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26・言えない、です
嬉しいのか。責めているようにも聞こえるその口調は、執着しているからであるぶん好感度が高い表れとも言える。
このままではまずいのだ。好感度が高ければアートルートに行ってしまい、世界滅亡エンドになる可能性がぐんと上がってしまう。私が大人しくアートのハッピーエンドに進めば防がれるが、それはそれで私はアートと共に王宮で暮らすという名の部屋に軟禁エンドだ。それも避けたい。となるとやはりフェルトの好感度を下げるしかないのだけど。わかってる、わかってる、んだけど。
なぜだか、嬉しいと言えない。言わなきゃまた、好感度を下げる機会を逃すというのに。……世界を、滅ぼすかもしれないのに。
この人を傷つけたくないと、悲しんでほしくないと、寂しい思いをさせたくないと、そんな直感的な感情が邪魔をしてしまう。
言って。言ってよ、お願いだから。
「………嬉しい、ですよ」
やっと絞り出した台本通りの台詞は、言葉とは裏腹に弱々しく震えていた。
 




