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街の空き家を購入した。
元商家らしく、表が一寸した店で、奥が母屋になっている。
庭には蔵があり、厩舎もあり、裏には水路があって船着場もある。
正直、高い買い物に成るかと思ったが、世相の所為か、プレイヤーに対してのボーナスか、吃驚する程に安かった。
これなら、商人プレイも面白いかもしれない。
まあ、初期の拠点には無駄にデカイし、最初の投資にしては大きい買い物だが。
とはいえ、二百人超のメンバーを考えるとこれでも手狭だ。
「さて、まずは真面目に始めても良いのですがな」
「人手は多いんだし、色々手を出しても大丈夫じゃないか?」
拠点が決まったからか、白蓮さんがやって来た。
地道に商売の規模を広げていくのもいいが、折角のフリーハンドだ、思いつく事を色々やってみるのもいいか。
「そうですな、白蓮殿には、色々と手を借りることになりましょうな」
「ああ、なんでも言ってくれ。 主殿!!」
何時の間にか、二号さんも、後ろでしきりに頷いている。
お、そういえば、珍しく初期衣装ですね。
女秘書ルックも色っぽいんですが、此方は此方で凛々しいです。
「ふむふむ、凛々しい女性を手の内においているというのは、やはり素晴らしいものですな」
腰に手をやり、細くも引き締まったクビレを撫で上げる。
「こら」
二号さんにも手を伸ばし、此方はキュッと上がった尻のラインに手を沿わせる。
「おい」
二人共に眉尻を上げ、頬を朱に染めながら、しつこい手をつねりあげてきた。
「あいたた、これは失礼。
つい誘われるようにですな」
「それはいいから、何をすればいいんだ!!」
「そうですな」
ちょっと考える。
二号さんが、ちょっとした情報を読み上げてくれる。
「まず、この土地の商業規模は、一言で言って酷いな。
一勢力の基盤地であり、水運を使うに容易いというのに、酷いとしか言いようがない」
「それはまた」
「陸家・周家等、大きな力を持っている連中が、幾らか頑張っているみたいだけどな。
大きな流れを中央への地縁から荊州へ、金回りの差で汝南袁家に握られているな」
あー、前周で俺がやってたことね。
割りと孫家って経済的には押さえ込みやすいような気がする。
「それに、賊が多いせいで、水運の足枷になっているな」
確かに初期状態では賊が多すぎて、ある程度勢力が力振るって安全圏作らないと、どうにもならんのよね。
「ふむ、仕事のあてが見えてきましたな。
先ずは、主要な商街道の警ら・護衛。
次いで、自らの商い。
最後に賊退治と取り込みですかな」
「そんなとこかな?」
さて、そうなると。
「碧どのに華雄どのを」
NPCのモブさんに呼んでもらう。
「ん、満腹。 私を呼んだか?」
「来たわよ、あなた」
なんとなく、対照的な二人が姿を現した。
片やスレンダーで、張り詰めたような緊張感を漂わせる豪斧の武人。
片や柔らかくも、しなやかな覇気を身に纏う閃槍の猛将。
そんな二人がスリットから、肌色チラチラさせてるのも、なかなか好いですな。
「早速ですが、お二人には近辺の賊を叩きのめして頂きたい。
遠慮は無用です。
我々の名を売って頂きたいのです。
いわば、我らが先鋒、我らが顔ですな」
「うふふ」
「承知」
さて、次は。
「樊稠どの、蹋頓どの」
再度、NPCのモブさんに呼んでもらう。
「おう」
「呼んだか、満腹」
短く参上の意を告げる蹋頓さんと、若干華雄さんにキャラの被る樊稠さん。
「白蓮一号どのと樊稠どのには、街道の警らと商人達の護衛を願います。
此方は地味ですが、名よりも実利で評価する連中に、我らを認めさせるのが目的ですな。
あとは、まあ新規の連中が活性すれば儲けものというところでしょうか」
「了解だ、満腹」
「任せて貰おう、主殿」
「白蓮二号どのと蹋頓どのには、うちで編成する商隊を護衛して頂きます。
うちの活動の根幹となりますので、宜しくお願いいたします」
「わ、判ってるぞ。 主殿」
「この鉄杖にかけて」
さて、外に出る人間はこれで良いか。
「次に、袁三姉妹を」
「既に来てますのよ」「商売にかけて、仲間はずれは無しよ!!」「おまかせ下さい」
「それでは、お願いします。
まず、袁譚どのは主に外部との折衝を含めた商会のまとめ役を。
袁煕どのには、商隊の編成を含めた人事を。
袁尚どのには、細かい売買を含めた実務をお願いします」
「畏まりましたわ」「おまかせですわ!!」「おまかせを」
なんか、キャラがどうだったか、自信がないな。
「あとは、李氏・楊氏どのと、桃香どの。 月どのと結どの」
「「御前に」」
「ご主人様、おまたせ」
「「ご主人様。ただ今参りました」まいた、へぅ」
あ、董旻さんが噛んだ。
「まず、李氏・陽氏のお二人には、近くに茶屋を買い取るので、そちらで噂などの収集を。
桃香殿には、働けない孤児や病人達に慰撫を。
まあ、名前売りの一環ではありますが、お願いしたします。
また、月どのと結どのには、近隣の実力者に対する取り込みをお願いします」
「「畏まりました」」
「「がんばります」」
静かに了承する二人組の方と違い、何やら考えこんでる劉備さん。
「孫家の地盤で、ご主人様の名を売ればいいんだよね。
孫家は叩くの? それとも無視するの?」
「どういうことですかな?」
「えーと、単に名声を得るだけなのか、孫家に対して嫌がらせとするのかかな?」
むう、なんという、黒劉備。
劉備さんの人徳で嫌がらせに徹しられたら、国は無理でも城くらい傾きそうですな。
「とりあえずは、名を売るだけでよいでしょう。
孫家に関わるかどうかは、もう少し先の話です」
「了解だよ、ご主人様」
ああ、そこの董卓さんと董旻さん、黒いオーラにビビって泣かないの。
さて、残る手札はと。
残りの方々も呼んで貰い、凡そ揃ったようですな。
「軍師組の方々についてはですな。
田豊どのと沮授どのには、情報を集めつつ、人材の登用を試して頂きたい。
主に荊州が狙い目に為るかと思われますが。
次いで、詠どのと永どのには、近隣勢力の中で、プレイヤーらしい連中の分析・切り分けを願います。
最後に刃鳴どのには、私に付いていただき、都度都度の助言を願います」
一回りの指示を出す。
「「畏まりました。 旦那様」」
「やってやるわよ。 満腹」
「任せないさいな。 満腹」
「おじさまの為なら頑張るよ」
「ああ、実働としては、近場の場合は愛紗どの。
足を伸ばす戦力としては、星どの達にお願い致します」
「了解しました」
「華蝶か「それは禁止ですな」なんと!?」
「酒とメンマは支給しますので」
「お任せ願おう!!」
「鈴々達は何をすればいいのだ?」
張飛さん達が、何時の間にか、私の膝上でニャンコしている。
先ほどまでしがみついていた刃鳴さんが押しのけられて、ちょっと涙目になっている。
「鈴々どの達には、私のお手伝いを願います」
「わかったのだ」「任せるのだ」
「最後に、丘力居どのと、ヤス・キン・チョイ・チャンには、賊の取り込みをお願いしますかな。
碧どのや華雄どのに恐れをなして離散する連中を、迷惑にならぬよう一纏めにしておきたいのです。
まあ、どうにもならん連中は、袁家に向けて、けしかけてやって頂いても構いませんが」
「旦那様はあくどいわね」
「「「「……」」」」
そういう謀略系は得意でしょう、あなた。
オッサン連中も黙らない。
「では、宜しくお願いいたします」
一同が解散し、各々が行動を始めた。