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「ところで、御二人は今迄どちらに?」
「正直な処、主殿が黄巾の際、名を売って居られた頃には、既にこの辺りに居りましたぞ」
「おや」
思った以上に早かった模様。
それならさっさと合流して惜しかったな、華蝶仮面してる位なら。
「少々、気掛かりが御座いましてな。
その対処と、誰の仕業かを有耶無耶にする為、華蝶仮面を引っ張りだした次第」
アレやってるのに、理由があったというのか……ほんまかいな。
「気掛かりと言いますと?」
「実は、この近辺を探る者が居りましてな」
「それも、かなりの手練れ。
幸運にも姿を捉えた処、旅の者のようでしたが。
我ら二人から、一瞬の隙に、姿を眩まして見せましたぞ」
そんなドキワクすんな、バトルジャンキーが悪化してないか?
「お二人から逃げおおせるなど、尋常の者ではありませんな」
とはいえ、それは只事じゃないな。
ふむ、モブに化けた、どこぞの将か?
それとも、プレイヤーの連れてきた、お助けメンバーか?
「それで、再度発見した際には、問答無用で討ちましたが。
どうやら複数人で入り込んでいたらしく「いや、少々待って頂けますかな?」ふむ?」
いや、「ふむ?」じゃなくて。
不思議そうな顔すんな、くそ、無駄に可愛いから。
「今、問答無用と聞こえましたが?
不意を打って仕留めたということですかな?」
「はい、何やら猫に夢中の様子でしたので、背後と頭上からバッサリと。
仕留めたと思った瞬間、まだ息がありましたので、どうやら何かの護符を持っていたかと。
まあ、逃げられない状況では、一瞬、寿命が伸びただけでしたが」
それが何か? というような風情。
それでいいのか、武人じゃなかったのか?
いや、それよりも、猫に夢中というと、まさかの周泰さんの登場か?
あの人は、ある意味でヤバイよな。
シチュエーション次第では、呂布並みに酷い死亡フラグになりそうだ。
更にアイテム持ちということは、誰かがゲットしたか、外史に連れてきたパートナーという線か。
ああ、頭がこんがらかるぞ。
「ご安心を、念入りに、仕留めておきましたので」
「いやいやいや、そういう心配ではなく。
趙雲殿、武人の矜持やらは、どうされたので」
結構、そういうトコ煩い人じゃなかったのか、あんたら。
「おや、忍びに気付いた際は、不意を打って槍で一突きにするのが基本では?」
それは天井裏とかに、潜んでる奴についてだと思うんですが。
しかも時代劇での、お約束であってですね。
武人側が、不意打ちで突いて来るとか、難易度高いなおい。
とはいえ、周泰さんだとすると、その危険度を考えると、問答無用も仕方がないのか。
「いえ、納得しているのでしたら、問題ありませんが。
確かに腕利きの者が潜んでいる、という危険性は、看過できないものがありますからな。
ふむ、なるほど。
それで、華蝶仮面なのですな。
何処の者とも知れぬ者が、何処の者とも知れぬ華蝶仮面に討たれたとすれば、動きは鈍りますな。
その上で、此方の手も読まれにくいと……」
言ってて自分でも、ちょっと怪しいとか、思っちゃうけどな。
本当に、そう上手く行くもんかね?
むしろ、此方に趙雲さんが居るとか、感づかれないだろうか?
そんな感じで悩んでたら、カラカラと笑われた。
「なるほど、主殿は、華蝶仮面が趙子龍と、看破されないかと?」
「プレイヤーであれば、その辺りを知識として持っておりますからな」
「ふふふ、主殿は華蝶仮面の実力をご存じないのですな」
実力ってなんぞ。
「実は、この涼州一帯において、華蝶仮面というものが、大いに盛り上がっておるのですよ」
「それこそ、華蝶仮面を名乗って、世直しを図る者が出る程にですぞ」
嫌なムーブメントだな。
それじゃ何か? 華蝶仮面を名乗ってる奴が、他にも居るというのか?
「少なくとも、我らと同時に現れた連中がおりますな」
「ほう」
それなら、バレの可能性は少ないのか?
「鈴華蝶や白馬華蝶と名乗っておる、二人組のようですが」
全部、身内じゃねーか!!
「それは、なんと言えば良いのでしょうかな」
武力90クラスの華蝶仮面が、ゴロゴロと転がってる処とか怖すぎるぞ。
「ふふふ、主殿も閨が寂しいでしょうが、この辺りを探る者を、一通り片づけ終えれば、合流いたしますのでな」
さいですか。
さんざん飲むだけ飲んで、こちらにツケて行きやがりました。
そして、もうそろそろ大丈夫かと、再び董旻さんへの挨拶に戻ってきたところ。
「縁を結ぶ、綾なる戦士!! 結華蝶、只今参上!!」
「知識を記す、永久なる戦士!! 永華蝶、見参!!」
「…………」
「「…………」」
視線が絡み合い、沈黙が訪れた。、
「どうも、疲れておるようです」
「まってー」「ちょっと、満腹!!」
ちゃんちゃん♪