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寝起きに、すごい面白い事を思いついた気になってると、実はそうでもなかった罠。

それでも、何か悔しいので、粘ってたらえらい間が開いていたそして面白かったのは、アサシンクリードⅲでしたというオチ。

すんませんでした。


 久しぶりの涼州、一番に驚いたのは、その発展ぶりだろうか?

 帰ってくる途中の街や邑の姿に、黄巾の連中の齎した爪痕なんぞについて、うんざりする程の影響の大きさを感じていたのだが、大きく変わったその様子は、全く真逆の様相を表していた。


 うん、頑張りすぎ、どうしてこうなったってレベルだよ。

 規模はともかく、治安の良さと賑やかさは、何度か寄った曹操さんところか、袁紹さんところを彷彿とさせる。

 流石は、原作とか二次小説みたいに、未来知識でNAISEIしなくても、能力のある連中を揃えて、前提条件を整えてやれば、それだけでチート臭い発展をする、ゲームならではの結果ではあるな。

 外史やマイ外史からの経験でいうと、理屈が通るように、組織やシステムを整えれば、それなりに大きく伸び、無理矢理な適当でも、能力値という言い訳で、ある程度は突破しやがるからな。


 今回の場合で言うと、元より善政という物を行える能力のあった賈駆先生の他に、同等の能力を持つ李儒さんが登場した上に、基本的に董家勢力の地盤というものは、さほど大きく変わっていない。

 つまり、規模は同じで、優れた内政家が二人に増えたわけだ。

 これは、単に効率が二倍というだけではない。

 担当範囲を半分に出来るということは、極め細かく見ることができ、一つの組織が小さく済むのであれば、自然と動きは軽くなる。

 更に云えば、一人でやってるより、ライバルが居ればモチベーションは上がり、相手の政策をパク……いや、リスペクトして取り込むことで、違う発想を得る事が出来るのだ。

 他にも、俺が色々と手を回した件で、此方の地盤の引き締めが進み、それを見て危機感を持った賈駆先生が、董家内部の綱紀粛正を行い、色々と風通しも良くなったし、無駄も大きく減った。

 一番大きいのが、オーバーワークが無くなって、各々が董卓さんやら董旻さんと、お茶出来る時間ができたことだろう。

 あの凄まじい勢いで、マイナスイオンとか出てそうな癒しの存在と、ちょくちょく会えてりゃ、疲れとかも吹っ飛ぶだろう。

 そんな感じで、二倍どころじゃ無い効果の発揮が、ご覧の有様ってことだろう。

 まあ、悪いことじゃないから、別にいいんだけどな。


「それにしても、随分と久しぶりな気がしますな」


 とりあえずは、帰着の挨拶だろうと、董旻さんの所に顔を出すべく、土産代わりのお茶菓子持って、執務室にやってきたわけだが……?


「えに……をむす……あやな……んし!! ゆいかちょ……ただい……ょう!! へぅ!!」


 何やらボソボソと、しかし所々で気合の入った、激しく聞き覚えのある声が。


「結殿? 宜しいですかな?」


 扉に近づいて、そっと手をやると、音もなく開いてしまった。

 そこから見える姿は、儚い印象の人物にしては珍しく、何やら気合の入った立ち姿に、両の腕を緊張させ、まるで何かの構えの如き……と、其処まで考えた所で、扉が微かに軋んだ音を立て、その音に過敏な程の反応を見せた、上司の上司たる、この地の太守、董叔穎殿が「ふひゃへぅっ!?」と、素っ頓狂な声を出して跳ねた。

 そして、床に落ちた何かを背に隠しながら、此方へ振り向き、何やら真っ赤な顔で、えらい大汗をかきつつ、バタバタと。

 一体何事が?


「き、きききき、きんきん、まま、ままんぷくさん?」

「いや、満腹と呼び捨てて頂いて結構ですぞ」


 きんきんままんぷくとか、そんな斬新な呼ばれ方をしたのは初めてだ。


「ま、満腹さん、何時、此方へまドラへた……!?」


 あ、噛んだ。

 普通に、凄い痛そうな感じで噛んだ。

 ああ、涙目の結殿は可愛いですな。

 で、えーと、何時此方に戻られたんですかってかな?


「つい、数刻前に、此方へ戻りましてな。

 結殿に、帰着のご挨拶と、ご報告にと思ったのですが、お忙しかったようですな」

「いえ、大丈夫です。 本当に大丈夫ですから」

「しかし、何やら調子の悪そうな中で、ご熱心に。

 無理を推しての様子、お邪魔はできません」

「大丈夫です。 本当に大丈夫ですから」


 いや、でも、何やら凄い汗が。

 顔も赤いし息も荒い……本気で大丈夫かいな?

 あれ? 何やら後ろ手に隠した……入室にびっくりした……赤い顔、息が荒い……あれ?

 いやいや、ちょっと怪しいことを考えたが、それはない。

 まさか、董旻さんが、そんな立ってポーズを取りながら気持ちよくなれる、ハイレベルの変わった趣味の持ち主とは、考えたくないなぁ。


「ま、満腹さん?」

「あ、いえ、例え、そう例えば結殿が、そういった趣味であっても、人それぞれ守られるべきものはありますからな。

 えぇえぇ、大丈夫でございます。

 この金満腹、秘密は決して漏らしませんとも。

 あ、いや、永殿には相談して、おくべきでしょうかな?

 女性として、誤ったやり方だったりしては、危険な事があるかも知れないわけですしな」

「へ、へぅっ!? 満腹さん、何か、何かが、正しく伝わってないよぅ。

 それに後半、内緒の積もりかもしれないけど、しっかり聞こえてるよ……。

 あぁ、そんな良い笑顔で、後退りしながら出ていっちゃ駄目ぇ」


 董旻さんを振り切ってきたら、なにやら悲壮な「へぅー」が聞こえた気がしたが、気にしない事にしよう。

 とりあえずは李儒さんに、董旻さんの様子を言伝るよう、遣いを頼んでおいたので、二人で話し合って欲しいところです。



「さて、此方に先行させていた、袁三姉妹の様子でも見に行きましょうか」


 実は、あの三人と、その他の連中には、一つの指示を出しておいた。

 ここの城下には、物の通る規模の割に、地元に金が落ちないという、嫌な傾向があったので、商会といっても、どちらかと言えば、サービス業的な物を、起ち上げて欲しいと言っておいたのだ。

 で、それが順調に進んでいるそうなので、覗きに来てみたわけだが……。


「だから何故、この世界の一般的なサービス業が、メイド喫茶で固定されているのでしょうかな?」


 開発者に小一時間問い詰めてみたい……いや、まさか、俺の隠れた嗜好が反映されているとか言われたら、少々立ち直れないかもしれん。

 いや、嫌いじゃないんだ、嫌いじゃ、でも行った事も無いような物を、こうもクローズアップされるとなぁ。

 あ、三姉妹が、ステージで歌ってる……うわぁ、既にファンが付いてるのか。

 結構な数の御捻りが飛んでるのを見ると、地元じゃなくて、通りがかりの商人連中か。

 もう、これはこれで良い気がしてきた。

 多分、この世界の男連中は、メイドに心惹かれるのが決まりなんだろう。

 そうに違いない、そう決めた。

 うむ、とりあえず、お茶飲んで落ち着こう。


「なかなか美味いですな……」


 流石に、それなりの質の物を使っている。

 女の子だけのボッタクリだと、体裁が悪いし、長続きせんしなぁ。

 ああ、落ち着くなぁ。


 とか和んでいたら、店の外で何やら騒ぎが起きたらしく、店の中も雑然としている。

 ただ、なにやら、緊急性のあるような感じではなく「待ってました!!」と「またかよ……」が、半ばを分けるような反応である。

 期待していたらしき連中は、慌てて店の外へ。

 騒がしさに辟易している連中は、茶から酒に切り替えて、注文を出している。

 どうやら、余り良い感じの騒ぎじゃないな。

 しかし、何事だというのやら? 俺のとこには、報告が上がって来てないぞ?

 ともかく、こんなのがチョイチョイ起きてるんじゃ、何やら手を打たねば。

 先ずは、その辺の連中に、話を聞いてみるか。

 おっと、迷惑料でも無いですが、ふるまい酒でも出しておきますかな。


「袁譚殿、酒の良い所を、皆様に」


 騒ぎで歌を中断され、注文取りと収拾に走っていた所を捕まえて、依頼する。


「皆様、此方の旦那様より、奢りですわよ」


 軽く盛り上がる店内に、軽く手を上げて応えつつ、その辺りで、年配の商人らしき男性を見繕い、声を掛ける。


「申し訳ありませんが、一杯如何ですかな?」

「おお、これはどうも。 失礼ですが」

「これは、申し遅れました。 私、金満腹と申します。

 この土地の役人をしておるのですが、どうやら皆様方には迷惑をかけておりますようで。

 先の酒は、太守様よりの振る舞いでございます」

「これはこれは、忝い。

 それで、如何なご用件ですかな?」

「実は、暫く振りに戻って参りましたもので、最近の騒ぎについては、さっぱりでして。

 よろしければ、何事なりとお教えいただければと」


 さあ、もう一杯と、空いた杯に酒を注ぐ。


「おーっとっとと。

 いやいや、私も大した事は存じておりませんが、何でも正義の味方を名乗り、揉め事が起こるや度々現れ、独断で悪を任じては退治する、正体不明の怪人が居りますようでな」


 へー……。


「その、正体不明の怪人ですか……もしや、白い衣装に仮面を付けた若い女性では?」

「確かに若い女性ではありますな、先程のように、色香に惑わされた連中が騒ぐ程度には。

 ふむ、仮面はしては居りましたが、白い衣装だったかどうか。

 そうそう、名乗りの際に『華蝶仮面』と、名乗っておりましたな」


 おいおい。


「うーむ、『華蝶仮面』ですか。

 その名については、話に聞いたことがございますな。

 しかし、私の聞いた話では、幽州・冀州・洛陽の辺りに出没するとの話でしたが、いつの間に、この土地にまで……」

「いえいえ、私もその話は存じておりますが、この土地の『華蝶仮面』は二人組ですぞ」


 は!? まさか……。


「恐らくは、現れた時期からして、聞いた話を模倣した、愉快犯ではないでしょうかな」


 いや、多分、本人です……別の外史から来てますけど。

 何やってんだ? おい!! って、あれ!?


「むう、気のせいですかな? 何処かで見たようなのが二人……」

「どうかされましたかな? 満腹殿?」


 ん、えっと。


「いえ、良い話を聞かせていただきました。 感謝いたします」

「いえいえ、この程度」

「それでは、失礼致します。 良い御商いを」

「有難うございます」


 席を辞して、目をこすりつつ、二度見して、間違いなく、黒いのと青いのが居る卓へ。


「星殿……」

「これはこれは、主殿」

「一杯如何ですかな?」


 彩りの違うメンマを大皿に、他は酒瓶を並べるだけの、らしいと云えばらしい酒盛りに、開いた口がふさがらないと言う気分だった。

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