36(マイ外史中)
気が付くと、見覚えのある部屋に立っていた。
普通の人の執務室に似た其処は、マイ外史の執務室。
「さて、ちゃんと此方に、全員来ていますかな」
マイ外史の情報にアクセス、人員ステータスに目を通す。
一周目:劉備・関羽・張飛・公孫瓚・趙雲・ヤス
二周目:劉備・関羽・張飛・単福・袁譚・袁熙・袁尚・蹋頓・丘力居・李氏・楊氏・キン・チョイ・チャン・武官系:120名・文官系:30名・その他、魅力系等:50名
うん、後半のモブの扱いが酷いな。
しかし、思ったより文官系というか、政治・知力の特化型が少ないな。
そのくせ、盗賊上がりの武官系は……まあ、アベレージ型の連中は政治も知力も20~30程度は有るっぽいから、数で押せば良いのかもしれないけど。
「ちょっと、ごめんなさぁい」
突然、天からマッチョの声が、響いてきた。
「ん? まだ何か、あるんですかな?」
「まぁ、なんて冷たい言葉。
はっ、もしや気のない振りで、漢女のハートにするりと「怖いこと言ってないで」あらん」
モジモジするな。
「恥ずかしがらなくても、いいのにぃ♪」
「そう言うのないから!!」
「仕方ないわねぇ、そういう事にしておいて、ア・ゲ・ル」
「……」
「ここに来たのは、移行したデータについて、もう一つ相談があるのよぉ」
「?」
「要は攻略途中の、白蓮ちゃんと星ちゃんの事ねん」
「はぁ」
「フラグ自体はある程度立ってるから、あとは時間の問題だったんだけど、途中で落ちちゃったから。
どうするかってことね?」
あら、無理臭いかと思ってたんだけどな、フラグ立ってたのか?
「しかし、どうするかと、言われましても」
南郷さん辺りは? 攻略できそうなら、邪魔するのも。
「うーん、星ちゃんの攻略に、手を掛けてるプレイヤーは、未だ居ないわねん。
信頼度が高い子は居るんだけど、取っ掛かりの時点で、食い違ってる感じかしら?」
南郷さん乙。
「あと、白蓮ちゃんには、積極的に攻略掛けてるプレイヤーが居ないから、あなたが一番近いのよねぇ」
「それで?」
「一応、指輪分のポイントの負担で、此方に移行しても良い。
という話なんだけど、どうするのかしらん」
「据え膳はいただきますよ」
一万ポイントで指環二個取り出す。
「大概ねぇ。 これは、時間あたりのポイント購入に、制限を掛けないといけないかしらん。
何かしらの問題に、発展しそうで怖いわぁ」
こいつってば、絶対中の人が居るだろ。
そんな心配をするNPCがいるか!!
「とにかく、二人は移行するわねん。 あでゅー」
マッチョが消えた。
思わぬ拾い物、といって良いのか……ふむ、南郷さんにメールでも送っておこうか。
なんとなく掴めてきた、趙雲さんの攻略法とか。
さて、移行が大丈夫なら、マイ外史での活動許可を……って、三桁人数分を繰り返すのか!?
ちょっと待てぃ。
流石にそれは厳しいぞって、あれ?
活動状態になってるな。
今回はイレギュラーだったから、活動許可状態で移行されてんのかな?
という事なら、集まって貰おうか。
「そこのコピーさん。
皆さんを此方に呼び集めて頂けますかな?
私は少し休みますので、揃ったら起こして下さい」
と言い置いて、休むこと暫し。
うつらうつらしている所を、体を揺すられて目が覚めた。
「主殿、揃ったぞ」
ん? 白蓮さん。
顔が近いですよ……うん、いつも通りの美人ですね。
「いただきます」
「ちょ、こらっ、あん」
寝床に引き込んで、胸元に顔を埋める。
控え目だが趣味の良い香りがする。
両手で突き放そうとはしているものの、それほど無茶な力は感じない。
本気だったら、吹っ飛ばされてるだろう。
なので、そのまま付け込んで、柔らかさを堪能させていただくということで。
「いい加減に、し「おっと危ない」もう皆が揃ってるんだぞ」
流石に、責任感の強い白蓮さんは、流されないですね。
一瞬、本気の力を感じて焦ったわ。
「では、参りましょうか」
執務室に戻ると、其処にはズラリと並ぶ文武百官……実際に百人超えてるだけに、迫力あるな。
というか、ネームド以外は何故かメイド服なので、どこぞのチェーンレストランの朝礼じみてるが。
「無事揃ったようで、安心しました。
それでは、これからも宜しく願います」
応えがわりの綺麗に揃った一礼。
ちょっと感動しつつ、人数を割り振っていくことにする。
いやー、好きなんだよね、こういう人員配置とか、IF小説とかの艦隊編成とかさあ。
さて、副官は変わらずの、白蓮さんだよね。
内向きのトップには、刃鳴さんと言いたいとこだけど、軍師を内向き専門にするのは勿体無い気がする。
やはり参謀チームのトップ……つっても、軍師級知力特化って、一人しかいないが、とりあえずは役割をそこに。
ああ、李氏と楊氏の、お姉さんコンビをつけとこうか。
その代わりの、内向きのトップは伯珪さんというか、白蓮さん二号か?
いや、桃香さんかな? あ、二周目の方で。
その下に袁三姉妹つけて、その下に文官連中かな?
ああ見えて、袁譚さんは、サポートがあれば、そこそこに太守職できるしな。
軍事のトップは星さんだろうな。 一周目の方の。
うん、呼び方を考えないとな……名前は変えられるけど、オリジナルのキャラクターというか、女性は変えたくないからなぁ。
男はどうでもいいけどさ。
その星さんの下に、蹋頓さんと丘力居さん。
この三人の下に、武官連中を40×3セット。
全体のストッパー役に伯珪さん、二周目かね?
ああ、刃鳴さんの実働要員に趙雲さん二周目、桃香さんの実働要員に愛紗さん(二周目)だな。
鈴々さんは、二人纏めて、護衛に……結構、身の危険を感じる事が有ったしなぁ。
最悪、張飛二枚に公孫瓚という、三枚のカードを用意しておいて、抜かれるってのは、それこそ呂布に襲われる時くらいだろう。
あと、残りは……一周目の劉備さんと関羽さんか。
そういや、こっちの内政の一部を任してたんだったな。
どうなったんだろうか? 報告を聞いてみるか。
「で、どうしてこうなった?」
呼ぶのも何だからと、仕事をしているらしい現場に出向いてみたら。
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
なぜ、メイド喫茶!?
箱は小さいが、えらい繁盛している様子。
「どういう事なんでしょうかな?」
「先生!! 私、判ったんです!!」
メイド服を着た劉備さんが、勢い込んで詰め寄って来た。
「皆が笑顔になる為には、御飯と仕事と、ちょっぴりの楽しみが必要なんだって!!」
「ほう、それは素晴らしい所に、気付きましたな」
おいおい、なんか変な方向に、覚醒してるっぽいぞ。
「最初、この街で困ってる人の為に、炊き出しをしたんです。
でも、それだけじゃ前に進まないんだって気がついて、皆が働ける場を作って。
でも、働く場があって、ご飯が食べられても、笑顔になれない事もあるんです。
何か楽しみが無いと駄目なんだって。
それで、ちょっとした楽しみや、少しの贅沢が出来る場を作りたくて!!」
言ってる事は凄く真っ当なのに、どうしてメイド喫茶になったし。
「皆、本当に笑顔になってくれるんだよ♪」
「それは、良かったですな」
「でもね、ここが上手く行ってるのも、先生の御蔭だって判ってるの。
私がやったのは、先生の手が届かなかった所を少し、お手伝いしただけなんだって。
それくらいしか出来てないんだって。
でも、それでも良いんじゃないかって、思ったんです。
私でも出来る事があって、それで笑顔になれる人が居る。
だから、今は先生のお手伝いを、一生懸命やろうって。
だから、これからも宜しく、お願いします!!」
実際、誰テメェってレベル。
なんだろう、凄く負けたような気がするのは。
ということで、劉備さん(一周目)には、住民慰撫やらをやって貰う事になりました。
魅力特化な人達も、オマケで付けておいて、関羽さん(一周目)は、実働&警備です。




