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「く、くくく……くくくくく……はぁっははは、ふぁはははははは!!」

「てい、落ち着いてください、ご主人様」


 ちょっと困った様子で、斜め四十五度のチョップを入れてくる関羽さん。

 俺は故障したテレビじゃないんだが。

 まあ、麦米の値段の安さに狂喜しかけたのは悪かったが。

 いやほんとに安いよ、そりゃ笑いも止まらんわ。

 基本的にポイントショップで、金が1に対して麦米が1買えるバランスとして、荊州辺りで安いタイミングで買うと麦米の価値が六分か七分、つまり金1で麦米が五割増しくらいの量で買える。

 これが此処だと、麦米の価値が三分くらいなので、金が1に対して麦米が三倍近い量を買える。

 これを袁術さんとこで売るとか考えたら、金1が麦米3に化けて、麦米を倍を割るくらいで金に変わるので、最終的に金が六倍になる。

 錬金術なんてチャチなもんじゃないぜ。

 って、此処で高笑いしてても始まらんわな。


「それでは、そろそろ行きますかな」

「はい」


 なにやら、そっと腕に手をまわしてくる関羽さん。

 えらく甘えてきますね。


「愛紗殿?」

「あの、近いうちに、お情けをいただければと」


 真っ赤になって、うつ向きながら、此方の腕を胸元に抱きかかえる関羽さん。

 凄い破壊力です。

 そういや護衛なんかで近くには居たものの、関羽さんは仕事な用事以外で気軽に呼びにくい雰囲気なんで、手はあんまり出してなかったか。


「では、今日は夜まで傍に居てくれますかな?」

「はい」


 夜になって、何気に劉備さんが乱入してきたり、二人揃ってハイライト消えた目で「捨てないでください」的に縋り付いてきた時に、何もない筈の首筋になにか冷たい感触を感じたりしたのは気のせいだと思っておこう。


 開けて翌日、余剰のポイントを気持ち残す程度に買い占めたが、それでも麦米は四分から五分に届かない値段にしか上がってなかった。

 正直売る処考えないと、売値が下がりそうなくらい買い込んだんだが。

 とはいえ三倍の量を買える筈が、二倍強に堕ちるわけで、何気にプレイヤーらしき連中の呻き声が聞こえる。

 だが、其処は早い者勝ちというか、マンパワーの差ということで諦めて貰おう。

 歴戦ゲーみたいに、窓口一つで一気に購入できないからな。

 あちこちに走る人出の差が決定的な購入力の差になるわけだ。


 それからは、少し南蛮に興味をひかれたが、長江を下って益州を後にする。

 途中、厳顔さんの守る城下に立ち寄ったが、イベントもなく面会も出来ず。

 麦米買いまくったくらいでは、無理らしいな。

 一応、酒を送っておいたので、次回立ち寄った際に、リアクションがあればいいと思う。


「さて、一旦揚州まで下った後、兗州に寄るか真っ直ぐ荊州にトンボ返りとするか……」


 船に揺られつつ、今後のプランを考えていた。

 流石に、河北の袁紹さんのところまで行く元気はない。

 というか、あそこは食いもん余ってるくらいだろうしな。

 曹操さんの所に持って行くくらいか。

 ただ、あんまし酷な値段で売ってたら、打首にされそうで怖いしな。

 とりあえず、本拠に戻ってから考えよう。


 久々に孫家の城下に辿り着いた。

 道中、例によって賊を蹴り飛ばして帰ってきたが、順調に世が乱れている様子。

 つか、孫家は街道警備を、もう少し頑張って欲しいところであります。

 本拠の倉庫に物資投げ込んで補充。

 それなりの量を置いといた筈が、すっかり金に変わっていた。

 戦時特需ってやつですかね。

 で、何処から聞きつけたか、袁術さんとこの息のかかった商人が早速にじり寄ってきたんで、麦米と金の投げつけ合い。

 未だ帰ってきてる連中の数が少ないのか、売値は倍値をちょっと超えた。

 とはいえ、全在庫の三割位の量で向こうの資金が尽きたので、一旦商売は終わり。

 またすぐに来るからなー、覚えてやがれ!! と、セリフを投げつけていった連中は、ツンデレなのかしらん。


 その後、連中と入れ替わりに、袁譚さんこと言葉さんから「こんなのきてますのよ」と、孫家からの召喚状を渡された。

 激しく面倒くさい。

 しかし、何かのイベントだったらな~とか、欲が絡んでついつい吸い込まれてしまう俺は悪くない。

 翌日、公孫賛x2、関羽、張飛x2、趙雲x2、馬騰、華雄、樊稠、蹋頓、刃鳴さんを護衛にして、城へと向かう。

 正直、過剰戦力ですが、油断はしないのだ。


 城へ辿り着き、門の前に立ってる守衛さんに取次を願う。


「失礼いたします。 此方へ呼び出されましたが、何方へ向かえば宜しいですかな?」


 もし、知らんとか言われたら、切れるよ。


「はっ、伺っております。 暫しお待ちを」


 一人が門の内に走り込んで行き、ほんの数分で誰かが帰ってきた。


「此方へ、ご案内いたします」


 そう言って先導する兵士さんの後をゾロゾロと着いて行く。

 暫く歩いて、庭の先にある東屋に誰かの影。

 何やら酒盛りしているみたいで、嫌な予感がする。


「では、失礼致します」

「ご苦労」


 たったか去っていく兵士さんを見送りつつ、東屋にいる人を相手に、どうしたものかと暫し悩む。


「お呼びにより参上いたしました。 金満腹でございます」


 まあ、無難に頭を下げておくことにした。


「あー、孫文台だ。 堅苦しいのは抜きにしないか?」


 あー、えー、なんで孫堅さんが居るんだ?

 イレギュラーが二回連続とか、死亡フラグにしか見えね―。

 たしかに、この周回の孫家が、袁術さんとこに従属してる風な感じはなかったけども。


「……どういったご用向きか、お聞きしても?」

「むう、仕方ないか。

 一つは詫びと、もう一つには褒賞だな」


 むう、今更感がすげーな。


「まあ、ケジメというわけだ。

 すれ違いがあったとはいえ、すまなかった」

「いえ、文台殿に頭をさげられては」

「感謝する。

 そしてこの城下に対して、行ってくれた事に対する褒賞だが。

 何が欲しい?」


 また、難しいことを……。

 下手なことを言って首チョンパとかじゃないだろうな。


「遠慮はなしだぞ」


 ふむ。

 ここで、真名とか貰えるか?

 主人公居なけりゃ、なんとかなりそうな気もするんだが、不安要素があるな。

 真名プラスアルファの条件が必要になりそうだ。

 できれば、黄蓋さん当たりを狙いたいのだが。

 とりあえず、孫堅さんに取っ掛かりを作っておこうか。


「では、孫家との友誼というのも、今更な気もしますので。

 文台殿との友誼を頂ければと」

「ほう、私と個人的な友誼と? 孫家としての融通は出来んぞ?」

「無理は言いません。 其処は商人としての腕ですので」

「面白いな。 では、お主への褒賞は、我が真名を預けるということにしよう。

 我が真名は水蓮。

 これからも宜しく頼もう」

「は、水蓮様。 私からは此方を、お預けいたします」


 一応、指輪を渡しておく。

 受け取っては貰ったが、指には嵌めて貰えない模様。

 やっぱ、未だ何か足らんか。

 試しに酒を渡してみたが、好感度的な物の感触ではない感じがする。

 その場を辞して、店に戻った。


 店に戻ると、また別口のアポイントが入っていた。

 兵糧の購入についての話ということだが、陸家と周家の名前で入ってる所を見ると、孫家向けの兵糧の購入話だろうな。


「問題はないでしょう。 お受けしていただけますかな?」


 袁熙さんこと、音羽さんへと返事をお願いしておく。


「畏まりましたわ」


 それから数日して、先ずは陸家の担当者と顔合わせすることになったが。


「伯言殿ですか」


 陸遜さん登場。

 まあ、そうなるわな。


「まーんーぷーくーさーん。 なんで袁術さんの処に売って、うちに売ってくれないんですか―!!」

「これ、穏よ。 いきなり何を言い出すのか。

 少しは反省したのではないのか?」

「祭様ー痛いですー。 なんで、ついて来てるんですか―」


 ぺしっと陸遜さんの頭を叩く、何故か同席している黄蓋さん。


「また何やら。 お主が、やらかしそうな気がしたのでな」

「ぶー」


 またひっぱたかれた。


「それにじゃ、わしも少々興味があったのでな。

 黄公覆、真名は祭と云う」

「え、真名を預けちゃうんですかー?」


 此方も驚いてるよ。 何かの罠ですか?


「なんじゃ? 堅殿も真名を預けたと聞いておる。

 わしは、それだけの事を孫呉の土地に、して貰ったと思っているということじゃ」

「それは、身に余る光栄ですが」

「判りました―。 私も預けますよう。

 陸伯言、真名は穏といいますぅー」


 どう考えても納得してない投げやりな調子だぞ。


「これはこれは、有り難くお預かりいたします。

 此方からはこれを」


 指輪を渡す。 やはり嵌めては貰えない。


「そうですな、お近づきの印に、祭殿には此方を。

 穏殿にはこれなど如何ですかな?」


 忠誠100UPの銘酒と、能力アップ版の孟徳新書を購入。

 手渡してみる。


「おお、これは中々に美味そうな」

「こ、これはーー!?」


 ふむ、気に入っては貰えてるようだが、感触が何やら手応えに足らん。

 今回はこのへんで締めておくか。

 とりあえず兵糧の方も、値段は下げたが量はそれなりでとどめておいた。

 陸遜さんはちょっと不満気だったが、黄蓋さんが未だこれからじゃろうと、連れ帰っていった。


 翌日、今度は周家の担当者ということで、周瑜さんが来た。

 此方には孫策さんが付いて来てたんだが、終始此方を見てニヤニヤしてただけ。

 商売の遣り取りは周瑜さんが淡々と終わらせた。

 何気に陸遜さんの買い取り量より、かなり多めの売買だった。

 会談当初に、あれこれが無いかと、問い合わせられ「有ります」「買おう」「無いです」「そうか残念、次にいこうか」と、サクサク決まっていく遣り取りの勢いに乗せられて、ついつい想定外の量を売ってしまった。

 値段的には問題ないのだが、思いがけず交渉事の恐ろしさを味わった。

 真名のやりとり等は特に無し。

 こんな感じじゃなければ、二人の胸元チラ見してニヤニヤできたんだろうに。


 大きな取引が終わった後、儲け分のポイントを使って、気分で細かい仕入れを済ませ、出発の準備をする。

 酒場で情報を集めていると、袁術勢力、孫権勢力ともに、大掛かりな賊討伐を行うらしい。

 未だ、中央からの黄巾追討令は出ていないが、賊徒の規模は数千から万となってきている為、そう遠くない時期だろうというのが、大方の見方のようである。


「それでは参りますかな」


 孫家軍が討伐行に出発したのと前後して、うちの連中も城下を後にした。

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