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 どうやら普通の人は、イベントに巻き込まれる側だったらしい。

 城下に『劉』旗を挙げた団体さんがやってきて、騒ぎになっているそうな。

 どうやら、自分のキャラクター、内政やってる下っ端の役人じゃなく、それなり以上の決定権握らされてる上に、趙雲さんに公孫賛さまの下の次の次の次くらいの隊長職までやっているそうな。

 どんだけ人が居らんのだ。

 王門、関靖、厳綱、単経、田楷、田豫あたりは居るっぽいが、モブなのか名前だけで登場しないし。

 仕方ないので、警備の兵を引き連れて、城下に押し出ると。


「金千どの」


 趙雲さんが、騒ぎを聞きつけて、やってきてしまった。

 どう考えても蜀への移籍フラグだな。

 確かにコンシューマーのタイトルでも、蜀ルートでこんなイベントがあった。

 北郷さんの仕込みで、劉備さんが普通の人にたかるに行くような話だったか。

 主人公視点だと、なんかうまくやった感じだったが、こっち側に居て、こうこられると迷惑すぎる話だな。

 つか、主人公登場なのか!?

 うわ、チュートリアルの最後は負けイベントかよ!!


「そこは、あなたの腕次第ねん」


 どう考えても無理臭い所へ、マッチョの声に促され進むことに。

 城下に出ると、野次馬と不安におののく民の声、迷惑すぎる相手は、なんか旗と武将だけは立派で、後ろに並ぶというかついて回ってる連中は貧相なことこの上ない。

 どう見ても盗賊団です、ありがとうございました。


「とにかく、やるべきは劉備と普通の人の面会阻止。

 できればこのままお帰り頂くってとこか」


 と思ってる脇で。


「ほほう、なかなかに」とか、趙雲さんが、なんか良く判らん部分で、ファーストインプレッションを受けたようです。


 先を思いやられながらも、とにかく仕事をするしかない。


「そこの連中待て!! 城下を騒がせるとは何事か!!

 さっさと出て行かねば、「我らは劉備玄徳、天の御遣い率いる義勇軍である!!」おうふ」

「ほほう、あれが噂の……」


 ……趙雲さんよ、完全に見物モードか。

 関羽さんも話を聞けよなあ。


「劉備様のご学友、公孫伯珪殿に目通り願いたい!!」


 見た目、そんなに大柄でも無い美人さんなのになぁ。

 やたら声がでかいし、馬乗ってるから見下ろされて、凄い勢いで威圧されるし。

 どうみても、俺の事は木端役人というか、モブ扱いですね、兵士Aとかか。

 黄巾の色違い使いまわし辺りに見えてるのか。

 いや、こっち見てないか。

 なんとなく、趙雲さんの方を気にしてるのか。

 おかげで、近くで見上げると、えらいミニで馬乗ってるから……白いのがチラチラしてるんですが。


 じゃなくて。


「確かに、劉備どのの名は聞いた事がありますな。

 天の御遣いという者の噂も聞いた事が有りますが……」

「それでは、」

「それと面会は別の話ですな。

 義勇軍と申されましたが……どうみても、この街で見覚えのある、あぶれ者を集めただけにしか見えませんぞ。

 大体において、給金を提示しての募兵に応じなかったこの連中が、いきなり志に目覚めてなんぞ……。

 ちゃんちゃら可笑しいわ!!

 きさまら、本気で義勇軍だというなら、今から賊の討伐に行って貰おうか!!

 そこで死んだら、実家に見舞金の一つでも包んでやろうさ!!」


 俺の一喝に、蜘蛛の子を散らすよう、ばらけて逃げ去る、あぶれ者連中。


「で、面会でしたか……」

「はは、は」


 なんか、乾いた笑いで固まってる、劉備さん御一行。


「策を用いて取り入ろうとされるなど、ご友人といえど許される事ではありませんな。

 申し訳ありませんが、お引き取りを」


 ちと怖いが、一歩踏み出して、城門を指差す。


「ふむふむ、これは金千どのが一本上手でしたなぁ」


 こいつ、メンマをツマミに酒呑んでやがる。


「ですが、そう堅い事を言わずに、取り次いでやってもよいのではないですかな?」

「ほんとか!!」

「趙雲どの!?」


 ぐあぁ、後ろから撃たれたあぁ。

 主人公さんが、凄い勢いで食いついて来てるし。


「ご学友を追い返したとなれば、伯珪どのも残念がるのではありませんかな?」

「其れは御尤もですが、どう見ても己の基盤の無さを棚上げして此方に頼る気の者を。

 しかも平身低頭して乞うならば、いざ知らず。

 策を弄してなし崩しに、人の良さに付けこもう等と、徳ある者の行いとは思えぬ所業。

 そんな者を、勝手・狭量と言われようと、取り次ぐ訳にはいきませんな!!」


 これでどうだ!!


「あーら、お見事ねん。

 プレイヤーの行動は、そのロールプレイでも能力値の優劣以外の部分で作用するの。

 今のは相手の裏技めいた行いを、物の道理を押した正攻法で押し返したから、結構きいてるわよぉ」


 マッチョの解説はいったー。


「貴様、桃香さまを愚弄するか!!」「お姉ちゃんをいじめるななのだ!!」

「お願いします、白蓮ちゃんに会わせて下さい!!」「騙そうとしたのは俺のせいなんだ、だから頼む、桃香を会わせてやってくれないか!!」


 力づくの詰め寄り、そして劉備さんから凄まじい、お願いパワーが!?

 何というフェイス・フラッシュ。

 これが、漢王朝皇族の力かあ!!

 因みに主人公さんからは、女性限定なのか、特に何も感じなかったが。

 じゃなくて、抵抗しないと、なし崩しにズルズル行ってしまいそうだ。


「なら、ここで、運を使ってのリカバリーねん」


 運の61ポイント全てを、魅力の40にのせて、抵抗!!

 流されそうだった場の勢いが、此方に戻って来た。

 恐らくは、序盤で未だ覚醒前の劉備さんだったおかげで、抵抗が出来たんだろう。

 この勢いなら言える。


「だが断る!!」


 そこからは、一瞬の内に全てが起こった。


 断られて、へちゃんと腰を落とす劉備さん。

 失意に固まる主人公。

 激昂・マジ切れして、得物を振り上げる関羽・張飛の二人。

 流石に、割って入ろうとする趙雲さん。

 目の前であー、ヤバイなーと思いつつ、動けない俺。

 ゆっくり動く中で、趙雲さんの槍が、おチビさんの蛇矛を反らし、火花が散る。

 其れを見て、関羽さんは一瞬、我に返ったか刃が鈍り、なんとかたたっ切られずに済みそうに思えた所で、眼の端に普通の人がやってくるのが見え。

 このままだと、なんか結局はシナリオ通りになってしまいそうで、妙にムカついたので。

 止まりかけた刃に向かって、一歩踏み込んでみた。

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