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やっとこさ、二十万字超えた……そして、一話辺りは3キロ半程度。

誰かから言われた「お前の文章って、プロットだよな」という、ところからは中々抜け出せないですね。

 黄巾の頭首が討ち取られたという知らせは、瞬く間に広まり、黄巾の残党は各勢力の、最後の功名稼ぎに食い散らかされた。

 そして、名を上げたのは曹操、次いで劉備・公孫賛、無難に袁紹といった辺りで、涼州合同軍は、あちらこちらで名は知られるものの、目立った手柄は思い浮かばないという、田舎者も中々やるもんだな的な評価に留まった。


 そんでもって、涼州合同軍の打ち上げと相成った訳ですが。

 馬超さんが、体調不良とかで、次席になってる董家の華雄さんが「楽しんでくれ、乾杯」と、どこぞのスピーチ嫌いな提督ばりに、アッサリした音頭をとって、ワイワイと始まった。

 正直、来たくはなかったんだが、タダ飯・タダ酒に釣られた兵士連中に、土下座で囲まれそうな勢いで、押し込まれて折れた。

 流石にあれは怖かった。

 正直、樊稠さんやら、田豊さんに沮授さんは目立つので、表に立っては欲しくないのだが、涼州合同軍の三席に、名を連ねている樊稠さんは、そうもいかない。

 全く、樊稠さんと華雄さんが並ぶと、目立ってしょうがないのだが。


「あの、金満腹さんですか?」


 ちょっとした独占欲がチリチリ刺激されながら、樊稠さんが注目されてるのを眺めていると、可愛らしい声に名を呼ばれ、振り返ると原作キャラの姿があった。

 動きやすそうな格好に、スポーティなサイドポニーと、ボーイッシュな濃い眉毛が、快活さを表すも、一寸ばかり猫を被っているのか、大人しそうというか、眉毛がしょんぼりとハの字になっている。


「失礼ですが、どなた様ですかな?」

「あ、すいません。 馬岱と言います。 この前は、お世話になりました。

 お姉さまから、話すべきなんだろうけど、ちょっと今体調が良くなくて」


 なんと、びっくりの馬岱さんの登場。

 糧秣騒ぎの件に、詫びというか、顔出ししに来てくれたらしい。

 なんとなく手持ち無沙汰に、空いた盃を持っていたが、そっと注いでくれたりして、卒のないところを見せてくれる。

 ふむふむ、出来た娘ですな。

 ぐっと飲み干して、もう一杯注いで貰う。


「いえいえ、あれについては、もう済んだことですし、どうやら馬岱殿の様子を見るに……」

「何? たんぽぽ、あ、私があれ、えと」

「普段通りに話して頂いて結構ですよ」


 焦って地が出たのか、わたわたする様子が可愛かったので、助け舟を出しておく。


「ありがと。 えーと、たんぽぽ、あ、私の真名だけど、なんか、おかしかったかな?」

「どうやら、馬超殿に何か有りましたかな?」

「え、えと、お姉さまは、あの……その……」

「話し難い事でしたら、、構いませんが、何やら手助けできるかもしれませんし、ただ話すだけでも、気が楽になるかもしれませんよ」


 こっそりと、酒をポイント購入、一杯勧めてみる。


「うん、満腹さん……おじ様って呼んでいい?」

「構いませんとも」


 うん、なんか、おじ様って呼ばれると、ゾワゾワッとするな。

 刃鳴さんは、まだ来ないんでしょうか。


「実は、この合同軍の纏め役に、お姉さまが推されたのは、経験を積むってこともあるけど、おばさまの具合が良くないからなの」

「馬騰殿のことですな?」

「うん。 ちょっと前から、良くなくて。

 それで、お姉さまは、馬家の名前を汚すまいと、頑張ってたんだけど……」

「それは、私に話しても大丈夫なのですかな?」

「うん、それ自体は、隠してもいないし。

 それよりも、おじさまには迷惑を掛けてるから、話しておかないと」

「あの、事件ですかな?」


 こくりと頷く馬岱さん。


「宦官の人が使いに来て、お姉さまみたいな若い者を寄越すとは、馬寿成の忠誠を見誤ったかとか言われて。

 お姉さまは反論したんだけど、じゃあ証拠を見せろって。

 それで、糧食の供出を命じられて、断ったら、おば様の召し出しも辞さないとか言われて、お姉さまは仕方なく。

 あとで、お姉さま、涙でグチャグチャになりながら、皆に申し訳ないって泣いてた」


 ちょ、それはエグ過ぎないですか?

 一体、誰向けのイベントなんだか?

 俺向けにしては、遠すぎる気がするしね。

 やるなら素直に、董家に関わってくるだろう。

 こうなると例の一件、俺がトリガーかとも思ってたけど、見えない所で、そんな事が起こってたなら、その場に居たやつ向け、多分馬家にいるプレイヤーかキャラクターへと、向けられたイベントじゃないだろうか。

 そうだとすると、例の馬留に龐翼への邪魔か、もしくは馬超さん、馬岱さん狙いか。

 むう、自分が騒ぎを起こしてる時は、そんなでもなかったけど、近場で派手にやられると、本当に傍迷惑って奴だと実感するな。

 あれ? ちょっと待てよ?

 アレが、何らかの策だとしたら、すっごい余計な真似、やらかしたんじゃないだろうか?

 中央の宦官勢力に、それなりに手が伸びる相手の邪魔とか、死亡フラグじゃないですかー。

 褒美あげるからとか言って、洛陽に呼び出しとかされたら、本気で逃げよう。


「おじ様?」

「ああ、すみません。

 其処まで強硬に、馬家に対しての圧力をかけるというのは、一体何が狙いかと考えてしまいまして」

「やっぱり、おじ様も、そう感じるの?」

「私個人の考えでは、涼州の勢力に干渉するには、それなりの理由がなければ、外からの禍を招くだけですからな。

 それを推せるという事は、それなり以上の力が、働いているということでしょうな」


 実際にはプレイヤーの、ものっそい個人的理由だろうけど。


「どうしたら良いと思う?」

「異なる主を頂くものとして、大した事は言えませんが、一人で悩まず、多くの人間にはかることでしょうな。

 人間一人では、出る知恵も出ませんからな。 

 あとは、大事な物を見誤らないことです。

 国だ、民だ、大儀だ、名だと、色々と拘り過ぎると、肝心な物を見失います。

 本当に大事な物だけを引っ掴んで、逃げることは恥ではありませんぞ」

「……っぷ、くくくっ」

「おや? 如何されましたかな?」


 いきなり、プークスクスとか、傷つくんですが。


「ごめんなさい。

 でも、おじ様って、変わってるよね」

「そうですかな?」


 ちょっとショックだったりして。


「武門の頭領筋の人間に、さっさと逃げろなんていう人は、中々居ないと思うな。

 たんぽぽじゃなかったら、顔を真赤にして怒っちゃうよ、きっと」


 お姉さまとかね。 と、馬岱さん。


「確かに、華雄殿あたりですと「きさまー、武人を愚弄するかー」とでも、仰りそうですな。

 しかし、私なぞ、所詮は商人崩れの、下っ端役人ですからな。

 その辺の感じ方は違うのでしょうな」

「ふーん」


 何やら怪訝な顔を。


「何ですかな?」

「なんでもないよー。

 それより、たんぽぽが逃げてきたら、おじ様は助けてくれる?」

「そうですな、万軍の敵を倒すなどは無理ですが、腹一杯の食事は用意いたしましょう」

「んっふっふー」


 何やら嬉しそうな感じで、多少は元気の出たらしい馬岱さんを見送ったあと、俺は宴を抜けだした。

 そして、合同軍が涼州に戻り、皆が一息ついた頃、原作とは違うシナリオが、じわりと動き始めたのだった。

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