泊まっている部屋で、集めたオーナメントジェムを確認していた。
「じゃあ、ユーナちゃん。僕が魔力を流してみるから。まずは赤いのから。」
さすがに、100個ものオーナメントジェムを手に持つのはできないので、ソクラから大きめの器を借りて、その器に100個のオーナメントジェムを入れてまとめて魔力を流してみる。すると、オーナメントジェムが光出し、みるみる形が変わっていく。
光が収まると、そこには、赤い宝石がはまった指輪が一つあるだけだった。
「いや!物理法則無視しすぎでしょ!!」
美湖は思わず叫んでしまった。それもそうだろう。元の世界では考えられないのだから。
ユーナは「ぶつりほうそく?」と首をかしげていたが、
「まぁ、魔法のある世界だもんね。仕方ないよね。」
と、小さく自分に言い聞かせると、気を取り直して、完成した指輪に鑑定スキルを発動する。
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聖なるレッドリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、火魔法(MAX)を装備者に付与する。
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「おお、これはまた、とんでもないアクセサリーだね。」
「どんな効果だったのですか?」
美湖が驚いているのを聞いて、ユーナが興味津々で聞いてきたので、美湖は彼女に指輪の効果を説明する。
「...確かに、それはすごい効果ですね。しかし、今まで、そのような指輪が流通したという話は聞きませんね。ここまで集める人がいなかったのでしょうか?」
「そうだね。いくら寒いとはいえ、探索者なら、やりそうなもんだけど...。まぁ、いいや。残りのジェムも、アクセサリーに変えていくね。」
と、美湖は、次のジェムを器に入れて、魔力を流していく。
すべてのオーナメントジェムをアクセサリーに変え終わった美湖は、ベッドに横になっていた。
「うう~、疲れた。」
どうやら、オーナメントジェムのアクセサリー化は、結構な魔力を消費するらしく、美湖の体には激しい倦怠感が襲い掛かっていた。
「大丈夫ですか、ご主人様?」
ユーナは、そんな美湖の横に転がり、心配そうに見つめている。
「うう、何とかね。魔力が回復したら大丈夫だと思うから。」
その言葉を聞いて、ユーナはほっとした顔をして、
「では、お召し物を取り替えますね。さすがに探索のままでは、寝づらいでしょうし。」
「うん、お願い、ユーナちゃん。」
と、美湖は体の力を抜いて、ユーナにされるがまま、服を脱がされ、寝間着を着せられる。といっても、下着だけだが。
(ごく、やっぱり、ご主人様の体、きれい...)
ユーナは、美湖の服を着せ替えている間に、どうやら発情してしまったらしく、少々息が荒いくなっていた。
「ん?ユーナちゃん、どうしたの?」
ユーナの様子がおかしいので、美湖は声をかけるが、
「ご主人様...。すみません、私、我慢できません!」
と、ユーナは、美湖に抱き着き、その体に手を這わせる。
「ひゃっ、ちょっ、ユーナちゃん!?今は、だめ、だってば!!」
美湖は、ユーナを押しどけようとするが、体にうまく力が入らず、ユーナにされるがまま、体をいじくられた。
「ああ、ご主人様、可愛い...。もっと、その顔を見せて、ください。」
ユーナは、美湖の顔を、恍惚の表情で見つめ、さらに、体をなでていく。
「も、だめ、ユーナちゃん、もっと、もっとぉ。」
美湖も、その気になり、ユーナにねだり始めた。
そして、二人の嬌声がしばらく続いた。
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翌朝。
「もう!ユーナちゃんったら、僕、疲れてたんだからね!!」
と、眼が覚めて美湖は、抱き着いているユーナを起こすと、怒り顔でユーナに訴えていた。
「申し訳ありません、ご主人様。ご主人様が、可愛すぎて、我慢できませんでした。」
と、ユーナは、怒られているのに、どこか嬉しそうな顔で聞いていた。実際、美湖は怒っているというていで、それほど怒っておらず、それがわかっているので、ユーナも軽く考えていた。
「もう。まぁ、気持ちよかったから、許してあげる。」
と、美湖もあきらめ、ユーナを許した。そして、昨日作り上げた指輪を確認する。
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聖なるレッドリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、火魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるブルーリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、水魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるグリーンリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、風魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるイエローリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、土魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるパープルリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、闇魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるピンクリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、魅了スキル(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるゴールドリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、雷魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるシルバーリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、光魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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聖なるホワイトリング
オーナメントジェムを100個集めて作り上げた指輪。
装備している間、回復魔法(MAX)を装備者に付与する。
聖なる○○リングは、一人につき一つしか装備できない。
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「いやー、これはなかなかにぶっ飛んでるね。」
美湖は鑑定結果を見て、驚きすぎて、あきれていた。
「火、水、風、土、闇、雷、光、聖魔法に、魅了スキルが、レベルマックスで付与される指輪。これはとんでもないね。」
「そ、それは確かにとんでもないですね。一人一つという制限が、辛うじてバランスをとっているという感じでしょうか。」
「だね。もしかして、これらが市場に流通してないのは、絶対数が少ないうえに、性能が良すぎるから、だれも手放していないんじゃ?」
「かもですね。ですが、これはかなりの戦力になりますよ。何せ、状況に応じて、戦術を変えることができるのですから。」
ユーナは、少々興奮していた。美湖も、それには賛成で、
「とりあえず、この指輪はとっておこうか。さて、残った端数に、まとめて魔力を流すとどうなるのかな?」
美湖は、残っていた端数をすべて器に入れると、再び魔力を流し込む。すると、ジェムが輝きだし、一つの指輪になった。美湖が、鑑定スキルを発動させると、
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身代わりの指輪
特殊な宝石をいくつもかけ合わせて作られた指輪。
装備者の受ける致命ダメージを一度肩代わりする。
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と出た。
「はぁ。そっか。そういうことか。」
と、美湖はある意味納得していた。いくら魔法が使えるようになる指輪が作れるとしても、それよりも、致命ダメージを肩代わりしてくれるアクセサリーのほうが、世間では有用であり重宝されるのだろう。
「ん?どうしましたか、ご主人様?」
「んーん。何でもないよ。さて、今日はお休みにしようか。久々に町巡りしようよ。」
と、美湖は服を着替え、ユーナの手を取り、町絵繰り出していった。
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その日、美湖とユーナは、久しぶりの休日を堪能した。
少し高級なレストランで食事をして、服屋に行き、おしゃれな服を二人分買い、様々な店を冷かしたり、気に入ったものを購入したり、
「んー、ユーナちゃんとのデートは楽しいなぁ。」
「んなっ、デ、デ、デート!!?プシュー。」
と、美湖がぽろっとこぼすと、ユーナが頭から煙を出したりと、美湖の言うデートとしては、その通りの一日だった。
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その夜。
二人は、ラティアの町にある教会にやってきていた。
「今日、光らないかな?十字架。」
と、美湖は、教会を見上げながら、つぶやく。ユーナは、先ほどかった果実水をすすっている。
と、
「うわっ!?」
美湖が、いきなり驚いた声を上げる。ユーナもそれに驚き、
「どうしました?ご主人様...あっ!」
と、美湖が見ている方向を見て、息をのんだ。
二人が見ている先、教会の十字架が七色に輝いていたのだった。
「「きれい...」」
二人の声がシンクロし、二人は顔を見合わせ、少し恥ずかしそうに笑いあった。
「見れてよかったね、ユーナちゃん。」
「はい、ご主人様とみられてうれしいです。」
と、しばらく二人は十字架を見ていたが、不意に、美湖が、
「ユーナちゃん。」
というので、
「はい?」
と、ユーナも美湖のほうを向く。そこには、まじめな表情を浮かべた美湖の顔があった。
「ユーナちゃん、左手を出してくれる?」
と、美湖はユーナに言う。ユーナは、意味が分からいママ、左手を美湖に差し出す。
美湖は、差し出されてたユーナの左手薬指に、今朝、作った「身代わりの指輪」をはめる。
「っ、ご主人様?これは?」
ユーナは、突然のことに驚き、うろたえてるが、
「ユーナちゃん、いつもありがとう。大好きだよ。」
と、ユーナを抱きしめ、彼女の耳元で囁く。それを聞いたユーナは、その瞳に涙を浮かべながら、
「わ、私も、大好きです、ご主人様。」
と、美湖のことを抱きしめ返す。そして、二人は見つめ合い、どちらともなく唇を重ねる。その二人を祝福するかのように、教会の光が照らし続けていた。