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閑話・ハロウィンがこの世界にあるかどうかはさておき、せっかくのイベントなので楽しみましょう

「トリックオアトリートです」


これはまだ私達が屋敷に住んでる時の話。


ふと、今日の日付を思い出し、いつも振り回されてるフェルト様相手にちょっとした仕返しをできるかと思ってそんなことを言ってみる。


私はこのころ前世の記憶を明確に持っていたわけではないが、ところどころを今世の記憶のように持っていた。


だから私はこの時も当たり前のように反応を待ったのだが。


「とりっくおあとりーと………?」


フェルト様は不思議そうに首を捻って私を見つめてくる。


あれ、フェルト様知らないのかな?有名だと思うんだけど…。


どうやら知らないらしいフェルト様のために、意味を簡単に伝える。


「おかしをくれないといたずらしちゃうぞ、という意味です」


さて、どう反応が来るのか、思わず期待を込めた目で見てしまう。


「……メル、そんな可愛いこと言うの?…待ってて、お菓子といたずら道具一通り揃えるから」

「別にそこまで求めてないので大丈夫です、冗談ですから!忘れてください!」


口元を抑えほんのりと顔を赤らめて弾んだ声で突拍子もないことを言う我が主人。こんなにもウェルカム体制な言われる側って他にいるのだろうか、いやいないだろう。だいたいいつも体力省エネ思考のこの方が自主的に動こうとするのすら珍しい。


「やらないの…?」

「や………」


やらない、と言おうとしたが、あまりにも期待を込めた目でこちらを見るのだから、この人はこのイベントっぽいものを楽しみたいのかと思ってしまう。


今度はこちらが期待の目に白旗を振ることとなった。


「や、やりたいです」


その言葉を聞くや早く、忙しそうに、だけど楽しそうに去っていく背を見て、頭の隅でぼんやりと、お菓子かいたずらどっちかでいいんだけど、と今更なことを思った。


「用意してみたよ。俺の部屋来てくれる?」


1時間後、ただ待っているわけには行かないので仕事をしつつ待っていたら、フェルト様が呼びに来た。


仕事をキリのいいところまでさっと片付けてから、フェルト様に連れられて部屋に入り、テーブルが前に置かれているソファーに座らされた。


まず目に付いたのは、マフィンやクッキーなどが盛りつけられたティーセット。クッキーは2人分用意されていて、あげるというよりは一緒に、という考えが見て取れた。しかし、マフィンは一つしかない。

しかし、本来持ってくると言っていたもう一つのものがそこにはない。

見回してみても、いたずら道具は見つからない。もちろんお菓子だけでいいのだが。


「フェルト様、いたずら道具は持ってこられなかったのですか?」


「それなんだけど、なかなか思いつかなくて、それでね、」


フェルト様は申し訳なさそうな顔をしながら唐突にマフィンを掴む。そして、私に手渡した。


いきなり渡されて困惑している中、フェルト様は口を開けて固まった。


「えっ、フェルト様、どうなさったのですか?」


「そのマフィン、激辛にしてみたんだ。甘党の俺からしたら食べたくない代物。でも、メルにあーんしてもらえるなら食べたいし、でも、っていう、一応俺からしたらいたずらされてる状況になる、んだけど………」


だめだった?と不安そうな顔をしてくるが、心配なのはこっちだ。


なんですか、自らマゾにならなくても…!


といたずらかお菓子かどちらかでいいと伝えてみるが、それでもどちらも選ぶという。


釈然としないままその何が入っているかも分からないゲテモノマフィンを差し出すと前のめりで食いついてくる。


マフィンを咀嚼して顔を顰めてるのか喜んでいるのかよく分からない表情をしているフェルト様をみて、思っていたのとはだいぶ違うが、本人が楽しそうならいいかと私はこっそり顔を綻ばせた。

ギリ遅れたハロウィンです。


フェルトのキャラが…。

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