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29・担任の先生です

タミルの腕を振るのをやめてからまもなくして先生が入ってきたため、席についた。

先生は白を基調にして紺色と金の刺繍が施された専用のコートが支給され、それを羽織るため一目でわかるのだ。



先生は中央にある教卓の前に立ち、ぐるりと座っている生徒を見回した。そして窓際の私の列あたりを視界にいれると微笑む。……え、何?


「キア・イービンです。今日から1年間この1年A組の担任をします。担当教科は魔法学と実践魔法の光属性です。どうぞよろしく」


穏やかで優しげな微笑みを浮かべ、それだけで女子生徒の大半はほぅとため息を漏らした。


キア・イービン。ごげ茶色のやや長めで毛先を後ろで結んでいる髪に髪より濃い茶色の瞳。名前もゲームでは出てこなかったし、見た目も派手ではないから安全牌じゃないだろうか。通常、ゲームに登場する名前ありのキャラは見た目が派手で、具体的には赤だったり青だったりする。戦隊モノかと突っ込みたくなるほどだ。そしてそれはイフエンも例外ではない。

実際、ヒロインこと私の容姿も派手だ。パープルのカールがかかった柔らかい髪が背中まで伸び、目の色は透き通るような青色だ。前世の記憶持ちの私としては相当恥ずかしいが、この世界ではわりとこれくらい見た目が派手でも好奇の視線は浴びない。むしろこれが当たり前。目がチカチカしそうだ…。

そう考えるとキア・イービンは相当地味だということになる。いやまぁ人の容姿に文句をつける気はないんだけど。あ、忘れてたけどキア・イービン先生、だ。イービン先生、イービン先生、よし。間違えない。


それと、イービン先生は光属性の担当だそうだ。となると光属性の私は当然ながら先生に実践魔法を習うことになる。どんな授業をする先生なのか楽しみだ。




そんな脳内解説をしていると、ふいに右隣から肩をつつかれている感触に気付く。


「なんでしょう?」


一応先生が話してる途中なので囁き声で聞き返す。


「いや、どっか違う所に思考が行ってるみたいだったから呼び戻したほうかと思っただけだ。……お前、変なやつだな」


あ、そうですかわざわざすみません。…わざわざ声かけてくれるくらいには拒絶されなくなってる?それともただダイルがいい人なだけ?……後者だろうなぁ、ゲームの時のキャラもそんな感じだったし。



「わざわざありがとうございます。あと、変なやつ、は褒め言葉として受け取りますね」


あんまり癇癪起こすのも大人げないし、変なやつとか急に言われてわりと凹んでるがそこは心に蓋をしよう。


「やっぱり変なやつ」


無愛想な声色に苦笑が混じった直後、イービル先生が私とダイルの苗字を呼ぶ。


「ホームルーム中です。お静かに」


冷ややかな崩れない笑みに引きつった愛想笑いを咄嗟に返し、むぐと固く口をつぐんだのは言うまでもない。




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