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 街道を愛馬に跨りポクポクと。


「良い陽気ですが、砂埃が無粋ですな」


 遠くに見える砂塵の元は、賊相手に無双している馬騰さんと華雄さん。

 正直、かろうじて三桁って数の相手には、モ武将だけでも四十人とかオーバーキルにも程がある。

 そんな戦いを、こうしてノンビリ眺めているのは、ちょっとした事を考えているわけで。


「主殿、連中の一部が逃げ出しましたぞ!!」


 趙雲さんが目敏く見つけたのは、少し離れた場所に居た伏兵だった連中だろう。

 散々な事になっている本隊の様子をみて、そそくさと逃げ出したらしい。

 なんという情け無用。

 因みに一緒に来ているのは、趙雲さんの一号二号と張飛さんの一号二号に刃鳴さん。


「馬騰さんの方は決着がついたようですな」


 散々ボコられた挙句に捕らえられ、数珠繋ぎに引き立てられている賊連中の本隊。

 華雄さんが勝利に吠えてて、馬騰さんが此方に気づいて手を振ってくれている。

 あちらは、お任せしましょうか。


「さてさて、連中の寝ぐらは何処ですかな」


 馬首を返して逃げ出した連中の後を追う。

 暫く追い続けると、今は使われていない旧街道からも外れた、元宿場とでも云うような場所へ辿り着いた。

 幾つかの使われているらしい建物は、簡易な柵をめぐらされ、ちょっとした砦になっている。

 そこへ、這々の体で逃げ延びた連中を迎えた数人が、いったい何事だと騒いでいる。


「どうやら、間違いなさそうですな。

 刃鳴殿、どうしますかな?」


 それほどの人数は居ないだろうし、此方の戦力で問題はないだろうが。


「おじさま、策も何も、ただの力押しが一番」


 やっぱし、さいですか。


「それでは、皆さん……懲らしめてやりなさい!!」

「やっほーなのだ!!」

「成敗!!」


 趙雲さん、成敗しちゃ駄目ですよ。


 およそ数分の成敗タイムの後、貯めこんでるお宝の在処を聞き出して没収。

 ショボイ連中の割に結構な額を溜め込んでいた。


「ふっふっふ、雑魚の割になかなか」

「おじさま、悪い顔になってるよ」

「おっと」


 とにかく、これは有効に使わせて貰おう。

 あと、叩きのめした連中は、ただ殺すのも何なので、丘力居さんの再就職センターへ連れて行く事にする。


「さあ、帰りますぞ」


 で、帰り着いたら、田豊さんと沮授さんが、白蓮さんと樊稠さんの他社護衛組と、頭を寄せて何やら相談している。


「荊州向きの商人が積んでいた荷物はこれとこれ。

 話によると、ここ暫く品薄だそうで、幾らか値を積み上げても売れるそうだ」

「なるほど、では、その返しに益州へ向かう商人が積んでいた品の内、これとこれを買い入れるという事ですね」


 何をやってるんだろう? あ、自社護衛組の白蓮さんと蹋頓さんに、袁三姉妹まで寄ってきた。


「あら、ご主人様。 面白いことになってますのよ」


 袁譚さんが、そっと耳打ちしてくれる。


「どういうことですかな?」

「他の商人を護衛している時に、ちょろっと積み荷を覗いて貰いましたの」


 それはどうなんだ?


「それで、商人の握っている売れ筋を読む材料にしますのよ」


 えーと、商人が握っている売れ筋のネタをパクるって?

 それは、まさか。


「まさか……後追いで?」

「はい、二番煎じを大掛かりにやりますの」


 うわ、ひでぇ。

 そういうやり方なら、一番最初に持ち込んだとこ程に高値で売れないにしろ、完全な外れは少ない。

 要はローリスク・ローリターンだが、その辺の事を丸飲みで規模を大きくすれば、儲けもそれなりになるな。

 倫理的にどうなのかって気にはなるが、そこは弱肉強食諸行無常ということにして、心の棚に……。

 まあ、儲けは増えたということで……。


 最後に、雑多な賊連中を一纏めにしてる丘力居さんなんだが、なんやかやで五百程の手勢になっている。


「こちらはどんな具合ですかな?」

「あら、旦那様」


 長い黒髪を揺らしながら、何処と無く食えない感じの雰囲気を纏った、お姉さんが此方を振り向く。


「思ったよりも、雑然とした感じは有りませんな」

「それなりに食わせて小奇麗にしましたわ。

 私の配下が余り見苦しいのは我慢できません。

 後は、手の開いてる連中を借りて鍛えましたから、使えないということはないでしょうね」


 なるほど、場合によっては袁家の辺りを荒らさせて、そのまま使い潰すとか考えてたんだが。


「なかなか良くやってくれているようですな」


 長い黒髪に手を伸ばし、サラリと流れる感触を楽しむ。


「旦那様、貴方の駒を見くびらないで欲しいわね」


 するりと、重さを感じない細身の体が、蛇のようにしなだれかかってきた。

 其れを両手で受け止め、力を込めて抱く。


「あん」


 力を入れ過ぎたか、触れてきた時のようにスルリと逃げられた。


「会話に入りづらいよな」

「ですな」

「ヤンスね……」

「でふー」


 なにやらオッサン組の生暖かい視線を受けてしまった。

 ともかく、この連中には、華雄さん達が狩り尽くした辺りの警邏と、近辺の荒れてる村の補修やら灌漑やらの屯田兵モドキにでもなって貰おう。

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