表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/79

27

 今回ですが、もしかするとスルーして、現実パートに行くように変更するかもしれません。

 ぶっちゃけると、同キャラ回収について、あんまりハッキリ詰まってないのに、そっちに走ってしまったからでして。

 お話メインに考えると、入れないほうが楽ではあるんですが。


 ただ、なんかグダグダ書いてるうちに、楽しくなってきて、ズルズル書いてみた結果、勿体無くなってきたので、とりあえず上げてみます。

 あんまり先行き明るくないかなーと思ったら、こっそり変更してるかもしれませんが、その時はごめんなさい。

 三回くらい書いたり消したりしてるんですが、だんだん外道っぽくなるのはなんでだろう。



1/21 誤字指摘を頂いた所を修正。

「これは、少々どころでなく、厄介な事になりそうですな」


 先乗りして物見に来てみたが、良い点と悪い点は何処にもあるもんだと再認識。

 良い点、敵さんの実兵力が、そう大層な事になってなかった件。

 実際の所、実働が三千も有れば良い方だろう。

 あと、砦っぽいものを想像していたが、実の所、難民キャンプってのが正解だろうか。

 一部に屋根のある建物と、周囲に簡易な柵が在るのをみると、元は村だったのか。


 で、悪い点。

 柵の外に、中に居る連中を超える数の難民が集まっており、今も現在進行形で増え続けている件。

 見るからに、食い詰めて逃げてきた流民の体で、まともに戦えるとは思わないが、黄巾の連中の事を聞いて、希望を求めて集まってきたんだろう。

 このまま増え続けても未来はないと思うが、それはそれで、こんなとこであんな数が崩壊されても困る。

 ここから北平・遼西まで距離があるとはいえ、あんな数が、この近辺で吸収できるはずもなく、ギリギリ治まっている連中まで巻き添えで崩壊すれば、少々の距離など、雪崩を打って押し寄せる暴徒(死兵)の前には、頼りないにも程がある。


 ここに至って、こいつらを放置する事は、できないという事になるのだが。


「あー、リタイアしてーわ」


 どう考えても、面倒な上にメリットないし。

 一番簡単な手段として『黄巾連中を片付けた後、難民連中を幽州の外に向けて追い散らす』なんていう手段が浮かぶけど、ちょっと此方の人数が足りないような気がするし、上手く行っても悪名しか上がりそうに無い上に、失敗したら大顰蹙だよ。

 それに大体。


「どう考えても、此方で手を出す意味がないですしな」


 どうせ暴発するにしても、態々ここで、俺が引き金を引いてどうするって話だよね。

 自陣営の領内ならともかく、袖の下を渡して彷徨いてるような状態で、そんな事を、やらかしたりなんかしたら、それこそ普通の人に大迷惑かけちゃうよ。

 やはり、ここは見なかった事にして、引き上げる事にしようか。


「満腹殿!!」

「どうされました?」


 趙雲さんの声を聞いて、なぜか不安を感じるのは、俺の気のせい……ではなさそうだ。

 なんか、遠目に見える長蛇の列。

 うちと同じ位の規模の軍勢が、黄巾連中の向こうに見える。

 激しく嫌な予感がする。

 敵なら嫌だが、尻尾巻いて逃げるので関係ない。

 問題なのは……。

 趙雲さんが、持ってきた書簡。

 幽州刺史の爺さんから、この間の袖の下に対する礼と、勇名(笑)を馳せる、うちの部隊が目の前の黄巾連中を討つとのことで、援軍を送ったから使ってくれと。

 で、その援軍の将の名前が……劉備っていうんだってさ。

 やーめーてーくーれーよー!!


 それから夕刻になって、劉備さん一行が此方に合流した。

 なんか、趙雲さんがテンション上がってる。

 関羽さんと張飛さん見て、バトルジャンキーが悪化したのか。

 いや、それは今は置いといて、えーと、兵数は二千と、うちより多いが歩兵編成で足が遅いな。

 その上、装備は微妙で、更に言うと……。


「本当に、ごめんなさいっ!!」という劉備さんの一声をいただきました。


 糧食、持って来てないとかどうよ。

 あの幽州刺史のジジイ、どう考えても厄介払いだよな。

 多分、噂に聞いて、何かの役には立つかと、劉備さんの義勇軍を受け入れてはみたものの、仕官の誘いは断るわ、治世に批判的な夢を語って周囲を惑わせるわ、扱いにくい上に食だけは食うしで、持て余してたんだろうな。

 其処に黄巾の連中がたむろってると来て、どうしたもんだろう、やらかしたら責任問題だしな、って所に、うちの部隊がやって来て。

 コレ幸いと、厄介者を援軍名目で押し付けて、こっちが引きにくい状態にしつつ、責任も押し付けて、万が一にでも上手くいったら、援軍出した分の成果を掠めるだけでも儲け物ってとこか。


「全くもって、素晴らしくムダのない策ですな」


 っていうか、無理ゲーじゃない?

 もしかして、アレですか? 難易度上がらないようにしてたつもりが、ここ最近のポイントバンザイプレイで、またぞろアホみたいに高難度イベント呼び寄せちゃったのか?

 どこまでを敵とすればいいのか?

 うちの陣営(大)を守る為には、この辺の連中(小)が犠牲になるのは仕方が無いのか?

 なんていう、普通に某『赤い未来の英雄』が、魂を磨耗させそうな面倒な状況で、食い詰めた劉備義勇軍が、おまけで付いて来るとか、どんな嫌がらせだっての。


「あの、金満腹さん」


 お? 劉備さんか? ああ、関羽さんも張飛さんも居るな。

 とりあえず、張飛さんには視線を向けないように注意しておこう。

 あと、白蓮さん達を呼んどいた方がいいかな?

 なんかの弾みでバッサリとか怖すぎるしな、遣いを出しておこう。


「確か、義勇軍を率いて居られる……劉玄徳様でしたか」

「はい、先程は皆のご飯、ありがとうございました」


 別にただで奢ったつもりはないんだけどな。


「補給のあてがなくて、困ってたんです」

「どうしてまた、そのような事に?

 幽州刺史殿からの援軍派遣という事でしたら、物資の手当はあるでしょうに。

 いくら軍事に疎いからと、そのような不手際を為さる方とは思えませんが。

 むしろ、治世においては、遣り手という印象を受けましたぞ」


 こんな策を仕掛けてくる奴だからな、知力も政治力も高かろう。

 それが補給なしで投げてくるのは、どうせ仕官を断られたり、批判食らった意趣返しだろうな。


「実は……」

「いえ、特にその辺りの理由を伺うつもりはありません。

 刺史殿と義勇軍の間に何があろうと、私が口を挟んで良い所以はありませんので。

 とにかく、貴方がたに何の用意もない事は了解しましたので、この件が片付く迄は、此方で請け負いましょう」

「……ありがとうございます」


 しゅんとした劉備さん、なんか苦労やら活躍やらで成長してるせいか、前周回時より攻撃力が高い。

 無駄に罪悪感が強いじゃないか。


「しかし、刺史殿からの援軍……どういう意図かは別にして、これで引く訳にも行かなくなりましたか」

「え、そんな、引くなんて駄目です。

 ここで、何とかしないと、皆が大変なことに」


 大変な事は判りますが、やらかしても大変なのです。

 主に責任問題で。


「そうなのだ!! 皆ご飯が食べられなくなるのだ!!」


 なかなか鋭い所を突いてきますね、張飛さん。


「しかし、あれだけの数をどうにかするというのは、実際には相当に厳しい事ではないでしょうか?

 玄徳殿には、なにか良い方策が、おありでしょうか?」

「えーと、黄巾の人をなんとかすれば、皆帰ってくれるんじゃないかな?」

「桃香様の言うとおり、中核となっている連中を退治すれば、後は散り去ることでしょう」


 割とアッサリ答えられて、ビックリしたわ。


「確かに、それは正しいかと思いますが……玄徳殿は、お強いですな。

 私は、黄巾の連中に刃を向けるとなれば、その者達を希望にしておる者達も、こちらへ向かって来るかもしれない、その者達も手に掛けねばならないのか、そう思ってしまいます。

 賊に加担した者は、確かに無辜の民とは呼べないかもしれません。

 しかし、それでも、私は我が民ではないとはいえ、治世の犠牲と言える者達にまで、刃を向けるのが恐ろしいのです。

 いえ、何とかしなければ、ならないのは判っておりますが……くっ、これは臆病者の言い訳ですな」


 無駄に魅力に400ぶちこんで、苦悩の表情でセリフを搾り出してみる。

 うん、きっと劉備さんは七面倒臭い夢を語ってくると思ってたのに、すっごい普通に答えを返されたのが悔しかったからじゃないぞと。


「それに」

「えっ」


 劉備さんが、こちらを何か怯えた目で見ている。


「この地の民を守る為には、たとえ戦いで命を落とす事はなかったとしても、元の土地に追い返す事が、死を意味する事だとしても、そうせざるを得ない。

 どの道、あの者達には救いの道は残されていない。

 なぜ天は、あのような哀れな者達を……そして、なぜ私にそれを為させようとするのか」


 こっそりと運を回復させつつ、再び魅力に400投入で嫌がらせ。

 両の手を震わせつつ顔に持って行って、地に膝をついて崩れ落ちながら号泣してみる。


「くっ」


 やばい、余りに悲嘆の臭い台詞を吐きすぎて、本気で悲しすぎて気分が悪くなってきた。

 きっと悪酔いに違いない、だれか助けてくんないかと、そっと視線を流したら、白蓮さんがやって来ていて、アイコンタクトに答えてくれた。

 いい加減に、劉備さん達への嫌がらせも飽きてきたし、退場する事にしよう。


「主殿!!」


 白蓮さんが、大根臭い演技で倒れた俺を、そっと抱き起こしてくれた。

(補足:前にも書きましたが、周回外のキャラクターは、担当プレイヤーとパートナーズ以外には、男女の区別はついても、一般兵か文官モブに見えます。 たとえ、被った真名を叫んでも、担当プレイヤーとパートナーズ達にしか認識されません)


 ナマズ髭で糸目の中年オッサンが倒れたところで、絵的には厳しい物があると思われるのだが、さっきまでのやり取りのせいか、天幕内に騒然とした空気が満ちる。


「また、貴方は……」


 思わせぶりに呟く白蓮さんが、無駄に演技派です。


「おっちゃんは任せるのだ」


 いつの間にか続いてやってきていた鈴々さんが、俺を軽く担いで寝台へ。

 そして、絶対に出待ちをしていたに違いない星さんが、天幕に飛び込んできて。


「主殿!? 一体何事が?」


 天幕の中を見渡しつつ、殺気を垂れ流す。


「これは一体どういうことですかな?」


 そして、白蓮さんを睨み上げ、非難する。


「やかましいぞ。 何時ものことだ。

 相変わらず、ここ何日も満足にお休みになられていない。

 趙将軍を伯珪様の元に留める為、伯珪様を幽州刺史とする為の名声を得んと、連戦を続けて居られた。

 忌々しいことにな」


 って白蓮さん、趙雲さんが、天幕の向こうにいると判って言ってるよね。

 思いっきり殺気向けてるもんね。

 さすが、軍師一歩手前のパラ持ち、すごい演技です。


「それはどういう事か、詳しく聞かせて頂きたいですな」


 そして、趙雲さん登場……場が混沌としてきました。

 そして劉備さん一行が、凹んだまま空気です。


「これは趙将軍。 何か御用でしょうか?」


 今は、取り込んでますという感じの硬い声の白蓮さん。


「いえ、先程、私の名前が出たようでしたのでな。

 私を伯珪殿の元に留める為……とは、どういう事ですかな?」


 はぁ、と溜息を付きながら、何を仰って居られるのやらといった風情の白蓮さんが答えを返す。


「この一ヶ月ほど、趙将軍の魅力に参って、主殿が戦場を引き回されている。

 そういう名目で主殿は表に出ず、賊を討伐し、伯珪様の名声を高めつつ、趙将軍には武人として、働ける場を与え、この地に留まっていただく。

 それで、お互い納得していたのではないのですか?」


 いつの間に、そんな事が決まったんだというような事を、さも当然のように話す白蓮さん。

 怖い子!?


「いや、まさか、あれ程のあからさまな芝居が」


 打って変わって、驚愕の表情を見せながら呟き、趙雲さんへ視線を向ける。


「どういう事なのです」


 趙雲さんが、なんとなく馬鹿にされていると感じたのか、硬い表情で、白蓮さんを睨み返す。

 天幕の中の空気が最悪です。


「まず、言っておきますが、主殿の一番得意な策は、自身を侮らせること。

 貴方は伯珪様に対しての興味が薄い。

 ですから主殿は『私を餌に怒りを向けさせた後、調子に乗らせ、己が主導権を握っておるように思わせておくのが上策』と仰っておりましたが」

「なっ!?」

「流石に、そのような芝居が続く訳もないと、お互いに了解して居られるのかと思っておりましたが」


 そんな馬鹿なとでもいいたげな、白蓮さんの言葉が趙雲さんを打ちのめす。

 いや、そんな事は全く考えてなかったから、きっちり振り回されてたから。

 最近、やっとこさ機嫌良くなって、視線が柔らかくなったのに、戻してどうするよ。


「多少目のある人物なら、主殿の裏に隠れた物を見抜く事は容易い筈。

 丘力居様しかり、蹋頓様しかり。

 そして、気付き、近づいてしまえば、捕らえられずに居られない。

 それが仇となって、主殿が居なくなった時に、伯珪様に残る人物がいない故の苦労ですが」


 エロい本性が隠れてます。

 主に金の力で捕まえます。

 それにしても白蓮さん、今周回の自分に、まあ辛辣な言葉を。


「私には、満腹殿の器量を計れなかったと言うのですかな?」


 趙雲さんが、急激にご機嫌斜めになっていく。


「それはこの後、ご自身で確かめられるが宜しいでしょう」


 って、投げっぱなしかい!!


「あのっ!! 黄巾討伐はどうなるんでしょう!!」


 空気だった劉備さんが、話の切れ目を狙って、話題を戻しに来た。


「ご心配なく。 主殿が目覚められましたら、ご指示があるかと。

 とりあえずは、兵を休めて頂いて、お待ちください」

「ほんとうに大丈夫なんでしょうか?

 倒れる程悩んでいたのに!! それに、あの、難民の人達も!!」


 さっきまで、気にもしてなかった癖にー。

 まあ、さっき散々に難民の事で嘆き倒したからな。

 これで、スルーできるなら、劉備さんじゃないわな。


「ふ、主殿を見くびって貰っては困りますぞ。

 目覚めた時、その恐ろしさを味わう事でしょうな」


 星さん……ハードルあげんなよ!!


「判りました」


 明らかに期待してない風の劉備さんが退出して行く。


「楽しみにしておきましょう」


 趙雲さんも。




 そして俺は、上げられたハードルを何とかクリアするべく、三時間ほど寝ながら色々考えたよ!!

 問題は、難民に尽きる。

 こいつらを、どうするかが焦点だ。

 敵に回すと邪魔で面倒な上に、逃げ散ったら、周囲が大変なことになる。

 かといって、無視した所で、黄巾連中が居なくなれば、またこれも散ってしまう。

 軍で追い散らすにしても、下手を打てば、また周辺が大変なことに。

 つまりは引き剥がした上で、管理できるように、纏めておかねばならない。


「つまりは、こちらに引き込んで、味方にすれば良い訳です」


 集まった皆に、端的に告げたら「大丈夫この子?」って目で見られたよ。


「玄徳殿は、この先の丘に陣張りを。

 資材は用意しますので、柵と堀をお願いします」

「趙将軍は、騎兵を率いて、難民の目前に物資を投げて来て下さい。

 ただし、これには文を付けておきます」


 これがミソ。


「文とは?」


 不審気な顔の関羽さん。


「難しいことではありません。

『十日後に攻め寄せる。

 こちらへ付けば、飯を食わせ、後の面倒も見る』というものです」


「それは!? 本気ですか?」

「ええ、間違いなく。 私が責任を持って連れ帰ります」


 唖然とする一同。


「とりあえず陣には、一万の兵を賄える輜重を設えます。

 その上で、引き込んだ者を案山子がわりに置き、威圧。

 それによって、更に引き剥がし。

 最終的に、裸となった黄巾を叩きます」


 うん、また金で解決するわけだね。


「そのような事が出来るのなら、なぜ?

 あれほどに悩まなければならなかったのです?」


 関羽さんの一言は、大変尤もです。


「皆は買い被っておるようですが、私には器がないのですよ。

 そう、力に比しただけの器が。

 そして、過ぎた力は災いしか呼びません。

 だからこそ、私が力を使うのは、伯珪様の治世の中でのみと、決めておるのです」

「しかし、力有る者が動かねば」

「そうですね。 枠の外でも動かねばならない事もある。

 目前の千人を救う為に、後の万人を害する事になるかもしれないとしても。

 少々時間はかかりましたが、私は覚悟を決めました」


(意訳:面倒なので、金使って片付けるよ)


 魅力に運400ぶち込んで、関羽さんを睨みつける。

 あまり、突っ込んだことを聞かれても困りますので、やめて頂きたい。 


「それはどういう事ですか?

 人を助ける事が、誰かを害する事になるんですか?」


 今度は劉備さんか……。


「簡単な話です。

 私が此処で食料を買い集めれば、確かに銭は回ります。

 しかし、いくら銭があったとしても、食い物がなければ、人は飢えるのですよ。

 だからこそ、後に誰かを害する事を覚悟したといったのです」

「そんな……」

「人間は天ではありません。

 人に出来る事など限られております。

 全ての誰か等、救えはしない!!

 もし、出来る事が有るとすれば、目前の誰かを救い、何処かの誰かを殺す事を覚悟し、それを選ぶことだけでございますよ」


 同じく魅力に運を400叩きこんで、劉備さんに虚ろな笑いを向ける。


「……」


 劉備さんが、何かを呟いたように見えたが、聞き取れなかった。

 それよりも、何かがボキって折れたような音がした気がするぞ。

 まあいいか。


「よくないわぁあああああああん!!」


 おわうああああ!?

 悲鳴を上げそうになったが、周囲が灰色の世界に変わっており、アヴァターが本来の俺に戻っている為に、また介入があったと気づいた。


「って、またかよ!! 今度はなんだよ」


 おさげマッチョは、何度見ても慣れないんだよ!!


「なぁんだじゃなぁいわ!!

 どぉうして、そんなにひねくれてるのよぉん!!

 そこは『力を貸してくれませんか劉備殿』でイイでっしょぉう!!

 なぁんで『誰かを殺す覚悟』(キリッ)とかぁ、やぁってんのぉう!!」


 声が野太いから、叫ばれると怖いんですが。


「フラグ立つ所の筈が、桃香ちゃぁんの心が、折れちゃってるじゃぁなぁい。

 どぉれくらいかというと、開始直後に魏ルート最後の華琳ちゃん位の衝撃受けたレベルで、心が折れちゃってるわぁん」

「あ、そりゃ終わってるんじゃない?」


 この周回に蜀は出来そうにないな。


「前はチュートリアルだったからいいけどぉん、通常周回の序盤で君主クラスの人物を改変しちゃうとか、空気読めって総ツッコミ受けるわぁよん」

「じゃあ、さっきのは取り止めに?」

「関与してるメンバーが多すぎるかっらぁ、ちょぉっと無理ねぇん」


 じゃあ、なんで出てきたんだよ。


「疲れたから普通にしゃべるわね。

 まず、これは通常、負けイベントだってこと。

 それをポイントで無理矢理クリアすることになりそうだから、また難易度判定でイレギュラーが起きるだろうこと。

 それを伝えに来たのよぉ♪」

「とりあえず、続けていいって事か」

「それじゃ、あでゅー♪」


 周囲が色を取り戻し、動き出した。




 一日目、陣地の兵力が心もとないので、騎兵の内の数百程で荷物を投げておいたのを、難民連中が確保。

 夜のうちに何人かが、陣の近くまでやって来たものの、投降者は居らず。


 二日目、同じ辺りに続けて荷物を投げる。

 九日後に攻めると文面を変えておいたのが効いたのか、夜のうちに三々五々といった感じで、百に満たない数が陣へ降ってきた。

 女手は飯炊きへ、男連中には飯と銭を渡して、夜の内に一旦戻って貰い、流言の種に。


 三日目、位置を変えて荷物を。 今のところ、黄巾連中が動く気配はない。

 噂が流れているのか、夜になって三百人程だろうか、結構な数が流れてきた。

 飯食って元気になったものは陣地の工事へ。

 動けないものは、槍を持たせて案山子役に。


 四日目、大回りして反対側へ投げ込みを行おうとしたら、黄巾連中が反応した。

 警戒されているか?

 とりあえず、その場に投棄して離脱とのこと。

 夜になって、昨晩の倍程やって来た。

 話を聞くと、黄巾の連中が、難民達から拾った食糧を奪っていったとの事。

 地味に緊張状態らしい。

 あと、陣地が結構な代物になってきた。

 案山子も増えてきて、義勇軍と併せて置いとけば、攻め込まれる事は無いだろう。


 とか考えてたら、飯場で自棄食いしてる超悲惨(誤字じゃない)な張飛さんを発見。

 なんか、顔ボロボロというか、泣き腫らした顔で自棄食いしてる為、その迫力に誰も近寄れず、周囲の空間が開いている。


「翼徳殿? どうかされましたか?」


 恐る恐る声を掛けてみる。


「オッサンのせいなのだ!!」


 饅頭が顔面に飛んできた。


「話して頂けますかな?」


 張り付いた饅頭を取りながら、隣に座る。


「……桃香姉ちゃんが泣くのだ。

 私の夢は間違っているのかなって、泣くのだ」

「そうですか」

「愛紗も桃香姉ちゃんに、声を掛けてあげないのだ。

 オッサンが苦しんで搾り出した言葉を否定できないって。

 お姉ちゃんが泣いてるの見て、影で謝って泣いてるのだ」


 なんつうか、ボロボロだなぁ。

 昼間に鬼気迫った勢いで仕事してるのは、その辺を考えないようにってか?

 しかし、なんか、チャンスじゃない?

 前周の夢見る劉備さん&微妙な目で見てくる関羽さんじゃなく、ちゃんと(?)落とせた感じの劉備さんと、関羽さんをゲットする為の、チャレンジしてみるか。

 おっと、その前に、張飛さんを餌付け&お誘いか。


「翼徳殿、どうぞ」


 開いた卓上に饅頭と茶を置くと、凄まじい勢いで片付けてしまう。


「……美味しいのだ」

「翼徳殿、人間というものは、どんなに悲しくても、お腹はすきます。

 いえ、お腹がすくと、余計に悲しくなります。

 だから、せめて、お腹一杯、お召し上がりを」


 そういいつつ、食事系アイテムで忠誠を削っていく。

 それから暫くして、落ち着いた頃に。


「少しは、悲しみが紛れましたか?」


 こくんと、一つ頷く張飛さん。

 俺はそろそろと手を伸ばし、その髪を櫛るようにして撫でる。

 中年の胡散臭いオヤジが、幼女を食い物で釣って、オッカナビックリで、そっと手を伸ばして触れようとするとか、見た目通報物だが、張飛さんは大人しく受け入れてくれた。


「さっきは、ゴメンなのだ」


 ポツリと小さく呟いた。


「そうですね。 饅頭には謝っておかないと」


 なんか、ビックリした目で見られた。


「オッサンは、鈴々の事、怒ってないのだ?」

「ええ、翼徳殿は優しい方ですね。

 玄徳殿や雲長殿の為に、お怒りになっていたのでしょう」

「……」


 無言で椅子を降りた張飛さんが、ひしっと俺の太鼓腹にしがみついて来た。

 ぽんぽんと、軽く背を叩いてやり「私には、我慢も遠慮もは無用ですよ」と、囁くと、低く嗚咽を漏らし始める。

 大声で泣き叫ぶかと思ったのに、耐えるような様子に、ちょっと感心したり。

 やばいなぁ、単なる腹ペコ元気かと思ってたら、流石の主要キャラなだけはあるのか。

 ファンになっちゃいそうだ。


「おっちゃん……鈴々のことは、鈴々って呼んで欲しいのだ」


 どうやら、いつの間にかブレイクして、フラグも立ってた様子。

 うん、素直なキャラクターは、いいですね。

 フラグのツボが判らない相手は疲れます。


「それでは、私からは此方を」


 指輪を渡し、指に嵌めてもらった。


「もし、辛い事があって、誰にも話し難いのでしたら、どうぞ私に話して下さい。

 大した事はできませんが、お腹いっぱいの御飯くらいは、ご用意させて頂きますよ」

「うん」


 多少は気が晴れた様子で、素直な笑顔を見せる張飛さん。

 しかし、これは前周の鈴々さんより、傷が深いんじゃなかろうか?

 前回の『周囲から与えられる形の寂しさ』に浸け込むだけでも、結構な依存度になってるのに、今回のような『自身の無力に絶望している孤独』に漬け込んだ場合、どうなっちゃうんだろうか?

 根本原因の俺が言うことじゃないだろうけど、罪悪感が重いわぁ。


「さて」


 張飛さんと別れた後、自身の食事を済ませて、陣地の中を一回り。

 投降組の連中を義勇軍と組ませて、案山子をやらせているが、飯食って酒飲んで気心が知れたのか、割りと上手くやっている様子。

 義勇軍の連中も、人手が増えて、工事と休憩の回りが楽になった事もあり、よく面倒を見ている。

 これなら昼間の荷物投げに、うちの騎馬隊を全部出しても問題なさそうだ。

 そろそろ、黄巾の連中も、こっちが何やろうとしてるか感づく頃だろうしな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ