23・ガードン出会いイベントです
「おい」
き、聞こえなーい。私は何も聞いてない。聞こえない聞こえな、
「おい、聞けよ」
必死に目を合わさないよう前を向いていたというのに、肩を掴んで揺さぶってきた。ここまでされてまだ無視はさすがに家に迷惑をかけかねない。仕方ないか…。
「はい、ごきげんよう、えっと……お名前をお伺いしても?」
「……お前、俺のことを知らないのか」
ゲーム同様、ガードンは目を丸くして私を凝視する。
社交界に顔を出したことのない私が知っているのもおかしな話だと思って聞いたが、私が今までの社交界にいなかったことを知らないガードンからするとゲームストーリー同様新鮮に聞こえてしまうのか。あっぶな、気づいてよかった。
「申し遅れました、私はメル・シーグルトです。先日養子に入ったばかりですので、社交界にまだ出ていません故、お目にかかったことがないのだと思います」
同じ階級なので敬語は王族相手すなわち格上相手よりも使わないようにする。社交界がどんなものか知らないから、なおさら授業で習った礼儀作法に忠実であったほうが安全だ。
愛想笑い程度の笑みを貼り付け、早く名乗れよと目でやんわりと威圧してみる。始まったものは仕方ないのでいっそ早くイベントを終わらせたいのが本音だ。
「あ、あぁ、養子だったのか。どうりで見かけない顔だと思った。俺はガードン・ブラームス。よろしく」
よろしくしたくない……、とか口に出すわけにもいかないので、返事はせずやんわりと微笑んで顔を逸らし前を向き直した。
これは今日の1時頃に出す予定だったやつです。
明日と今日の狭間の分も今から投下します。