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誤字修正 村を通り過ぎる事に → 毎に
出発すると、流石に孫家の軍が蹴散らした後だからか、街道には賊も居らずスッキリしている。
単に、一時隠れて引き篭っているだけかもしらんが。
そのまま荊州突入、前回と同じく水鏡女学院の近辺を目指す。
「この辺りも、やはり寂れてきているようですな」
商隊が結構頻繁に行き来していた筈の街道、今ではすっかりガランとしている。
まあ、以前みたいに売るほどはなくても、荘園の上がりで自給できるくらいには生産力在るんだろうし、それ程大変じゃないかもしれんな。
近場の邑に皆を置いて、また刃鳴さんと二人で女学院を目指す。
辿り着いた女学院では、なにやらバタバタしている様子。
「これは、大変なときに、お邪魔してしまいましたかな?」
女学院の門前には、金持ちそうな連中の馬車が止まっていて、荷物を運び出していたりしている。
どうやら女学院の生徒でも、良家の子女ってのが、一時実家へと戻るようだ。
それと卒業生だろうか? 学院の様子を見に戻ってきたのか、水鏡先生を手伝っている姿も目に入る。
「暫く待っていようよ。 おじさま」
「ふむ」
暫く眺めていると、呼び合っている名前に見当がついて来る。
残念ながら、徐庶や単福は見つからず。
代わりに、調査で名前の上がって来ていた、カイ越・カイ良の二人が居た。
しかし、ロリだ!?
しかも、あわわとはわわのバッタモンみたいだ。
少なくとも、格好はパクリだ。
つか、あれって制服だったか?
なんか、毒抜けて夢見がちの諸葛亮と、口元がちょっと嫌な笑みを浮かべている鳳統的な感じ。
その癖、姉妹といえる程度には似てるので、微妙感が強い。
なんか、すごい残念だ……とりあえず、アレはちょっとパスかね。
とか言っている間に、なんとか出入りが落ち着いてきたようだ。
「水鏡先生、暫く振りでございます」
「これは、満腹殿」
「ご挨拶だけでもと伺ったのですが……。
随分と、お忙しい様子ですな」
「いえ、もう落ち着きました。 どうか、お気になさらず」
挨拶を交わし、暫く雑談する。
話を聞くと、やはり街道の要所に賊の邪魔が入って、中々商隊が来ないらしい。
あと、逸材級の連中は巣立った後の為、残った生徒たちは実家に引き上げさせるとのこと。
これは危険もさることながら、パトロン連中である名士からの寄付も減るからだろう云々。
しばらく、学院は休業だそうな。
「ところで満腹殿は、穀類を扱っておられると伺いました」
「はい、その通りでございますが?」
「少し用立てて頂けますでしょうか?」
「おや? この辺りでは麦米の生産も多く、流石に不足となる事は無いと思っておりましたが?」
他はともかく、食い物は問題ないんじゃないっけ?
「確かに、今は余裕があります。 しかし、この先行きは未だ霧の中。
今の内に備えておきたいのです」
「なるほど……それであれば、ご用意いたしましょう」
「感謝いたします」
「いえいえ、当たり前の商売でございます。
感謝頂くようなことではございません」
まあ、そんなに無理な値段には出来んな。
麦米1に対して金1.2くらいで計算しとくか。
「それに先生のお陰で、商売の種を見つけました。
先行きの為にと、この辺りの荘園を回ってみようかと思います。
先生に、お買い上げ頂きましたと聞けば、幾らかは買い上げ頂けるでしょうしな」
はっはっはと、軽く笑った。
それから学院を辞し、言ってみただけは寄ってみようということで、近隣の荘園を回ってみる。
で、モブっぽいチョイセレブな皆さんに「先行き不透明だし、ちょっと米とか買っておかない?」と、持ち掛けてみた所。
「ほほほ、一つ相談なのだが、買い取りは無理かの?」
なんて言葉が返ってきた。
思った以上に豊作だったりしたのか、余程に貯めこんでいるのか?
「可能ですが、宜しいのですかな?」
「構わぬ、構わぬ。 これでも余裕を見ておるのだ」
「それでは、買い取らせて頂きましょう」
値段としては、麦米1に対して金0.8程度にしておいた。
で、他の所では売れるだろうと思っていたのだが。
他の連中、揃いも揃って「水鏡殿が購入しているというのなら、うちの余裕は引き取って貰っても構わんな。 やはり、麦米より金よ」とか言い出して、最終的に来た時より麦米増えてた……どういうことだ?
今更、どうこう言ってもしょうがないにしろ、欲の皮の突っ張った奴ばっかしだったな。
やはり買戻しが云々とか言われる前に、この土地を発つことにした。
また暫くすれば、此処に来る事も在るだろうし、其処までの事にはならないだろう。
それから幾つかの城下を渡り歩く。
順調に在庫がはけていく。
まだ余裕のある所が多いのか、流石に倍値では売れないが。
そして、蔡瑁さんの治めている城下へ。
ここでは、かなりの量を収める事になった。
残りの在庫は三割というところか。
「おい、この一行の責任者は誰だ!!」
夕方、モブ兵士さんが陣幕にやって来て、大声で呼ばわった。
おい!! とか言われて、得物を手にしようとする人が居るので、ちょっと危ないですよ。
さっさと出て行く事にしよう。
待たせた所で、ろくな事にはならんでしょ。
「はい、私でございます」
表に出て、兵士さんに一礼。
「金満腹に相違ないか?」
「はい、相違ございません」
名指しかよ。 何事だ?
「ならば翌朝、城へ出頭せよ。 太守殿が、お会いになる」
お、面会が通ったのか。
「畏まりました」
翌朝、護衛に関羽さんと刃鳴さんを引き連れて、城の警備の兵士さんに声を掛ける。
「金満腹と申します。 城主様のお召により、参上いたしました」
「うむ、暫し待て」
案内の兵士がやって来て、謁見の間に通された。
そして、蔡瑁さんと面会がかなったのだが……オッサンかよ!!
確かに能力は初期白蓮さんの若干落ち程度で、バランス型のそこそこ優秀といえるものだったが、オッサンじゃあなあ。
しかも太守とか、賊の親分とかみたいに、叩きのめして脅せばいいってもんでもないからなぁ。
面倒くさいし、前回の黄祖さんといい、微妙に嫌なフラグみたいだ。
普通に有り難いお言葉だけを頂いて、去ることにした。
「なにやら、無駄足を踏んでいるような気がしますなぁ」
今回、広い範囲にフラグというか、ちょっかいかけてる感じで、どれか一つでも、上手くいくのか不安になってきた。
全部空振りとかだと、泣けるんだが。
嫌な予感を感じつつ、城下を後にした。
次で、荊州での目的地は最後となる。
黄忠さんのとこである。
辿り着くと、門前でこの間のプレイヤーに呼び止められた。
ずっと、見守り続けているらしい。
「よー、忙しそうっすね」
「ぼちぼちですな。
様子はいかがですかな?」
「うーん、そうっすね。 ぼちぼちっすね」
なんじゃそりゃ。
話を聞くと、数人のプレイヤーが、此処を通過しているそうだが。
「商売はどうでしょうかな」
ここで、在庫履けないと、涼州へ拠ることになるんだけどな。
在庫は残り二割弱……ちょっと無理目か?
城と、城下の商店に話を持って行く。
城では、キッチリと備蓄しているとのこと。
商店では、そこそこ売れた。
在庫は一割五分……。
イベントは特になし、璃々ちゃんも見かけず、面会も無理だった。
荊州を出て、漢中へ向かう。
道中で官軍に出会ったが、なんというかぱっとしない。
まだ、危機感が足りてないのか、士気も低く兵数も少ない。
これは、思わぬ数と賊の士気に負けるフラグっぽいな。
漢中に到着すると、ゴッドヴェイドーの受付に、お布施をする。
特にイベントはなく、涼州へ行くかどうか暫し悩む。
涼州の様子を聞くと、結構大変らしい。
どれほどの値がつくかは読めないが、確実に必要とされるとのこと。
涼州へと、寄り道することになる。
村を通り過ぎる毎に、捨て値で穀類を投げ売りしていく。
それでも儲けが出てるのが、ちょっと恐ろしい。
暫くそんな感じで進むと、何やら襲われている村が。
それもまさかの官軍に。
脱走兵か何かか五百程の数だが、ただの村程度で逆らえるような相手でもない。
「皆さん、行きますよ!!」
そして追い抜かれる……バトルジャンキー含む十人程が襲いかかって、あっという間に近場の敵を叩きのめす。
更に追いついた連中が、残りを囲んだかと思ったら、終わっていた。
なんとも呆気無い。
方が付いた後、村の様子を見るに、ほぼ半数が死ぬか重症という酷い事になっていた。
突発のイベントにしては酷い。
脱走兵らしき連中の使っていた、鎧に武器に馬だとかを売り飛ばすとして、ある程度の金にはなるだろうが、この村を立て直すのは難しかろう。
「お助け頂き、ありがとうございます」
村長さんらしい人に頭を下げられた。
「いえ、我々が遅かったばかりに」
「とんでもございません。 半数助かっただけでも天佑と言えましょう。
それよりも、商人の方とお見受け致します」
「はい、商売を生業としておりますが」
「すみませぬが、食料を譲っては頂けませぬでしょうか」
それは、問題ないですが。
「この連中の持ち物との交換をお願いしたいのですが」
「いえ、ここで出会ったのも、何かの縁でしょう。
必要な量は、さし上げましょう。
物を売り払った金は、この先で必要になるでしょうから、お持ち下さい」
どうせ、大した量じゃないしなー。
「ありがとうございます」
ボタボタ涙を流しながら、村長さんは頭を下げていた。
それから荷物をまとめ、村人を近場の城下まで送ることにした。
どうやら、馬家の勢力下の様子だが、あまりパッとしない。
そこへ、結構な人数が向かっているのを知ったのか、騎馬の一軍が誰何のためにやって来た。
「貴様ら、何者だ? この先へ向かうのであれば、用件を聞かせてもらおう」
「私、金満腹と申す商人でございます。
この者達は、我が一党と襲われておった村人達でございます」
斯く斯く然々と、官軍崩れの連中に襲われていたこと、此方で叩きのめしたということ、生き残りを受け入れて貰いたいということ、受け入れて貰えるなら、在庫の麦米を差し上げる用意が在ることなどを伝えた。
一軍からは伝令が飛び出し、城下に向かって駆け抜けていく。
それから一時間ほど待たされて、受け入れ諸々の話を応諾するとの返事が来た。
村人を城下に預け、麦米の受け渡しを終えると、村長さん以下に拝まれてしまった。
このイベントは成功なのかどうか?
良く判らないまま、出発しようとしていると、村人たちの中から小柄な影が飛び出してきた。
「どうか、私を連れて行って下さい」
見ると小柄というより、普通に子供だった。
一体何が何やら? イベントの続きか?
「あなたは?」
「伯約、姜伯約と申します。 どうか、私をお連れ下さい!!」
えー、姜維って、まだ生まれてない時代だろによ。
さすが恋姫、何でもありだな。
とはいえ、蜀系軍師のロリパターンではない様子だが、まだ子供過ぎてよく判らん。
眉毛とか目元口元が凛々しい感じで、セリフを噛まないので、普通に成長するのかとも思うが……で、ステータスはと。
ん、普通に高いな。
まあ、成長後の話なんだろうけど。
初期白蓮さんを、更に戦闘向けにシフトしたような感じで、統率、知力を上げて政治下げてるってとこか?
それでも、全能力七十を超えてるので、普通に優秀だな。
っていうか、こんなイベントでぽっと湧いて出るなよ!!
何やってるんすか、諸葛亮の後継者が!!
「駄目でしょうか?」
ションボリされてると罪悪感ががが。
「もし、私に付いて来るとして、私は悪人ですよ」
「構いません」
「あなたに酷いことをやらせて、酷いことをしますよ」
「大丈夫です」
どういう意味で大丈夫なのか、聞いてみたい。
「母は賊共に殺されてしまいましたが、その敵は討っていただけました。
そして、村の方々も助けていただき、そのうえに先の事まで。
もう思い残すこと、心残りも有りません。
どうか、この身をお好きに使い捨ててくだい」
そう言って、頭を下げる姜維さん? ちゃん?
まあ、損はしないというか、スペック的に捨てる手はないんだけど、狙い目が上手く行かずに、ぽっとわけわからない所でゲットに成るのが、いまいち非常に納得できないわあ。
「判りました、貴女の覚悟、お預かりいたしましょう」
「私の真名は「麒麟」といいます。 どうか、お受け取り下さい!!」
麒麟とか、姜維とか、絶対にどっかの投稿武将だよな。
中二過ぎる。
「判りました、麒麟。 貴女の真名、お預かりしましょう」
で、指輪渡す。
後々に、成長させるけど、この周回初ゲットが幼女とはなぁ……。
さて、益州行くか。