34
「袁顕思ですのよ」
「袁顕奕だよ」
「袁顕甫です」
うん、ちょっと待とうか。
「…………」
「………………」
「……………………」
「なるほど」
長い話だったんで纏めると、袁家の傍流の馬鹿ぼんが、近場にお手付きカマして産まれた、数多い不祥事話の一つの結果だそうだ。
因みに三人は異母姉妹だが、袁家のはずれのはずれで、商人やってるとこに纏めて預けられるも、そこの身代が潰れて、今に至ると。
「苦労したようですな」
世が世なら、お姫様ってとこなんだろうけどな。
あ、因みに、袁譚・袁熙・袁尚さんですね。
しかし、この張三姉妹の偽物で、袁三姉妹とか、どこかの誰かの投稿武将だろ!!
こんな設定、ランダムじゃありえねえ。
「しかし、袁家に身を寄せることは、出来なかったのですかな?」
「無理無理、今ならともかく、当時はまだ袁家の先代とかに睨まれてたのよ。
下手に顔を出したら、消されちゃうわよ」と、袁熙さん。
「今更ですし、それなりに姉妹だけで、生きてきた意地もありますのよ」と、袁譚さん。
「とはいえ、今はこんな事になっていますが、とほほ」と袁尚さん。
本当に苦労してるなぁ。
因みにステータスも、魅力特化とはいえ、そこそこマトモなんだよあぁ。
劣化劉備さんのバージョン違いくらいか。
この三人が居れば、顔良さんも楽ができるだろうに。
とにかく、村人さん達を幽州の境まで送った後、物資集積地の陣まで戻った。
三人には同道して貰っている。
留守番をしていた白蓮さんが三人を見て、袁紹さんを思い出したのか、凄く嫌な顔をしていたが、少し話した後は、肩を叩きながら涙ぐんでいた。
「それで、主殿? あの三名は、どうなさるおつもりですかな?」
ニヤニヤと、やたらといい笑顔で星さんが仰る。
「どうせ、あのお姉ちゃん達も、食べちゃうに決まってるのだ」
純真だった鈴々さんに、そういう事言われると切ないです。
「あら、そういう事でしたら、別に構いませんのよ?」
「今まで、たまたま運が良かっただけで、妾だなんだって話はよくあったわ」
「どうせ、先程の賊に捕まっていれば、もっと酷い事になっていたと思いますから」
げ、聞いてたんですか?
「不味かったか? これからの事を相談しようと思って、連れてきたんだけど」
白蓮さん……。
「いえ、大なり小なり、そういう気持ちもありました。
言い繕う必要がないのであれば、率直に話させて頂きましょう。
どうでしょう、そういう事を望んでいないとは言えませんが、先ずは私にお力をお貸し願えませんでしょうか?」
「判りました。 私の真名は言羽ですのよ」
「私は音羽」
「思羽です」
「私の名は金千、字は満腹。 どうぞよろしくお願いいたします」
ということで、更に陣容が厚くなったぜ。
主に文官出来そうな人が山盛りになってきたな。
曹操さんみたく、一定以上の才しか得ないということはしないからな。
とりあえず使い道が有りそうなら、ゲットする。
質も要るけど量も馬鹿にできないと思うんだよ、うん。
「何やら考えて居られることは読めますが、その心は?」
「私専用歌姫を肴に、旨い酒が飲めそうですな……はっ!?」
「「「……」」」
「星殿……何を言わせるのですか」
「いやいや、正直で宜しいのではないですかな。
そういう主殿が、私は好きなのですよ」
「それはそれは、ありがとう御座います」
「いえいえ」
はあ、なんというか、疲れたわ。
「もし良ければ、この陣中で歌って頂けますかな?
無論、張三姉妹の偽物ではなく、貴方がた本来の姿で」
ということで、この駐屯地で、臨時ライブが行われましたとさ。
それから明けて、次の合流に向けての準備を行いつつ、情報収集&ご機嫌伺い。
某幽州刺史殿に、中央に栄転されるんでしたら、後任には普通の人をよろしくね的なお手紙と、袖の下を贈っておく。
ぶっちゃけると、太守職くらいなら、売官の相場次第で、買えちゃうんだけども。
情報収集的な方では、順調に黄巾の討伐は動いている様子。
細かい奴を、デカイのと合流する前に幾つか潰せているようだが、デカイのはデカイので、既に結構な数になっているようだ。
それでも、練度の差で何とかなる幅では、収まる予定らしい。
ただ、某黒山賊の張燕さんが、微妙に動いているのが不安要素といえる。
積極的に黄巾と協働する事は、今までの所は見受けられないので、一緒に当たる羽目には、ならないんじゃないかと見られていますが……。
「不味い事になった」
白蓮さんが、普通の人からの伝令を連れて、やってきた。
「もしや、敵が増えましたか?」
「いや、もっと悪い。 味方が減った。
張燕の動きに腰の引けた中央が、官軍を戻したそうだ。
張燕の動きは判らないが、三万のうち八千が洛陽に戻った。
これで、敵の数が四万と見て、およそ半数。
これは、練度に差があるとは言え、厳しい数だぞ」
「となると、素直に退きたい所ですが」
流石に、それはできないよな。
一当てして、散らす位はしないと。
「とにかく、合流場所に進む間も情報収集は、続けておいて下さい」
「了解だ」
それから、明けて二千の兵と輜重隊を引き連れて、合流場所へ。
半日と待たずに、合流できたはいいが、軍中の空気が悪い。
そりゃ、官軍が尻尾巻いて逃げるとか、普通は考えられんわな。
斥候は、黄巾連中の集結場所を特定、兵数も約四万と確認済み。
近場から奪った物資を集積して、結構な量の物資を握っているそうだ。
「あんな連中に居座られたら、たまんないぞ」
集まっての軍議中に、普通の人が疲れた声を出す。
「とにかく、連中を動かさない事には、話しにならないわね」
曹操さんが思案顔。
「一つ、案があります」
「桂花?」
「あの連中、どうも頭首の居場所を、把握できていないようです。
ですから、そこを突きます」
「あ、偽報」
「荀彧しゃん、凄いでし……あぅ、かんじゃった」
ネコミミの思考を、あわわとはわわが追っていく。
なるほどね。
「『頭首殿が官軍に捕まった。 目前の敵は置いて、都へ向かう官軍を追うのだ』とでもすれば、連中の事です。
己の優位を捨て、愚かにも動きを見せるでしょう。
例え全てが動かないにしても……いえ、むしろそちらの方が、各個に対処ができるという物です」
ふむ、さすがはネコミミさん、賢いな。
「あら、いいですわね。
なかなかに洒落が利いていて、気に入りましたわ」
おや、思いがけず、袁紹さんに気に入られたか。
ネコミミさんが、微妙な顔をしている。
こうして方針が決まり、動き出すことになったが、うちの部隊は合同軍には合流しないことにした。
二千の騎兵はそれなりに大きい戦力であるが、烏丸騎兵と言う所で、微妙な顔をされたわけだ。
まあ、急いでたんでしょうがない部分もあるが、傭兵稼業はともかく、正規軍と合同というのは、辞めておいたほうが良かろうという判断である。
とりあえず、持ってきた物資は全部渡し、輜重を空にして移動、合同軍の陣から少し離れておく。
偽報については「頭首を捕まえた」「官軍が身柄を握っている」「都についた時点で斬首」等々の文を矢で射込むことにするそうだ。
そんなのに引っかかるのかと、思わなくもないが、荀彧・諸葛亮・鳳統のセットでかかられたら、どうやっても黄巾連中如きには抵抗できまい。
ついでに俺も兵糧目標に火を掛けてみるつもりである。
さて、どう成ることやら。