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3・爆弾発言投下のようです

なんとか時間はかかったものの食堂に辿り着き、フェルト様に席に着くよう促した。

フェルト様は当主の向かい側の席に座り、二人は食事を始めようとしたが、ある違和感に気付く。座っているのは二人じゃないのだ。


「お父様、なぜシーグルト公爵がいらっしゃるのですか?」


そう、当主の隣に男性が座っていらっしゃるのだ。私はお会いしたことがないので存じあげないが、どうやらシーグルト公爵家のご当主らしい。とても見た目が若々しく、優しそうな方だ。

あと、いつもは「父さん」呼びなのに「お父様」になってるのは他所の方がいるからだろう。社交場には同行しないから心配だったけど、ちゃんとフェルト様も公爵家嫡男らしくしてるのだと分かって安心。


「そう、アレクが来てるのはある用があってな。メル、掛けてくれ」


……私?

一介の使用人なんだけど、そんな公爵家当主様にご指名頂くようなことは何もしてきてないんだけど……。

一瞬固まったし、同じ空間で腰掛けるなんてそんな無礼なことしていいのかとか迷ったけど、当主の命令なら、とフェルト様の隣、先ほど名前が判明したアレク・シーグルト様の御前の椅子を引く。

顔が強ばってる気しかしない。胃が痛い。使用人室に帰りたい。あとフェルト様寝巻きのままシーグルト様の前に出しちゃってるけど不味いよねどうしよう。


「緊張しなくていいよ、メル。これから家族になるんだしさ」


穏やかで陽だまりのような笑顔を浮かべ、シーグルト様が声を掛けてくださる。こんな国の重鎮と直に会話していいのだろうか……じゃない、え?か、ぞく?かぞくって、あれだよね、家に一緒に住んでる……あれ、それは使用人も同じで……あれ、あれれ?


「ははっ、混乱してるみたいだな。アレク、詳しく説明してやれ」

「そうだね、じゃあ最初から」


シーグルト様が話したのはこうだった。

私は王立学園に通うにあたり、魔力の測定をした。

ちなみにこの国とその周辺の国には魔法があり、それは自分の体内に貯蔵されている魔力を使って発動させるものだ。

魔法の属性は数種類あり、水、火、緑、空間、闇、光、心、それと一般に知られていないものが何個かあるらしい。

測定するのは自分の適性属性はどれで、どのくらいの魔力を持っているかだ。ちなみに適性属性以外でも使えないことはない。

普通、魔力をまともに有した子供は上流貴族や王族にしかいない。昔は平民や下級貴族にもいたらしいが、それを取り込み一族の力を高めるべく、上流貴族がありとあらゆる方法でその魔力保持者を一族に入れ、そこで子孫を残させたらしい。そうすると必然的に上流貴族や王族に魔力保持者は集まり、やがて他ではあまり出なくなった。だから上流貴族と王族は健康診断をする度に魔力の測定を行うが、そうじゃないものは学園に入る前にするだけだ。学園に入らないものは一切測定する機会がない。

閑話休題。

私は測定の結果光属性で、トップレベルの魔力を保持していることが分かった。これは平民ではかなりのイレギュラーだ。

で、ここから話は簡単だ。要は養子に入ってほしい、ということだ。

別にそれ自体は別段不満があるわけではない。ただ、そうすると今後、といっても明日から王立学園の寮に移るけど、この屋敷で過ごすことはなくなり、フェルト様に仕えることもなくなるというのが気にかかる。ここでの生活は忙しいけど楽しいし、なによりこんな自堕落なフェルト様を他に任せるのは心配だし任された人が可哀想だ。


しばらく言葉を発せずにいると、隣から声が聞こえてきた。


「…もぐ、ん。あのさ、俺のことなら気にしなくていいよ。頑張って朝起きるし」


なんだ、バレてたのか。貴方のことが一番心配だって。……敵わないなぁ、全く。


思わず口角をあげてしまって、慌てて引き締める。だめだ、これじゃ。


「それで、この話には続きがあってな」


続き?ならまとめて話してくれてよかったのでは、とは言わないけど。

当主の方に顔を向けて、小首を傾げた。


そして、


「フェルトの婚約者になってくれ」


とんだ爆弾発言をドヤ顔で投下したのだ。

……あぁ、まぎれもなく親子だ。

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