表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

ワギナス興隆2

一度目の民衆蜂起では、二万人の内、七千人が殺され、八千人が捕らえられて奴隷に落とされた。逃げ散った五千人のほとんどは、貴族のツテを頼って田舎に逃げ延びた。この後に本格的な金の卵政策が打ち出され遠隔地から大勢の若者が都へ流入した。しかし夢見た華やかな都での生活など欠片も無く、大都会の現実を目の当たりにした若者たちは次第に鬱屈していった。二度目に蜂起した三万人の内、約一万人が金の卵だったと云う。


この二度目の蜂起に手を焼いたエロトピア王は、税率の低減と一部徳政令(特定貴族や商人からの借金だけ破棄させた。しかしこれは承諾無く王の一方的な通知であった為に貴族と民衆の間に軋轢が生じた)によって、蜂起した民衆を解散させた。徳政令とサクラによって住民と貴族の間に溝を作り出したハヤテ・カゼナギ・エロトピア王は手始めに、官吏に相互監視を徹底させ、王の目が届かない汚職を撲滅した。そうしておいて、住民の軽犯罪を厳重に取り締まった。取り締まりは貴族の子弟にも及び、身柄の売買で着実に勢力を削いでいった。


金の卵らの中には都へ来る以前から『センバコキ』の二つ名を知っていた者も多く、この勢力を取り込んで貴族への盾とする為に、ユーテロ大公の子孫を探し出して金の卵の束ねをさせた。ジョンザ・コンカー将軍に討たれた「ブーンブーン・ユーテロ大公」の孫に当たる青年「ブギー・ユーテロ」改め「ブギー・ファッカー」が、幼馴染で後に賢者と呼ばれる双剣使いの「シュガー・リー」と共に、第二次民衆蜂起に参加していた事は聖史にも詳しい。ブギーは金の卵予備衛兵隊の隊長に任命された時、再び名を改め「ブギー・ファッカー・ユーテロ」と名乗った。この事で王の目論見通り、貴族の中に、復旧派または大公派と呼ばれる一団が現れ、貴族間の意思統一は一層困難になる。


王都の住民は着実に弾圧され、資産家は相変わらず賄賂を要求され、貴族連中は自分の領地に帰って互いに足を引っ張り合い、牽制し合っていた。王の地位は安泰かに思われたその時、足元から反逆の狼煙があがった。


予備衛兵隊はその頃にはすっかりブギー・ファッカー・ユーテロの私兵と成っていた。双刀使いのシュガー・リーの手で整然と組織され、また没落したユーテロ家の旧臣らが隊に合流して、本格的な軍事訓練を始めていた。

金の卵たちは、幼少より農作業に従事して肉体は精悍、忍耐強く、出身は異なるといえども田舎出身者同士の仲間意識もあり、つまり唯一点、実戦経験の乏しさを除いて、質の高い兵になる素養を備えていた。そこへ旧大公国正規兵の軍事訓練をほどこされ、精兵ニ万が王の喉元に突然現れる事となった。この二万を中核に民兵四万が動員された。


第三の英雄、ブギー・ファッカー・ユーテロの起こした国を、ユーテロトピア王国と呼ぶ。両刀使いのシュガー・リーは、股肱の賢者と称された。王国軍は各地の復旧派貴族と連携して、抵抗を続ける貴族らを討伐した。王はリーを丞相へ任じ、国力回復に心を砕いたので、後に七英雄一の賢王と言われた。賢者リーは二十七歳の若さで病没する。その死を追う様に翌年ユーテロ王が崩御する。動乱鎮圧後、わずか三年の治世であった。勿論、建国の忠臣達は賢者の生前に多くが病気で死んでいる。ほとんどが病没した後で最後に賢者が病気になった。この時、王は将来自分まで病気になるとは夢にも思わなかっただろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ