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あ、張遼さんが、まだ官軍でした。
董卓陣営に入ってるような描き方してたので修正……。11/28
さて、黄巾の乱といえば、正史にしろ、演技にしろ、歴史ゲームにしろ、中々に大層な代物ではあるのだが、こと外史である場合には、些か以上に様子が違う。
まず、勃発の理由・中核の存在が大きく違い、更に群雄の配置や登場時期に強さも大きく違う。
おまけに。
「これはまた」
眼下、物凄い勢いで駆逐されていく黄巾軍。
それは、原作でも、前回見たのとも違う、圧倒的なまでの掃討だった。
なんというか、プレイヤー頑張りすぎだろ。
旗から伺える勢力、官軍、董卓軍、公孫瓚軍、劉備軍、曹操軍のうち、どう考えても、大きく増強されてるのが、公孫瓚に劉備。
劉備とか、良く云って曹操と共同軍、悪けりゃオマケなデフォルトと違い、ほぼ伍する程の勢力とか、増強盛りすぎワロタ。
公孫瓚軍にも、公孫の旗が幾つか増えてるし、まさか公孫続、公孫越、公孫範とかが、シナリオ上で、纏めて湧いて出た可能性は少なかろう、一つならともかく。
可能性としては、一人くらい公孫姓がいても、大丈夫じゃない? とか、考えたプレイヤーが、複数かち合った。 とか、だろうか?
単に、そういう公孫家ファンの集い、なのかもしれないけど。
あ、趙の旗を追いかける南の字が……まさかねぇ。
それから、元から強いので、ハッキリとは判りにくい曹操にしても、この時期なら夏侯姉妹と本軍、オマケで主人公が一つの、四部隊程度が基準だろうに、見ると一つ二つ、部隊が多いような気がする。
うん、前から三番手に居る、曹の旗の小集団とか、本隊脇に付いている、三つ目の夏侯の旗とか、凄く怪しい。
翻って、黄巾軍には、これといって変わった様子は見られない。
官軍も……って、いつの間にかいねえ!?
そういや、逃げ出すんだっけか?
これだけの圧勝空気の中、逃げ出すとか……あ、いくらか残っては居るのか。
踏みとどまっている官軍の中には、張の旗があり、オマケも付いてますな。
というか、張遼さん。
原作じゃ、逃げる連中に手が回らなくて云々、云ってたけど。
今回は人手があったけど、恣意的に逃げる連中をスルーしてるみたいで、プレイヤーが関わってそうで、非常にイヤン。
どうも、華雄さんがシナリオの揺れ幅で、董卓勢力に行っちゃってる辺りの影響もあるだろうが、プレイヤーの参加が加わって、なかなかややこしい事になっていそうな予感。
これは、董旻勢力とかな、斜め上が発生して、直接董卓さんとこに行ってなくて、幸運だったのかもしれない。
「さて、出る幕もなく終わってしまったが、良かったのか?」
眼下での戦いに、決着を感じたのか、隣に樊稠さんがやってきた。
「あれだけの数に埋もれては、大戦果も霞みましょう。
それに、官軍に気を使うのも面倒ですな。
せいぜい、散った連中を潰せば、それなりの勲功にはなりましょう」
ぶっちゃけ、プレイヤーに監視されてそうな董卓陣営には、もう少し情報を集めてから顔を出したい。
「それでは、行くか」
「ですな」
勝利した合同軍が一旦兵を纏めるのを背に、逃げ散っていく中で、ポツポツと集まろうとしている敗残兵達に向けて、出発の号令をかけた。
……
…………
………………
うん、何も書くことは無いくらいに、何もなかった。
とりあえず、十数度の交戦にも関わらず、損害ゼロ。
総てを合わせれば、自軍の五倍にならんとする程の敵を、蹴散らしてきましたよ。
まあ、敵さんは、兵糧・武装度・士気等々が、オールゼロ。
歴戦ゲーでなら、戦闘に入った瞬間に負け判定になるような状態で、それを此方の騎馬隊で踏むだけの簡単なお仕事。
流石に、多少は、罪悪感が募ります。
「外道に落ちてしまったとはいえ、元は民であった者達……。
彼らを断罪するだけの正義が、些かなりと政に携わった我々に、在ったのでしょうかな」
フフ、と自嘲する。
補正に沿う形で、多少の感情移入をするだけで、こういう厨ニ的なセリフが、スラっと出てくるのが、このゲームの怖いところだな。
あ、涙でてきた。
「ふん、己の行いを悔いるような奴が、あれ程に執拗で徹底的な殲滅を行うのかよ」
ちょ、独り言に乗っかってくんな。
「いや、己が手を汚し、為すべきを為すからこそ、其処に涙を流す資格が生まれるのです。
無為に悲嘆に暮れるだけの愚か者より、余程に美しい」
ふ、増えたぁー!!
「これは、お恥ずかしい処を……失礼ですが、どなた様ですかな?
私は金満腹と申します」
何処の、どいつだ?
こうして、能動的に絡んでくるところは、プレイヤーっぽいんだけどなぁ、俺みたいなオッサンに声掛けてくるのは、ちょっと違和感。
あと、妙に芝居がかってるところも、判断しにくい材料になっている。
「俺は馬留だ」
「私は龐翼です」
此方が名乗るのに被せられた。
馬留と名乗った方は、小柄な黒髪の青年で、黒尽くめの革製のジャケットにバンダナ、特に得物は持っていない、胸元に光る、銀のアクセがワンポイント。
ひねた三白眼で、下から睨めつけるように見上げてくるので、チンピラにしか見えない。
何か叫びながら、気弾とか飛ばしてきそうだ。
龐翼と名乗った方は、反して茶髪で長身の青年。
ニコニコと、愛想の良い微笑みを浮かべているが、その真意は糸目に隠されて伺えない。
黒尽くめの和装を着流し、得物として、珍しく刀を指している。
周泰さん見たく、諜報系の人なのか?
雰囲気としては、13メートルくらいまで刀を伸ばしそうな、胡散臭さがある。
以上のような特徴的な姿のせいで、投稿武将のような気もしてくるな。
どんな聞いた事のない名前にも、ランダムキャラの可能性ってのが、どうしても消えないしな。
さて、こいつらはNPCか?
それとも、ノリの良い、なりきっちゃう感じのプレイヤーか?
ともかく、名前からして、馬騰さんとこの人かね?
あんまり探り入れるのも藪蛇かと、調べを入れてねーよ。
「馬家に縁の方ですかな?」
「まあ、そんなとこだ」
「ええ」
姓・名の名乗りってだけじゃあ、よく判らんのよね。
NPCも普通にそう名乗るし、逆に俺みたいに、姓と字を普通に名乗る時もあるし。
あ、なんでこんな所に、馬騰さんとこの連中が居るかという理由については、うちのというか、樊稠さんの部隊が属している集団が、董卓軍閥というのではなく、涼州合同軍という形で来ているからです。
つまり、董卓軍・董旻軍・馬騰軍・その他もろもろで、幾つかの部隊を纏め、兵站を融通しあって動くと云う訳ですね。
ぶっちゃけ、細かいとこは兵出せないしね、出せる物を出しあって、目立つ人の名前で纏めて動く方が、余計なタカリやらチョッカイが減っていいんですよ。
というか、細かい諸々の皆さんには、合同軍に参加したという名目を、金で買って貰うような感じです。
兵出してるのは、董家(董旻含む)と馬家(韓遂等の豪族含む)くらいです。
まあ、この辺を纏めるのは泣きましたが……主に李儒さんが。
細かい所との、折衝という名前の集金は此方でやりましたが、董卓さんの所の賈駆先生と仲良く喧嘩するのは、うちの上司の仕事だろうと。
まあ、なんといっても、未だに下っ端でしか無いんですよね、実際。
顔を出したくないなーとかで、どこぞの特命係長みたいな事に。
なので、部門の長とか派閥の長とか、そういう相手にはあんまり……って、話がそれてるな。
ともかく、馬騰さんとこの連中が居ても、おかしくはないが、態々孤軍で動いて居たのに、ばったり出会うとかツイてない。
「それで、私めに何か御用でしょうかな?」
こんなオッサンを攻略に来る、暇な奴はおるまい。
「ああ、樊稠将軍に聞いてな」
「実は私達は、馬超殿から散った連中の追討を命じられておったのですが、殆ど此方で片付けられていたようでしたのでね」
「ああ、それでしたら、私共と共同しておったということで」
「いや、それは遠慮する。
流石に、其処まで落ちぶれちゃいない」
「私は好意として、貰っておいても良いかなとは思うのですがね。
樊稠殿にも、好きにしろと言われましたが、相方がこういうので。
ああ、此方に伺ったのは、それなりの数になっていた筈の連中を、殆ど単独で片付けた、此方の軍を見てみたかったという訳ですよ」
真意かどうかは謎だが、判らんでもない理由だな。
それで、優秀なランダムモブでも居れば、位のプレイヤーとしての興味だったのかもしれないし、単にNPCが、将来的な仮想敵だろう此方に、興味を抱いただけかもしれん。
「それは、樊稠殿を始めとする部隊長の優秀さの証左でしょう。
私など、口出しはしましたが、役には立っておりません。
せいぜい、金勘定くらいなものでしょうな」
「なるほど……」
嫌な沈黙だな。
「さて、そろそろ御暇いたしましょう」
「いいのか?」
「ええ、面白いものも見れましたし。
そろそろ、お仕事をしませんとね」
それでは失礼と、二人は去っていった。
黒い小柄な方が引っ張ってるのかと思えば、そうでもなかったか。
うん、中々に雰囲気のある連中だった。
NPCにしろ、プレイヤーにしろ、此方も面白い者が見れたと思っておいて、良いだろう。
数刻して、あの二人に率いられて、うちと同じ規模の騎馬部隊が出発した。
「さて、そろそろ、うちも出発しますか」
涼州から、こんな冀州やら兗州まで、やって来たのだし、その甲斐が在ったと、元を取れるくらいには、働いておきましょう。