44・早い時間の教室、です
寮に戻り荷物を取って寮内の食堂に行く。エレナは自分の目覚まし時計を7時15分に設定していて、まだ起きていない。エレナは寝起きが悪いイメージではないし、私が起こす必要もなさそうだ。
食堂内は人がまばらで、もちろんフェルトも来ていない。
私が放っておいたらフェルトはどうなるのだろう、と胸の奥で不安が顔を出す。
振り払うこともできないまま、受け取った食事の味も気にせず完食して返却口に戻してから寮を出た。急いでるわけでもないのに、なぜだか自然と駆け足になってしまった。
教室に着く頃には息が切れていて、この時間だから教室に誰がいるとも思えないけど、息を整えてから入ろうと思い、深呼吸を何度かしてからドアを開けた。
「あれ……?おはよう、メル。早いね」
「タミル……?おはようございます。タミルも早いですね」
誰もいないと思っていた教室には、タミル1人だけがいた。タミルは読んでいた本を閉じて、私の方を向く。
「ダイ………リングルズ様は、一緒ではないんですね」
「あぁ、ダイル?たしかに部屋同じだし同じ時間に起きるけど、ダイルは朝ジョギングしてるから、その分俺の方が来るのは早くなったんだよ。ダイルがいた方がよかった?」
「いえそんなことは。リングルズ様は私のことが、というか女性全般のことが苦手みたいですし、それなら私もあまり近づかない方がお互いのためだと思っていて。でもそうするとリングルズ様と一緒にいるタミルとも話せなくなるのかと思うと、少し寂しかったので、今は2人でよかったです」
「………ありがとう、でもそういう男を簡単に落とせそうなことを軽々しく言うのやめようか」
ん…?そんなこと言ったつもりはないんだけど……。でも、どの点がダメだったかはわからないけど、とにかくやめないと攻略対象キャラに言って無駄に好感度が上がったら困る。貴重なアドバイスを貰ったのだから、お礼をしなくては。
「えっと、アドバイスありがとうございます、気をつけます」
「うん、全然分かってないね……。まぁいいや、メルはなんでこんな時間に?」
「もともと早起きでして、今まではそんなに気にしたことなかったのですが、今になって相当早い時間に起きてたのかを実感してます」
だって温室に行って一息ついてから寮戻って朝食食べてきてもこんなに教室に着くのが早いんだもの!今までは使用人としての仕事があったからむしろ忙しいくらいだったんだけど。
「そっか、じゃあさ、これからこの時間に来てよ」
「え?」
「ダイルのことは別に気にしなくていいと思うけど、でもメルと学園での時間だけじゃなくてもっと話したいから」
「…………もちろんです。だけどタミル、あなたもそうやって異性のハートを奪えそうなセリフを簡単に言うのはやめましょう」
「え?そんなこと言ったつもりないんだけどな……」
攻略対象じゃないのに、いや、だからこそなのかもしれない。警戒心がない分素直にきゅんとしてしまったのは、私だけの秘密だ。
しばらく話してると、だんだんと教室内の人が増えてきて、本鈴が鳴る。
教室に入ってきて出欠を取っているイービン先生と目が合って、お互いに少しだけ口角を上げた。
清い青春ですな……(遠い目)
テストがやっと終わったのでこれから更新ペース上げてきたいです……頑張ります




