63
62をいじったので、こちらも若干修正。
現在、軍を率いて進行中……。
「完全に梯子を外されたようですな」
なんとか傷が治った矢先、呼び出され軍を預けられ、どうにも貧乏籤な役目を押し付けられた。
曰く、河向こうに橋頭堡になる陣の建設と。
禰衡さん発案の余りに無茶な策に、流石に黄祖さんは頷かんだろうと思ってたんだが。
アッサリ了承されてしまった。
まさかの根回し済みだったのか?
禰衡さんよ、あんたはコミュ障じゃなかったんかい!!
正直、未だにどうしてこうなったのか納得いかん。
どう考えても、うちの得に成る気がしない。
大体、他の陽動も援護もなく、ただ二千の歩兵と千の食い詰め工人で、敵地に入り込んでの任務。
今のところ、両軍に大きな接触は起きていないにしろ、捨て駒という素敵な言葉が頭に浮かぶ。
何が拙かったのやら?
禰衡さんに嫌われているのは今更に過ぎるので、判らんでもないが、黄祖さんにポイされる心当りがない。
少なくとも、先だっての争いじゃ、功労者だろうし?
もしかして、禰衡さん以外からの圧力か? 例えば袁家とか?
まあ、同じく厄介払いか、副将に甘寧さんと水軍衆五百を付けて貰えたのが、辛うじてのプラス要因だ。
もう、リアルでもないのに、他人の思惑に乗せられるのが、ここ迄面倒とは……。
「興覇殿!! 敵影は!!」
「今の所、姿はない!!」
「今のうちですな。 総員、河を渡るぞ!!」
おー、という声に併せ、ワラワラと筏に取り付いては河へ進む兵達。
正直、甘寧さんが居なかったら、まともに偵察とか出来なかったと思う。
例えば渡河中に発見されたら、上流から丸太流されたり、斬り込まれたり、下手すりゃ火矢でも射掛けられるのが関の山だろう。
「なんとか一段落ですな」
渡河終了後、陣を整え夜を迎える。
今回、配下キャラクターは、この軍勢には連れてきていない。
付近には伏せている筈だが、どう考えても袁家の目が、しかもプレイヤーかもしれない連中が、付き纏っているかも知れない状況で、あまり大騒ぎはしたくない。
下手したらチーターか、良くて課金廃人呼ばわりで、晒しスレに降臨だろう。
幸いと言っていいのか、この周回では、まともにゲット対象が居ないので、最悪死んでも諦めが付く。
態々痛い思いはしたくはないが、死亡退場は今の内に体験しておいてもいいだろう。
「興覇殿、お疲れ様でございましたな」
「いや、それよリも、どう思う? 満福」
甘寧さんが辺りを、静かな……静か過ぎる夜闇へと視線を投げかける。
「そうですな、どうにも嫌な予感がしますな。
ここ迄、何事も無くこれてしまった。
まるで知らない内に大蛇に丸呑みにされているような、そんな気分にさせられますな」
「言い得て妙だ」
なんとも嬉しくなさそうに渋い顔をする甘寧さん。
「ともあれ夜が明けたら、少し進んだ所にある廃村を目印に、再度陣を敷きます。
その上で、廃墟の残骸と筏の材木で柵なり作って、後は援軍がさっさと到着してくれるのを祈るだけですな」
あまり、ご利益は期待できそうにないが。
で、開けて翌日、祈った甲斐が有ったのか。
「なんとか、朝は迎えられましたか」
朝靄のけぶる中、日の出を迎える事が出来た。
しかし、先の事は朝靄と同じく、見通しが立たない。
ともあれ廃村を目指し、陣列建てて進んでみたが……。
「伝令!!」
「何事ですかな?」
なぜか、廃村の方角からやって来た伝令……怪しい事この上ないが、腕に友軍の印である、白い布を身につけている。
これは出陣前に、夜間の同士討ち対策で決めたことで、孫家の偽装という可能性は低いと思う。
しかし、自分達用に準備しただけで、他の援軍に手回しをした覚えはない。
まあ、隠して準備したわけじゃあないので、黄祖さん辺りは把握していても不思議ではないが、こうなってみると判断に困る。
なんで、此方より先回りしてんのさ?
「どちらの方からの伝令ですかな?」
聞いてみるしか無いとのことで、一応は注意しながら顔を合わせて見る。
傍に甘寧さんも居るので、いきなりバッサリということはないだろう。
「袁家の援軍である、紀霊将軍よりの書状です」
「ほう、紀霊将軍ですか」
思い掛けない名前に、疑問を感じながらも、竹簡を受け取る。
伝令には特に不審な動きはなく、普通に渡された竹簡にも、おかしな点はない。
まあ、その存在自体が怪しいんだけども。
内容としては、秘密に動いて居た別働隊が、先行して陣を張っているので、合流しろとのこと。
いつの間に動いていたのだろうか?
放ったらかしの捨て駒かと思えば、実は先行部隊が居て合流しろと言ってくる。
しかも、その指揮官は袁家の将で、何故か申し合わせた筈のない目印付き。
組織の枠内で動くならば、指示通りにするだけのことなんだけども……今までの周回で、好き勝手動けてたのを思いだすと、随分と恵まれていたのだと思う。
しかし、別働隊……。
孫家じゃないと言っても、こちらの味方とは限らないという、なんとも微妙に嫌な立場なわけで、とくに印のことを決めたのが、黄祖さんというのが気にかかる。
「とはいえ、こうしていてもしようがないですな」
一応援軍であるならば、合流するのが先決。
幾らかでも兵力が増えれば、戦闘になってもどうにか出来る可能性が増えるんであるし。
「出発するぞ!!」
そして数刻。
「あっさり合流出来ましたな」
何事もなく袁家軍と合流し、現在は砦の普請中。
「援軍感謝する」
出迎えてくれた紀霊将軍も、特に怪しい動きはしていない。
普通に合流した後は、拠点を作って周囲の警戒をしている。
その様子を見て、気が抜けたわけじゃないが、ほっと一息。
「と思っていたのだがなぁ」
「満福殿!!」
なにやら、紀霊将軍の声がする。
「これは、紀霊将軍。
何かご用でしょうか?」
「そちらの軍師殿からの伝令だ。」
軍師、軍師ねぇ……嫌な予感しかしない。
「ふむ、援軍と合流後、本陣にもどれと?」
俺は何しに来たんだよ!!
「更に興覇殿は、此方に残すと……」
何かね、移動中に敵に襲われるのを願われてる?
これは、うちの連中と合流しないと拙いってことかね?
それか、其れを促されてる的な話か?
もうこうも煮詰まってくると、リタイヤしたくなってきな。