七夕の日
今日は7月7日。
彦星と織姫は一年に一度だけ、
天の川で出会える。
それが今日。
小さい頃は、
そこは、二人だけのために用意された、
特別な場所だと思っていた。
きらきらしていて、
その時にしか存在しない、
彼らだけの場所。
でも、そんなことはなかった。
現実は残酷だ。
天の川は七夕だけに見られるわけではないこと。
彦星と織姫は光の速さでも15年かかるほど離れていること。
そして、
彦星よりも綺麗で大きな星はいくらでもあること。
現実は残酷だ。
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僕には好きな人がいる。
彼女はいつも僕に笑顔をみせてくれる。
彼女が織姫で、僕が彦星ならいいのに、
なんてロマンチックなことを考えていた時期もあった。
でも、
現実は残酷だ。
僕の席と、彼女の席の間には、
目立たない星が数個あるだけで、
近づこうと思えば近づくことだってできるはずだ。
でも、それができない。
物理の授業に、
惑星と惑星との間に働く万有引力の法則を習った。質量を持つものはお互いに必ず引き合っているというものだ。
もちろん、人間の重さで計算すれば、
本当に僅かな力しか僕達には働いていないことはわかるが、少しでも彼女に近付きたかったから、
僕は、
ひたすら食べるようにして、
体重を増やし始めた。
もともと少食で痩せ気味な僕だったから、
むしろ太れと言われていたほどだったから、
そこまで苦痛ではなかった。
彼女のためと思えば苦しくはなかった。
いつか、手が届く範囲に、
彼女が僕のそばにいますように。
今日は短冊にそれを書こう。
そう、決心した。