11・大きいです
どうしよう……、経験上、ここで適当なことを言っても引いてくれない人だ。
ならいっそ、本題を忘れるくらい話を逸らせば……、
「フェルトの手、大きいですね」
「え…?何、今そんな話じゃ
、」
「昔は同じくらいだったのに、今はこんなに…」
手のひらを合わせて見ても一目瞭然、節々もごつごつとしていて硬く、確かに昔と違う、と思い出を掘り起こす。
昔、どこに行くにもフェルトは私を連れていき、手を繋いで行動してきた。
手を繋いでるときに何かを運んでほしいと言われても、当たり前の様に手を離すことより仕事を放棄するほどだ。
指でなぞって、握ってみて、手の甲を撫で、両手使っても収まりきらないフェルトの大きな手を包んで、そして、
「ちょっ、待っ、ストップ、メル」
フェルトの焦った声を端で聞きながら、その手を私の頬に当てる。肌も綺麗でするすると滑らかだ。
「メル、メル……まぁいいや」
もうもはや諦めの境地に達したのか、赤らんだ頬を両手がとられて隠せないまま、それでもメルを愛しそうに眺めるフェルト。
フェルトの成長について物思いに更けていた私は、何も知らない。
赤い頬も、フェルトの気持ちも。何も。何も。
祈るのは、これからの世界を救う未来だけだ。