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アップルキラー  作者: 尾黒 時男
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4話 思い出の神社

その日は夏休み真っ只中で、気温がとても高く、すごく暑かった。

僕は二人の友達、雄介(ユウスケ)愛美(マナミ)とここ大見手神社に出掛けた。

理由は、夏祭りに行く為で、みんな弾んだ気分で神社に向かったんだ。

しかし、神社に着いても祭りはやっていなかった。

なぜかと言うと単純な話で、日にちを2日ほど前倒しに勘違いしていたのだ。

「あれ、お祭りやってない。」

雄介がそんな疑問の声をあげる。

「とりあえず、入ってみよう。」

そう言って、僕は、神社の中に一番乗りで入ったのだ。

後から、二人が続いてやってくる。

神社の階段を登りきるのに、子供の足では、それなりに体力を使った。

「疲れたー。」と独り言を言いながら、神社の中を見回す。

が、やはり祭りはやっていなかった。

屋台などなにもなく、神社の中には誰もいない。

いや、一人だけいた。

女の子が一人、神楽殿の前で鞠をついて遊んでいた。

僕は近寄って声をかけた。

「ねえ。お祭りってやってないのかな?わかる?」

そう僕が話しかけると、女の子は鞠をつくのをやめて質問に答える。

「やってないというか、お祭りは明後日だよ。」

僕は驚いた。

「えっ、今日じゃないの?」

「うん、今日じゃないよ。」

そう言って、女の子は鞠つき再開した。

とんとんとんと、上手に鞠を操る。

しばらく女の子の鞠つきを見ていると、雄介と愛美も、僕に追い付いてきた。

二人に近寄って声をかける。

「お祭り、明後日なんだって。」

先ずは、報告。

「えっ?」

二人とも驚いた顔を見せた。

「あのこが教えてくれた。」

僕はそう言って、薊を指差した。「そうなんだ。」

愛美が頷く。

「じゃあ、どうする?」

雄介が訊ねる。

話し合った結果。ここで、鬼ごっこやかくれんぼをして遊ぶことになった。

遊びが始まる前、僕は思い立って、女の子に声をかけに行った。

「ねえ、今から鬼ごっこするけど、一緒にやらない?」

子供特有のフレンドリーさを最大限に発揮し、遊びに誘う。

女の子は頷いて、僕についてきた。

他の二人にも、「いいよね。」と了承を取る。

勿論、他の二人もOKをした。

鬼ごっこが始まる前、女の子が声をあげた。

「あの。みんなの名前はなに?私は小鳥遊 薊っていうんだけど。」

ああ、そう言えばまだだったね。と、薊に順番に自己紹介をする。

「僕は白井 生だよ。」

「俺は雄介だよ。」

「私は愛美っていうんだ。」

それだけ言って、みんなで遊び始めた。今にしてみれば、子供だったこのときが一番楽しかったと思う。

僕の歴史は、ここから先はどんどん坂を下って行く。

太陽が登りきった場所がここだった。

僕たちは、日が暮れるまで一緒に遊んだ。

遊び疲れて愛美、雄介と神社で解散する。

家に向かって歩き出すと、後ろから薊がついてきた。

「あれ?家、こっちなの?」と薊に訊ねる。

「うん。生くんこそ、こっちなんだね。」

薊は二回ほど頷いてそう口走る。

しばらく歩いて、家についた。

「僕、ここだから。」そう言って家に帰ろうとする。

薊は「そうなの?私、あっち。」と言って、真向かいの家を指差した。

「えっ。ホントに?」

祭りが明後日と知ったとき以上の驚きを感じた。

確かに、表札には小鳥遊(漢字の上にTAKANASHIとアルファベットがある。)と書いてある。

「知らなかった。」

「私も。」

そこで、それをきっかけに僕と薊は一つ約束をした。

「じゃあ、明日も一緒に遊ばない?」

「うん。いいよ。」

「やった。じゃあ、また明日ね!」

そう言って、僕は家に入った。

それから薊とは毎日のように一緒に遊ぶようになった。

あのとき、祭りの日を勘違いしなければ、薊とは友達になれなかった可能性があったわけで、もしかしたらあれは神様の巡り合わせだったのかも知れないと、今になれば考えたりもする。


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