41・エレナ視点
エレナ視点ですが本編続きなのでお読みいただくことをおすすめします。
メルが作ったパスタを持ってフェルトの部屋に向かう。いい匂いがして、さっき食べたばかりなのにお腹が空いてきた気もする。
それにしても、メルどうしたのかしら。この学園に来てからフェルトへの対応の仕方が不自然だ。いつもならこんな風に私に託さず、自分でフェルトの様子を見に行くし、そもそも夕食行く時にフェルトを誘ってるはずだ。
不自然と言えばフェルトも様子がおかしかった。いつもは荷物の片付けくらいはするのにメルに頼りっきりだし、メルがいるときといないときの温度差もいつも以上で1人ときのフェルトの近くは外套がほしいくらい寒かったし、さらにはクラス発表の紙の前で倒れたらしい。
この2人の状況は、きっと誰が見てもよくないと思うはずだ。フェルトがメルのことを嫌うわけがないし、むしろ好きでなくなることもないだろう。だが、メルは今の雰囲気を見ると分からない。嫌いとまではいかないだろうが、もしかしたら手のかかるフェルトを面倒と思っているかもしれない。この学園に入って外の世界とフェルト以外の男の人を知って、誰か好きな人ができたのかもしれない。婚約者であるフェルトが邪魔だと思ったのかもしれない。もっとも、メルがそんな心変わりする子だとは思えないのだけど。
あと一つ気になることがある。フェルトが夕食を食べてないと言う話だったのに、なぜなら平静だったのか。おそらくいつもならメルは使用人らしく無表情を心掛けるもののフェルトを心配して動揺を漏らすはずだ。でもさっきはなにも反応してなかった。……やっぱり好きな人ができてフェルトが邪魔になったのかもしれないわね…。
私は2人のことが好きだ。だから2人が結ばれて幸せになるのがいいと思ってた。けれどメルが他の人を好きなら、私はどうすればいいのだろう。どう動けば2人の幸せを願えるだろう。
ふぅ、と薄くため息をついてフェルトのどう部屋のドアをノックする。
「フェルト?夕食、持ってきたわよ」
フェルトが部屋にいることは寮の管理人の方に聞いたからしっている。共有スペースや管理人室にもっとも近いフェルトの部屋は出入りが管理人室から確認できるらしい。
「フェルト?」
ドアノブに力を入れたら回ってしまって、入れてしまう。ドアの鍵ぐらい閉めなさいよ、と注意するのは本来メルがすることなのに。
「フェルト?起きてる?」
部屋の明かりは一つもついておらず暗闇のまま。他人の部屋なのに自分で勝手に明かりをつけるのも気が引けるので、少しの不安を抱きつつ奥に進む。
ふと薄暗闇の先に影を見つけ、もう一度名前を呼ぶ。
「フェルト」
「…………エレナか。それ、メルが作ったやつだよね。なんでエレナが持ってきてるの」
あからさまに落胆した声色で私の手の中のお皿を指している。
「えっ、こんな暗いのにフェルト見えてるの?」
持ってきたのが食事ならメルのだと予想することはできる。食堂のものを部屋に持ち込むことはできるが、この時間ではそれも難しい。となるとフェルトの食事を作れるのはメルしかいない。
でも今は薄暗闇の中だ。起き上がる動作は見えたからさっきまで寝ていたとすると、暗闇にすぐに目が慣れてお皿を認識するのは難しい。
「見えてない。けどメルのものくらい分かる。で、なんでメルじゃないの」
メルのものだからって……。いや、それがありえるのがフェルトだって分かってるけど。
まだ目が暗闇に慣れてない私でも分かる。フェルトは間違いなく怒っている。それが私に対してなのかメルに対してなのかは分からないけど、すぐに退散しないとどう怒りをぶつけられるか分からない。
「メル、忙しいんじゃない?じゃあ私も部屋戻るわ、ちゃんと夕食食べなさいよ。あと鍵も閉めて」
お皿を近くのテーブルに置いてフェルトの返事を聞かずに部屋を逃げる様に出た。
…………これは、だいぶ深刻かもしれないわね。
今日はちょっと短いです。
次回はフェルト視点を入れようかと思ってますが、結構フェルトの脳内は危険なので読まない方がいいかも……。予定通りフェルト視点なら前書きでもう一度注意書きしますね。




