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34・開き直って適当にいきます



近づいてくるガードンに内心戦々恐々としつつ、まだ気づいてないそぶりをしてみた。悪あがきがすぎるとか突っ込んじゃいけない。


そういえば隣にヴィクの姿がないが、注文でもしにいったのだろうか。ガードンの隣にヴィクがいないのは新鮮だ。……あれ、イフエンって一応乙女ゲームだったような。腐の付くジャンルではなかったような。


さて、思い出せないイベントはしょうがないから無難に凌ごう。今日起きた出来事思い返すと無難とか私に出来る気がしないけど、大丈夫だと信じよう。



「おい、メ……、シーグルト。先ほどぶりだな」


すごく不安だけど、イベント開始、ですね。



「あ、ブラームス先輩、またお会いするとは、奇遇ですね」


いえある意味奇遇じゃないですこのゲーム世界の強制力なんですたぶん、と内心とは真逆のことを口では取り繕う。


「なんだその今俺の存在に気づいたみたいな受けごたえ、さっき目が合ったような気がしたんだが……。まぁいい、お前、昼食は一人か?」


気づいてないです目なんてあってないですそういうことにしておいてくださいよそのほうが平和に済むんだから。無論さっきから心の中は荒れ狂っている。外面は穏やかな微笑みを絶やしていないのをだれか褒めてほしいくらいだ。使用人人生で培ったものがここで役に立つとは。


「いえ、一人ではなく、私は人を待っているところで……」


なんだこれ、ナンパを断るときの常套句じゃないか。断る正当な理由がありイベント回避かと油断したとき、知っている声が近づいてきた。………ただし、ゲームの中で。


「ガードン!注文は済ませてきたから、席をとりに……、その子は?」


ヴィクだ。ヴィクが出てきた以上完全なイベント回避にはならないかもしれない。でも、他学年のヴィクに会える機会は不規則だし、好感度を適度に上げる上ではここは回避しなくてよかったともいえる。ただ、対策をしてからイベントに挑むという意味では回避、というか先延ばしにしたかった。そんなことできないのかもしれないけど。


それに、一瞬ヴィクが警戒するような、怯えるような表情を私に向けた。もしかして、何かの事情で私を知っている?


「あぁ、彼女はメル・シーグルト。新入生代表を務めた一年だ。シーグルト、こっちはヴィクアヌス・ターコイド。俺と同じ二年で生徒会副会長をしている」


「ご紹介にあずかりました、メル・シーグルトと申します。ターコイズ先輩、何かの機会でまたお会いしたら、よろしくお願いします」


あくまでも穏やかで上品な笑みを浮かべ、ヴィクに顔を向けると、彼は驚きで目を見開く。……やっぱりなにか知っているのか。


「……ヴィクアヌス・ターコイズだ。新入生代表ということは君は優秀なのだろう。また会う機会もありそうだし、よろしくな」


え、ちょっとやめてよ不吉なフラグ立てないで!なんて今の私は口に出さない。公爵令嬢としての鉄仮面は頑丈でなければいけないのだ。


「おっと、」


表面をなぞるだけの、腹の探り合いのような会話は、ヴィクがほかの生徒に勢いよくぶつかられたことで落とした荷物の音に中断される。


ぶつかった生徒はヴィクに謝ったあと、急いでいたのか足早に去ってしまう。


落としたものは書類がほとんどで、拾うのを手伝っていた時に、あるものを見つける。だってこれは、こんなものをもっているということは。


思わず口角が緩みそうになってしまい慌てて引き結んでから、ヴィクに聞いた。


「ターコイズ先輩は、夏と冬、どちらが好きですか?」



最後のセリフ、意味が分かる人にはわかるやつですね。私は冬のほうがどちらかといえば好きです。

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