48・ねぎま先生は創作をしてたそうです
「ゲームの情報で記憶違いとかがあれば書き足してほしいのですが……」
九井さんに渡して、中身を見てもらう。九井さんは黙々と読んだ後、私を見て軽く頷いて口を開いた。
「俺の記憶が正しいと言い切ることはできないが、俺の覚えてる限りでは間違ってるところはないと思う。最初に書いてあった疑問は俺も持ってたものだ。新入生挨拶の時に、同じ見た目なのにも関わらずメルシアではなくメルと呼ばれた時は進行のミスかと思ったが、どうやらそうじゃないと知った時は驚きだった」
「ですよね、私も自分の名前がメルシアじゃないことには流石に動揺しました。もしかしてデフォルト名でない、という可能性もあるのでしょうか」
「うーん、でもそこまで似てるのにデフォルト名じゃないというのも変だよな。もしデフォルト名じゃないのだとしたら、前世の本名である美沙をこちらの世界風にした名前とか、あるいはゲームとかSNSとかの垢名とかの方が有り得るだろう。前世でメルって垢名にしたことはあるか?」
「いえ、ないです。だいたいがカタカナでミサにしてたので。じゃあこのメルって名前になったのは、この世界に生まれた瞬間ではなく、その後に変更されたということ…?」
何か得体の知れないものを垣間見た感覚に背筋が凍る。
表情を引き攣らせた私を見て、九井さんは苦笑した。
「まぁ、今はその可能性があることだけ覚えとけばいいんじゃないか?他に転生者がいて、その人が本来のシナリオと違う動きをした結果、間接的に美沙の名前がメルシアからメルに変わった、っていうのが妥当な線だろう。ようは他に転生者がいるかもしれない、ってことだな」
九井さんが状況を整理してくれたおかげで、固まった背筋が少し解れる。
ふぅ、と一呼吸置いてから、少し気になったことを口にした。
「九井さん、転生物詳しいですね」
「あ?あぁ、元々転生物好きだったし、1回創作で転生物描いたからな。……あぁ、あれは美沙の死後だったか」
九井さんは気づいてから気まずそうな顔をするけど、きっと1回死んだことを思い出させて申し訳ないとかなんだろうけど、そんなこと気にしなくてもいいんだ。ただ私は、
「ねぎま先生が創作……!?絶対それ神作じゃないですか!あぁ、読めなかったのが悔しい!」
そう、悔しい!ひたすらに悔しい!跳ねられたくらいで死ぬなよ私!ねぎま先生のあの夏コミの新作だって読んでない私、本当に情けない!
九井さんは変わりないテンションの私に安心した様子で、何気なく言う。
「同じ絵が描けるわけじゃないが、 ストーリー自体は覚えてるし、描き直そうか?この世界の勉強、魔法学とかの前世には無かったのも多少はあるが、数学とかのが二周目な分、正直暇なんだ。どうせ暇を潰すなら、ファンに喜んでもらいたい」
「っいいんですか!?是非お願いします!」
すみません遠慮がなくて!でも本当に読みたかったんです!
「生まれ変わっても覚えててもらえるって嬉しいもんだからな、何かお返ししたかったんだ。さて、そろそろ寮に帰ろうか。」
先に帰っていいよ、と言われたので、門の方へ数歩歩く。ふと、一つ思い出して振り返った。
「九井さん、質問なんですが」
「なんだ?」
やっぱりヴィクも攻略対象なだけあってかっこいいよなぁとぼんやり思う。
「温室って、ゲームにありました?」
どこか浮世離れしたあの庭。ゲームではそんなところ、なかったはず、なんだけど。
「いや、なかったと思うぞ」
「そうですか、ありがとうございます。……では、また明日」
一礼してから、今度こそ東庭園を出た。
前回の投稿の後書きに「次は間をあけずに更新できると思います」って書いてあって…、あの、本当にすみません、いやもうどうお詫びしていいか分からないんですが、お待たせしました、噂の次の投稿でございました、読んで頂きありがとうございます…。
久しぶりすぎて感覚をちょっと忘れてるんですが、大丈夫でしょうか…、テンション合ってる…?
次の投稿はもっとちゃんと早く書きます(フラグじゃないです)




