閑話・朝、起きるとき 後編
馬車が目的地に着き、いったんお互いの部屋に分かれて荷物整理をすることになる、が。
「うぅ……やりたくない」
いや、苦手なわけではないのだ。やり方がわからないとか非効率的になるとか、そういうことじゃない。
ただ、いつもメルにやってもらっていたから、今回もやってもらえないかな、なんて思っただけで。
なんとなく、やりたくない。
結局手をつけずに応接室に向かってしまった。我ながらダメ人間だ。
まだメルも来ていない上、誰もいない。やることを探すのも面倒になって、適当な椅子に座って意識を手放した。
メルの声が意識に触れたような気がして目を覚ます。
そこには呆れ顔のメルと…エレナがいた。
エレナの声を雑に聞き流して、メルに荷物整理の手伝いをお願いする。手伝い、じゃなくてほぼ全部なんだけど、それは言わない方がいいのだろう。
メルをどうにかして自分の部屋に引っ張ることは俺の中で確定していたけど、こんなにあっさり引き受けてくれるとは思ってなかった。
俺の性格上片付けないのを分かっててくれたらしくて、それは嬉しいんだけど、こうも簡単に了承されると男扱いされてないみたいで苦しいっていうか……。
いいんだ、じっくりと焦らずやっていこう。
部屋で黙々と真面目に片付けてるメルに本来働くべき俺はメルにちょっかいをだしていた。さすがに力仕事はしたけど。
校内探索をしようと言うから手を繋いだら、一瞬の間があったあと何かを思い出したように俺の手を振り払う。
振り払われることなんて今までなかったから、あからさまに不機嫌に問い詰めてしまった。……これで、彼女に嫌われたりしてないといいんだけど。
彼女の焦った表情にこちらまで得体のしれない焦燥感にかられながら、解かれた手に力を入れる。だが、意志が切り離されたように手が麻痺して動かない。我ながら、振り払われたショックで腕が使い物にならない、なんて、大袈裟だとは思う。
でも、しょうがないんだ。彼女は、メルは俺の全てで、言うなれば世界そのもので。
ーーーーー嫌がられてしまった?嫌われた?……他に好きなやつがいる、とか?
絶望で視界が黒く塗りつぶされ、そんな余裕のない文字の羅列が頭の中を埋め尽くす。そして救いようのないことにその文字は欠片も吐き出されることがないのだ。
唐突に、顔を赤くさせたり青くさせたりと百面相をしていた彼女が口を開く。
「フェルトの手、大きいですね」
1度は振り払われた手を手に取って掌を合わせてみたり指を絡ませたりしてくる。
え、なに、急に、いや嬉しいんだけど、うん、でも…
悶々としている間に彼女は俺の手を自身の頬にすり寄せーーーーー。
理性なんてものがまだ残っていることに驚くほど、限界だった。
校舎を回り、夕方になって部屋に帰ってくる。
その間ずっと、彼女の掌の感触を思い出しては赤面して、それを繰り返すだけの不毛なことをしていた。
なんとなく振り払ったことについて誤魔化された気もするが、こうなってはどうでもなってくる。
じわじわと襲ってくる眠気に抗う気力もなく、自分の気持ちいい明日の朝のためにちょっとした細工を施してから眠りについた。
翌日の朝、微睡みの中彼女の足音がすぐ近くまで聞こえてきたことに、表情を緩ませたのは、きっと彼女は知らないはず。
あぁぁぁぁぁ、更新長らくすっぽかしてほんっとうにすみませんでした!!!!
スライディング土下座でもなんでもしたす!!本当にごめんなさい!!
言い訳をするとですね、学生なので課題がありまして、鬼の量でして、えっと、聞きたくないですね、とにかく本当にごめんなさい…。
明日からは戻せると思うのでよろしくお願いしますm(_ _)m
読んでくださりありがとうございますm(_ _)m