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今回ですが、もしかするとスルーして、現実パートに行くように変更するかもしれません。
ぶっちゃけると、同キャラ回収について、あんまりハッキリ詰まってないのに、そっちに走ってしまったからでして。
お話メインに考えると、入れないほうが楽ではあるんですが。
ただ、なんかグダグダ書いてるうちに、楽しくなってきて、ズルズル書いてみた結果、勿体無くなってきたので、とりあえず上げてみます。
あんまり先行き明るくないかなーと思ったら、こっそり変更してるかもしれませんが、その時はごめんなさい。
三回くらい書いたり消したりしてるんですが、だんだん外道っぽくなるのはなんでだろう。
1/21 誤字指摘を頂いた所を修正。
「これは、少々どころでなく、厄介な事になりそうですな」
先乗りして物見に来てみたが、良い点と悪い点は何処にもあるもんだと再認識。
良い点、敵さんの実兵力が、そう大層な事になってなかった件。
実際の所、実働が三千も有れば良い方だろう。
あと、砦っぽいものを想像していたが、実の所、難民キャンプってのが正解だろうか。
一部に屋根のある建物と、周囲に簡易な柵が在るのをみると、元は村だったのか。
で、悪い点。
柵の外に、中に居る連中を超える数の難民が集まっており、今も現在進行形で増え続けている件。
見るからに、食い詰めて逃げてきた流民の体で、まともに戦えるとは思わないが、黄巾の連中の事を聞いて、希望を求めて集まってきたんだろう。
このまま増え続けても未来はないと思うが、それはそれで、こんなとこであんな数が崩壊されても困る。
ここから北平・遼西まで距離があるとはいえ、あんな数が、この近辺で吸収できるはずもなく、ギリギリ治まっている連中まで巻き添えで崩壊すれば、少々の距離など、雪崩を打って押し寄せる暴徒(死兵)の前には、頼りないにも程がある。
ここに至って、こいつらを放置する事は、できないという事になるのだが。
「あー、リタイアしてーわ」
どう考えても、面倒な上にメリットないし。
一番簡単な手段として『黄巾連中を片付けた後、難民連中を幽州の外に向けて追い散らす』なんていう手段が浮かぶけど、ちょっと此方の人数が足りないような気がするし、上手く行っても悪名しか上がりそうに無い上に、失敗したら大顰蹙だよ。
それに大体。
「どう考えても、此方で手を出す意味がないですしな」
どうせ暴発するにしても、態々ここで、俺が引き金を引いてどうするって話だよね。
自陣営の領内ならともかく、袖の下を渡して彷徨いてるような状態で、そんな事を、やらかしたりなんかしたら、それこそ普通の人に大迷惑かけちゃうよ。
やはり、ここは見なかった事にして、引き上げる事にしようか。
「満腹殿!!」
「どうされました?」
趙雲さんの声を聞いて、なぜか不安を感じるのは、俺の気のせい……ではなさそうだ。
なんか、遠目に見える長蛇の列。
うちと同じ位の規模の軍勢が、黄巾連中の向こうに見える。
激しく嫌な予感がする。
敵なら嫌だが、尻尾巻いて逃げるので関係ない。
問題なのは……。
趙雲さんが、持ってきた書簡。
幽州刺史の爺さんから、この間の袖の下に対する礼と、勇名(笑)を馳せる、うちの部隊が目の前の黄巾連中を討つとのことで、援軍を送ったから使ってくれと。
で、その援軍の将の名前が……劉備っていうんだってさ。
やーめーてーくーれーよー!!
それから夕刻になって、劉備さん一行が此方に合流した。
なんか、趙雲さんがテンション上がってる。
関羽さんと張飛さん見て、バトルジャンキーが悪化したのか。
いや、それは今は置いといて、えーと、兵数は二千と、うちより多いが歩兵編成で足が遅いな。
その上、装備は微妙で、更に言うと……。
「本当に、ごめんなさいっ!!」という劉備さんの一声をいただきました。
糧食、持って来てないとかどうよ。
あの幽州刺史のジジイ、どう考えても厄介払いだよな。
多分、噂に聞いて、何かの役には立つかと、劉備さんの義勇軍を受け入れてはみたものの、仕官の誘いは断るわ、治世に批判的な夢を語って周囲を惑わせるわ、扱いにくい上に食だけは食うしで、持て余してたんだろうな。
其処に黄巾の連中がたむろってると来て、どうしたもんだろう、やらかしたら責任問題だしな、って所に、うちの部隊がやって来て。
コレ幸いと、厄介者を援軍名目で押し付けて、こっちが引きにくい状態にしつつ、責任も押し付けて、万が一にでも上手くいったら、援軍出した分の成果を掠めるだけでも儲け物ってとこか。
「全くもって、素晴らしくムダのない策ですな」
っていうか、無理ゲーじゃない?
もしかして、アレですか? 難易度上がらないようにしてたつもりが、ここ最近のポイントバンザイプレイで、またぞろアホみたいに高難度イベント呼び寄せちゃったのか?
どこまでを敵とすればいいのか?
うちの陣営(大)を守る為には、この辺の連中(小)が犠牲になるのは仕方が無いのか?
なんていう、普通に某『赤い未来の英雄』が、魂を磨耗させそうな面倒な状況で、食い詰めた劉備義勇軍が、おまけで付いて来るとか、どんな嫌がらせだっての。
「あの、金満腹さん」
お? 劉備さんか? ああ、関羽さんも張飛さんも居るな。
とりあえず、張飛さんには視線を向けないように注意しておこう。
あと、白蓮さん達を呼んどいた方がいいかな?
なんかの弾みでバッサリとか怖すぎるしな、遣いを出しておこう。
「確か、義勇軍を率いて居られる……劉玄徳様でしたか」
「はい、先程は皆のご飯、ありがとうございました」
別にただで奢ったつもりはないんだけどな。
「補給のあてがなくて、困ってたんです」
「どうしてまた、そのような事に?
幽州刺史殿からの援軍派遣という事でしたら、物資の手当はあるでしょうに。
いくら軍事に疎いからと、そのような不手際を為さる方とは思えませんが。
むしろ、治世においては、遣り手という印象を受けましたぞ」
こんな策を仕掛けてくる奴だからな、知力も政治力も高かろう。
それが補給なしで投げてくるのは、どうせ仕官を断られたり、批判食らった意趣返しだろうな。
「実は……」
「いえ、特にその辺りの理由を伺うつもりはありません。
刺史殿と義勇軍の間に何があろうと、私が口を挟んで良い所以はありませんので。
とにかく、貴方がたに何の用意もない事は了解しましたので、この件が片付く迄は、此方で請け負いましょう」
「……ありがとうございます」
しゅんとした劉備さん、なんか苦労やら活躍やらで成長してるせいか、前周回時より攻撃力が高い。
無駄に罪悪感が強いじゃないか。
「しかし、刺史殿からの援軍……どういう意図かは別にして、これで引く訳にも行かなくなりましたか」
「え、そんな、引くなんて駄目です。
ここで、何とかしないと、皆が大変なことに」
大変な事は判りますが、やらかしても大変なのです。
主に責任問題で。
「そうなのだ!! 皆ご飯が食べられなくなるのだ!!」
なかなか鋭い所を突いてきますね、張飛さん。
「しかし、あれだけの数をどうにかするというのは、実際には相当に厳しい事ではないでしょうか?
玄徳殿には、なにか良い方策が、おありでしょうか?」
「えーと、黄巾の人をなんとかすれば、皆帰ってくれるんじゃないかな?」
「桃香様の言うとおり、中核となっている連中を退治すれば、後は散り去ることでしょう」
割とアッサリ答えられて、ビックリしたわ。
「確かに、それは正しいかと思いますが……玄徳殿は、お強いですな。
私は、黄巾の連中に刃を向けるとなれば、その者達を希望にしておる者達も、こちらへ向かって来るかもしれない、その者達も手に掛けねばならないのか、そう思ってしまいます。
賊に加担した者は、確かに無辜の民とは呼べないかもしれません。
しかし、それでも、私は我が民ではないとはいえ、治世の犠牲と言える者達にまで、刃を向けるのが恐ろしいのです。
いえ、何とかしなければ、ならないのは判っておりますが……くっ、これは臆病者の言い訳ですな」
無駄に魅力に400ぶちこんで、苦悩の表情でセリフを搾り出してみる。
うん、きっと劉備さんは七面倒臭い夢を語ってくると思ってたのに、すっごい普通に答えを返されたのが悔しかったからじゃないぞと。
「それに」
「えっ」
劉備さんが、こちらを何か怯えた目で見ている。
「この地の民を守る為には、たとえ戦いで命を落とす事はなかったとしても、元の土地に追い返す事が、死を意味する事だとしても、そうせざるを得ない。
どの道、あの者達には救いの道は残されていない。
なぜ天は、あのような哀れな者達を……そして、なぜ私にそれを為させようとするのか」
こっそりと運を回復させつつ、再び魅力に400投入で嫌がらせ。
両の手を震わせつつ顔に持って行って、地に膝をついて崩れ落ちながら号泣してみる。
「くっ」
やばい、余りに悲嘆の臭い台詞を吐きすぎて、本気で悲しすぎて気分が悪くなってきた。
きっと悪酔いに違いない、だれか助けてくんないかと、そっと視線を流したら、白蓮さんがやって来ていて、アイコンタクトに答えてくれた。
いい加減に、劉備さん達への嫌がらせも飽きてきたし、退場する事にしよう。
「主殿!!」
白蓮さんが、大根臭い演技で倒れた俺を、そっと抱き起こしてくれた。
(補足:前にも書きましたが、周回外のキャラクターは、担当プレイヤーとパートナーズ以外には、男女の区別はついても、一般兵か文官モブに見えます。 たとえ、被った真名を叫んでも、担当プレイヤーとパートナーズ達にしか認識されません)
ナマズ髭で糸目の中年オッサンが倒れたところで、絵的には厳しい物があると思われるのだが、さっきまでのやり取りのせいか、天幕内に騒然とした空気が満ちる。
「また、貴方は……」
思わせぶりに呟く白蓮さんが、無駄に演技派です。
「おっちゃんは任せるのだ」
いつの間にか続いてやってきていた鈴々さんが、俺を軽く担いで寝台へ。
そして、絶対に出待ちをしていたに違いない星さんが、天幕に飛び込んできて。
「主殿!? 一体何事が?」
天幕の中を見渡しつつ、殺気を垂れ流す。
「これは一体どういうことですかな?」
そして、白蓮さんを睨み上げ、非難する。
「やかましいぞ。 何時ものことだ。
相変わらず、ここ何日も満足にお休みになられていない。
趙将軍を伯珪様の元に留める為、伯珪様を幽州刺史とする為の名声を得んと、連戦を続けて居られた。
忌々しいことにな」
って白蓮さん、趙雲さんが、天幕の向こうにいると判って言ってるよね。
思いっきり殺気向けてるもんね。
さすが、軍師一歩手前のパラ持ち、すごい演技です。
「それはどういう事か、詳しく聞かせて頂きたいですな」
そして、趙雲さん登場……場が混沌としてきました。
そして劉備さん一行が、凹んだまま空気です。
「これは趙将軍。 何か御用でしょうか?」
今は、取り込んでますという感じの硬い声の白蓮さん。
「いえ、先程、私の名前が出たようでしたのでな。
私を伯珪殿の元に留める為……とは、どういう事ですかな?」
はぁ、と溜息を付きながら、何を仰って居られるのやらといった風情の白蓮さんが答えを返す。
「この一ヶ月ほど、趙将軍の魅力に参って、主殿が戦場を引き回されている。
そういう名目で主殿は表に出ず、賊を討伐し、伯珪様の名声を高めつつ、趙将軍には武人として、働ける場を与え、この地に留まっていただく。
それで、お互い納得していたのではないのですか?」
いつの間に、そんな事が決まったんだというような事を、さも当然のように話す白蓮さん。
怖い子!?
「いや、まさか、あれ程のあからさまな芝居が」
打って変わって、驚愕の表情を見せながら呟き、趙雲さんへ視線を向ける。
「どういう事なのです」
趙雲さんが、なんとなく馬鹿にされていると感じたのか、硬い表情で、白蓮さんを睨み返す。
天幕の中の空気が最悪です。
「まず、言っておきますが、主殿の一番得意な策は、自身を侮らせること。
貴方は伯珪様に対しての興味が薄い。
ですから主殿は『私を餌に怒りを向けさせた後、調子に乗らせ、己が主導権を握っておるように思わせておくのが上策』と仰っておりましたが」
「なっ!?」
「流石に、そのような芝居が続く訳もないと、お互いに了解して居られるのかと思っておりましたが」
そんな馬鹿なとでもいいたげな、白蓮さんの言葉が趙雲さんを打ちのめす。
いや、そんな事は全く考えてなかったから、きっちり振り回されてたから。
最近、やっとこさ機嫌良くなって、視線が柔らかくなったのに、戻してどうするよ。
「多少目のある人物なら、主殿の裏に隠れた物を見抜く事は容易い筈。
丘力居様しかり、蹋頓様しかり。
そして、気付き、近づいてしまえば、捕らえられずに居られない。
それが仇となって、主殿が居なくなった時に、伯珪様に残る人物がいない故の苦労ですが」
エロい本性が隠れてます。
主に金の力で捕まえます。
それにしても白蓮さん、今周回の自分に、まあ辛辣な言葉を。
「私には、満腹殿の器量を計れなかったと言うのですかな?」
趙雲さんが、急激にご機嫌斜めになっていく。
「それはこの後、ご自身で確かめられるが宜しいでしょう」
って、投げっぱなしかい!!
「あのっ!! 黄巾討伐はどうなるんでしょう!!」
空気だった劉備さんが、話の切れ目を狙って、話題を戻しに来た。
「ご心配なく。 主殿が目覚められましたら、ご指示があるかと。
とりあえずは、兵を休めて頂いて、お待ちください」
「ほんとうに大丈夫なんでしょうか?
倒れる程悩んでいたのに!! それに、あの、難民の人達も!!」
さっきまで、気にもしてなかった癖にー。
まあ、さっき散々に難民の事で嘆き倒したからな。
これで、スルーできるなら、劉備さんじゃないわな。
「ふ、主殿を見くびって貰っては困りますぞ。
目覚めた時、その恐ろしさを味わう事でしょうな」
星さん……ハードルあげんなよ!!
「判りました」
明らかに期待してない風の劉備さんが退出して行く。
「楽しみにしておきましょう」
趙雲さんも。
そして俺は、上げられたハードルを何とかクリアするべく、三時間ほど寝ながら色々考えたよ!!
問題は、難民に尽きる。
こいつらを、どうするかが焦点だ。
敵に回すと邪魔で面倒な上に、逃げ散ったら、周囲が大変なことになる。
かといって、無視した所で、黄巾連中が居なくなれば、またこれも散ってしまう。
軍で追い散らすにしても、下手を打てば、また周辺が大変なことに。
つまりは引き剥がした上で、管理できるように、纏めておかねばならない。
「つまりは、こちらに引き込んで、味方にすれば良い訳です」
集まった皆に、端的に告げたら「大丈夫この子?」って目で見られたよ。
「玄徳殿は、この先の丘に陣張りを。
資材は用意しますので、柵と堀をお願いします」
「趙将軍は、騎兵を率いて、難民の目前に物資を投げて来て下さい。
ただし、これには文を付けておきます」
これがミソ。
「文とは?」
不審気な顔の関羽さん。
「難しいことではありません。
『十日後に攻め寄せる。
こちらへ付けば、飯を食わせ、後の面倒も見る』というものです」
「それは!? 本気ですか?」
「ええ、間違いなく。 私が責任を持って連れ帰ります」
唖然とする一同。
「とりあえず陣には、一万の兵を賄える輜重を設えます。
その上で、引き込んだ者を案山子がわりに置き、威圧。
それによって、更に引き剥がし。
最終的に、裸となった黄巾を叩きます」
うん、また金で解決するわけだね。
「そのような事が出来るのなら、なぜ?
あれほどに悩まなければならなかったのです?」
関羽さんの一言は、大変尤もです。
「皆は買い被っておるようですが、私には器がないのですよ。
そう、力に比しただけの器が。
そして、過ぎた力は災いしか呼びません。
だからこそ、私が力を使うのは、伯珪様の治世の中でのみと、決めておるのです」
「しかし、力有る者が動かねば」
「そうですね。 枠の外でも動かねばならない事もある。
目前の千人を救う為に、後の万人を害する事になるかもしれないとしても。
少々時間はかかりましたが、私は覚悟を決めました」
(意訳:面倒なので、金使って片付けるよ)
魅力に運400ぶち込んで、関羽さんを睨みつける。
あまり、突っ込んだことを聞かれても困りますので、やめて頂きたい。
「それはどういう事ですか?
人を助ける事が、誰かを害する事になるんですか?」
今度は劉備さんか……。
「簡単な話です。
私が此処で食料を買い集めれば、確かに銭は回ります。
しかし、いくら銭があったとしても、食い物がなければ、人は飢えるのですよ。
だからこそ、後に誰かを害する事を覚悟したといったのです」
「そんな……」
「人間は天ではありません。
人に出来る事など限られております。
全ての誰か等、救えはしない!!
もし、出来る事が有るとすれば、目前の誰かを救い、何処かの誰かを殺す事を覚悟し、それを選ぶことだけでございますよ」
同じく魅力に運を400叩きこんで、劉備さんに虚ろな笑いを向ける。
「……」
劉備さんが、何かを呟いたように見えたが、聞き取れなかった。
それよりも、何かがボキって折れたような音がした気がするぞ。
まあいいか。
「よくないわぁあああああああん!!」
おわうああああ!?
悲鳴を上げそうになったが、周囲が灰色の世界に変わっており、アヴァターが本来の俺に戻っている為に、また介入があったと気づいた。
「って、またかよ!! 今度はなんだよ」
おさげマッチョは、何度見ても慣れないんだよ!!
「なぁんだじゃなぁいわ!!
どぉうして、そんなにひねくれてるのよぉん!!
そこは『力を貸してくれませんか劉備殿』でイイでっしょぉう!!
なぁんで『誰かを殺す覚悟』(キリッ)とかぁ、やぁってんのぉう!!」
声が野太いから、叫ばれると怖いんですが。
「フラグ立つ所の筈が、桃香ちゃぁんの心が、折れちゃってるじゃぁなぁい。
どぉれくらいかというと、開始直後に魏ルート最後の華琳ちゃん位の衝撃受けたレベルで、心が折れちゃってるわぁん」
「あ、そりゃ終わってるんじゃない?」
この周回に蜀は出来そうにないな。
「前はチュートリアルだったからいいけどぉん、通常周回の序盤で君主クラスの人物を改変しちゃうとか、空気読めって総ツッコミ受けるわぁよん」
「じゃあ、さっきのは取り止めに?」
「関与してるメンバーが多すぎるかっらぁ、ちょぉっと無理ねぇん」
じゃあ、なんで出てきたんだよ。
「疲れたから普通にしゃべるわね。
まず、これは通常、負けイベントだってこと。
それをポイントで無理矢理クリアすることになりそうだから、また難易度判定でイレギュラーが起きるだろうこと。
それを伝えに来たのよぉ♪」
「とりあえず、続けていいって事か」
「それじゃ、あでゅー♪」
周囲が色を取り戻し、動き出した。
一日目、陣地の兵力が心もとないので、騎兵の内の数百程で荷物を投げておいたのを、難民連中が確保。
夜のうちに何人かが、陣の近くまでやって来たものの、投降者は居らず。
二日目、同じ辺りに続けて荷物を投げる。
九日後に攻めると文面を変えておいたのが効いたのか、夜のうちに三々五々といった感じで、百に満たない数が陣へ降ってきた。
女手は飯炊きへ、男連中には飯と銭を渡して、夜の内に一旦戻って貰い、流言の種に。
三日目、位置を変えて荷物を。 今のところ、黄巾連中が動く気配はない。
噂が流れているのか、夜になって三百人程だろうか、結構な数が流れてきた。
飯食って元気になったものは陣地の工事へ。
動けないものは、槍を持たせて案山子役に。
四日目、大回りして反対側へ投げ込みを行おうとしたら、黄巾連中が反応した。
警戒されているか?
とりあえず、その場に投棄して離脱とのこと。
夜になって、昨晩の倍程やって来た。
話を聞くと、黄巾の連中が、難民達から拾った食糧を奪っていったとの事。
地味に緊張状態らしい。
あと、陣地が結構な代物になってきた。
案山子も増えてきて、義勇軍と併せて置いとけば、攻め込まれる事は無いだろう。
とか考えてたら、飯場で自棄食いしてる超悲惨(誤字じゃない)な張飛さんを発見。
なんか、顔ボロボロというか、泣き腫らした顔で自棄食いしてる為、その迫力に誰も近寄れず、周囲の空間が開いている。
「翼徳殿? どうかされましたか?」
恐る恐る声を掛けてみる。
「オッサンのせいなのだ!!」
饅頭が顔面に飛んできた。
「話して頂けますかな?」
張り付いた饅頭を取りながら、隣に座る。
「……桃香姉ちゃんが泣くのだ。
私の夢は間違っているのかなって、泣くのだ」
「そうですか」
「愛紗も桃香姉ちゃんに、声を掛けてあげないのだ。
オッサンが苦しんで搾り出した言葉を否定できないって。
お姉ちゃんが泣いてるの見て、影で謝って泣いてるのだ」
なんつうか、ボロボロだなぁ。
昼間に鬼気迫った勢いで仕事してるのは、その辺を考えないようにってか?
しかし、なんか、チャンスじゃない?
前周の夢見る劉備さん&微妙な目で見てくる関羽さんじゃなく、ちゃんと(?)落とせた感じの劉備さんと、関羽さんをゲットする為の、チャレンジしてみるか。
おっと、その前に、張飛さんを餌付け&お誘いか。
「翼徳殿、どうぞ」
開いた卓上に饅頭と茶を置くと、凄まじい勢いで片付けてしまう。
「……美味しいのだ」
「翼徳殿、人間というものは、どんなに悲しくても、お腹はすきます。
いえ、お腹がすくと、余計に悲しくなります。
だから、せめて、お腹一杯、お召し上がりを」
そういいつつ、食事系アイテムで忠誠を削っていく。
それから暫くして、落ち着いた頃に。
「少しは、悲しみが紛れましたか?」
こくんと、一つ頷く張飛さん。
俺はそろそろと手を伸ばし、その髪を櫛るようにして撫でる。
中年の胡散臭いオヤジが、幼女を食い物で釣って、オッカナビックリで、そっと手を伸ばして触れようとするとか、見た目通報物だが、張飛さんは大人しく受け入れてくれた。
「さっきは、ゴメンなのだ」
ポツリと小さく呟いた。
「そうですね。 饅頭には謝っておかないと」
なんか、ビックリした目で見られた。
「オッサンは、鈴々の事、怒ってないのだ?」
「ええ、翼徳殿は優しい方ですね。
玄徳殿や雲長殿の為に、お怒りになっていたのでしょう」
「……」
無言で椅子を降りた張飛さんが、ひしっと俺の太鼓腹にしがみついて来た。
ぽんぽんと、軽く背を叩いてやり「私には、我慢も遠慮もは無用ですよ」と、囁くと、低く嗚咽を漏らし始める。
大声で泣き叫ぶかと思ったのに、耐えるような様子に、ちょっと感心したり。
やばいなぁ、単なる腹ペコ元気かと思ってたら、流石の主要キャラなだけはあるのか。
ファンになっちゃいそうだ。
「おっちゃん……鈴々のことは、鈴々って呼んで欲しいのだ」
どうやら、いつの間にかブレイクして、フラグも立ってた様子。
うん、素直なキャラクターは、いいですね。
フラグのツボが判らない相手は疲れます。
「それでは、私からは此方を」
指輪を渡し、指に嵌めてもらった。
「もし、辛い事があって、誰にも話し難いのでしたら、どうぞ私に話して下さい。
大した事はできませんが、お腹いっぱいの御飯くらいは、ご用意させて頂きますよ」
「うん」
多少は気が晴れた様子で、素直な笑顔を見せる張飛さん。
しかし、これは前周の鈴々さんより、傷が深いんじゃなかろうか?
前回の『周囲から与えられる形の寂しさ』に浸け込むだけでも、結構な依存度になってるのに、今回のような『自身の無力に絶望している孤独』に漬け込んだ場合、どうなっちゃうんだろうか?
根本原因の俺が言うことじゃないだろうけど、罪悪感が重いわぁ。
「さて」
張飛さんと別れた後、自身の食事を済ませて、陣地の中を一回り。
投降組の連中を義勇軍と組ませて、案山子をやらせているが、飯食って酒飲んで気心が知れたのか、割りと上手くやっている様子。
義勇軍の連中も、人手が増えて、工事と休憩の回りが楽になった事もあり、よく面倒を見ている。
これなら昼間の荷物投げに、うちの騎馬隊を全部出しても問題なさそうだ。
そろそろ、黄巾の連中も、こっちが何やろうとしてるか感づく頃だろうしな。