魔術理論
魔法の後、勝戦無く、勝戦の後、魔法有り
なぜ戦に勝ったのか尋ねられたら、戦神ポリピルピレンの加護によってピリペトルパロの潜在パラピエンがプライプ化した為にプライプリパロピリンの魔術がプーリオフを起こしたのが主な勝因です。と言いなさい。それを聞いてペリポパンに戦勝祈願をし始める奴が居たら、そいつとは距離を取ったほうが良い。そいつの頭は壊れている。
欲深い者には神霊のお告げを売りに行け。隠された真実の神霊マダイからのお告げ「あなたの上司は過去の犯罪で富を得ました。部下のあなたは彼を殺して、財を清めなければならない」あるいは「あの美女は無理矢理に婚姻させられた、あなたは持ち主を殺して美女に本当の愛を教えなければならない」など。銭でも女でも、欲する者には魔法・魔術を与える事だ。
旅の途中、宿に荷物を忘れてジョンが取りに戻った。馬が木に繋がれていたので、渋るジョンを馬に乗せて遣った。その木の下で草を食べて待っていると、馬の持ち主がやって来た。ジョンが戻って来た時にもめると思って、持ち主へ言った。
「あんたはここに居た馬の持ち主か?」
「そうだ」
「あんたの馬は、アバディン・ガスリンと云う名前だね?」
「は? 馬の名前は、サイレント・ドッグ号だが」
「いやいや、それは馬の時の名前。人間の時はアバディンだったな?」
「人間? どういう事だ?」
「ははぁ、さてはあんた、アレを只の馬だと思って買って飼っていたのだな。あの馬は八年前に闇の魔人ケラ・ケイオスの娘を盗み食いして、それを知ったケイオスのダークネス魔術で馬の姿に変えられた青年だったんだ」
「何、それは本当か」
「魔術は時間が経って薄れていたようで、俺の屁のにおいを嗅いだら解けたのさ。青年は行ってしまったよ。飼い主が来たら、今まで、ありがとうございました、と伝えてくれと言い残してな」
「貴様、もしや」
「いやー、あの魔人ケラ・ケイオスの魔力に打ち勝つとは、きっと貴方の馬術の腕が良かったからでしょうね、よっ、お見事、はっ、よいしょ」
「そ、そうか、ふふん」
それで女騎士が立ち去って、半日ほどしてジョンが戻って来たので、旅を続けた。どっかで馬を売って金に換えようと考えていたら、運悪く女騎士と鉢合わせした。女騎士が怒って言った。
「貴様っ、性懲りも無く、また娘を盗み食いしたのか」
女騎士は馬を売って新しい馬を買った。これが闇魔法だ。
「馬鹿に家督を譲ると食い潰される、そんな話は枚挙に暇が有りません。どうして、有能な者へ譲らないのでしょうか。獅子や狼や馬でさえ、そうします」
「河の神の怒り」
「神や魔法は敬って遠ざけると、言いませんでしたか」
「半自動継承、これは闘争的財散逸を避け、河の堤を突き固める為の原資となる。ワギナスの内乱期には堤防は荒れ放題だった。シュガー・リーが生贄の巫女に変装して河の神事を司っていた賊を討つ話があるだろ。誰も河に手入れしなくなっていた証拠だ。橋が落ちれば落ちたまま、賊が住み着きゃ住んだまま。纏まった銭が要る。だから王子の中で一番暗愚で銭を無駄遣いしない奴を担ぐのさ、手前を有能だと思っている奴は銭を乱費するもんだ」