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六姦三過

アッカーマン国の有鹿王はレイリー・グラームを丞相にしようと思っていた。それを漏れ聞いたトーマ・クサナギは、もう既にレイリー・グラームが丞相の地位に就いたかの様に尊大な振る舞いをしていると噂を立てた。怒った王はレイリー・グラームを追放した。

その後、トーマ・クサナギを丞相へ抜擢したが、民衆の評判は最悪だった。王が解任しようと考えた時、ブルーム・ダストと云う人が助言した。家臣の評判が悪いなら反対に王の声望は高まります。評判の良い家臣が現れた時こそ注意が必要です。有鹿王は言を入れ、トーマ・クサナギを留任させた。アッカーマン国は疲弊し、ブルーム・ダストはその功でワギナス教枢機院代理官に就いた。

有鹿王の後を継いだ青盃王がトーマ・クサナギを処刑した為、荒廃は止まった。




民は言い合った。有鹿王は阿呆な王だ、もっと賢い王がいればなあ。青盃王が即位すると、民は言い合った。青盃王は惰弱だ、もっと厳格な王がいればなあ。青盃王が病没し、天恵太后が実権を握ると、軽微な罪状でさえ尽く首を刎ねたので、民は恐れて、何も言い合わなくなった。




クローメ国の仮杭王はアッカーマン国を攻撃する口実を欲しがっていた。アッカーマンの哀王を招いて歓談し、その最中に無礼討ちにしようと考えて、参内を要請する使者を遣わした。この頃クローメと闘う程の戦力をアッカーマンは保有していなかった。臣マスビー・スプークスが言上して曰く、ボボ族へ金銀を与えましょう。さてその程度の援軍でクローメを防ぎきれるだろうか。天恵太后の反論に答えて言う。いえ、援軍ではありません、ボボには我が国を攻めさせます。それを理由に参内を無視してしまえば良いのです。マスビー・スプークスはボボ族へ派遣された。クローメの参内の使者らは太后によって投獄された。ボボがアッカーマン国を攻めると、仮杭王にもその報はもたらされ、援軍を口実に国境を越えようと画策したが、すぐにボボ族は囲いを解いて引き上げてしまった。




「ワギナス教の毒を絞り出す方法はありますか」

「締め付けて逃げたものは、ゆるめても戻って来ない。一度認められた信仰が忘れられる事はない。だが、中に金貨を塗り込んだ聖ワギナス像を作って市中へ撒く。頃合いに噂話が流れる。ふとした弾みで像を割ってしまった男が中の金貨を、神の恵みを、手に入れた噂話だ。それでニ、三度みなの目の前で誰かが像を割って恩恵を取り出して見せれば、我先に国中の像を割り始めるだろう」


以来アッカーマン国内のワギナス教は現世利益を謳う今の形へ変質した。銭クジの起源もこの事件が大元だと言われている。本国の神聖ワギナス教会からは邪宗として扱われている事はよく知られた話である。


問題の根が自国内の貧困であり、広まって日も浅い為に上手くいった。もしこれを相手国で行うなら手痛いしっぺ返しを食うだろう。また立場上、像の破壊を止めたいなら、報酬の供給元を攻める事、報酬を与える者を破産させる事。




どう数えても五姦ニ過しかない。トリス・ボルチアと、キリト・クホオインの話を含めて、六三であろうと思われる。即ち、個人的怨恨で同僚を嵌める、無能で欲深な家臣、通牒、不謹慎な民、敵対国、神秘主義を六つの権威毀損、臣下のするままに任せる王、短気短慮な王、酷刑を三つの王の誤り。これらが、アッカーマン国の荒廃した主な原因だと言える。




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